不安の溶けない朝
エリオットの言葉が、頭の中で何度も反響する。
――見つけたらレオン殿下は捕縛、リアナ令嬢は命を奪っても構わない。――僕は抵抗してやる。莉亜を傷つけるなんて許せないから。王命だろうと、騎士団だろうと、誰が相手でも。でも、時間が無い。ほんとに、急がないと見つかってしまう。
そう考えているうちに、気づけば朝になっていた。
「優真くん?」
その声に、肩が跳ねた。
振り返ると、寝起きの莉亜が心配そうに僕を見ていた。その顔を見ると、少しだけ罪悪感が湧く。僕のせいで、こんなことに巻き込んでしまっている。その事実に、心が締め付けられそうになる。
「お、おはよう。」
声が震えている。いつもみたいに自然にできない。
「大丈夫? なんか、顔色悪いよ。」
「大丈夫。ちょっと寝不足。」
森の奥で騎士団の気配がするような気がして、ずっと周囲を警戒していた。だから、昨日よりも疲れているだけだ。
でも、莉亜はさらに心配そうに近づいてくる。
「ねえ、ほんとに大丈夫?」
優しい声だ。
なのに、それが刺さる。
言えない。
“騎士団に見つかったら君は殺される”なんて。そんなの、口にしたら彼女を怯えさせるだけだ。
「……莉亜には、関係ないよ。」
言った瞬間、最悪だと思った。莉亜の表情が少し揺れて――胸が締めつけられる。
「あ……違う。ごめん。今のは……言い方が悪かった。」
本当は、全部莉亜のためなのに。隠すしかなくて、逆に傷つけてしまう。ごめん、莉亜。でも、言えないよ。
「昨日……何かあったの?」
「……何もないよ。ちょっと……考え事してただけ。」
莉亜は僕の嘘に気づいたみたいだけど、何も言わなかった。ただ、静かに微笑んだ。
「……無理しないでね。」
その笑顔が、胸に痛いほど沁みた。騎士団相手に僕は莉亜を守れる?戦ったことはないけど、騎士団が強いことぐらいわかる。正面から戦ったら、絶対に勝てないだろう。――いや、勝てなくてもいい。莉亜を守ることが1番大事だ。莉亜が安全なら。莉亜の幸せさえ守れるなら僕は命を差し出すよ。……騎士団は交渉を聞いてくれるかな?本当は、戦いたくなんてない。だって、戦うということは誰かを傷つけることだ。そんなこと、したくないに決まってる。だから、僕の願いを聞いてくれないかな。
そんなことを考える僕を、莉亜は心配そうに見つめていた。




