敵か味方か
「……エリオット?」
そこに居たのは、貴族学園を卒業して騎士団に入った僕の親友・エリオットだった。
「……レオン。」
彼は剣を手にしてはいないけどこちらに近づいてきた。油断はできない――親友でも。油断して莉亜が危険に晒されたら?そうなるくらいなら最初から警戒した方がいい。
「……近づくな。」
「レオン、俺は敵じゃない。信じてくれ。」
「この状況で信用できると思うか?」
「……そうだな。俺も君の立場だったらそう思うよ。」
「……僕を殺しに来たのか?」
「違う、そんなことしない。」
言葉なんて、いくらでも欺ける。親友の言葉では、僕の警戒心は溶けなかった。
「何しに来た?」
「……王命が出たんだ。」
「……!」
「……見つけたらレオン殿下は捕縛、リアナ令嬢は命を奪っても構わない、と。」
…………わかってた。莉亜は処刑されるはずだった。だから、そんな王命が出ても何もおかしくない。でも、そうならないって信じたかったよ。信じていたかった。
「……僕に莉亜の居場所を教えろって言いたいのか?」
「違う、俺は君の手助けをしたいんだ。」
「……手助け?」
思わず聞き返した。信じられなかった。いや、信じたくなかった。
「手助けって……どういう意味だよ。」
「そのままの意味だ。」
エリオットは静かに言った。
「もう、この森は騎士団が捜索している。君たちが見つかるのも時間の問題だと思う。それを伝えに来た。」
「だったら、なおさら信用なんてできない。騎士団に所属してる以上……君は僕の敵だ。」
「……確かに。立場だけ見れば、そうだ。」
エリオットは一歩だけ距離を取った。
その表情は、悔しそうで、どこか悲しげだった。
「今の現状を伝えに来ただけだ。俺は騎士団に戻るよ。あまり大掛かりなことは出来ないけど――できる限りは君たちのために行動するつもりだ。」
「…………。」
エリオットを信用したい気持ちはある。でも、もし騎士団にエリオットが僕たちの居場所を教えたら?そんなこと、考えたくない。でも、――莉亜を守るためにはその可能性にも向き合わなきゃいけない。
「……エリオット。君は騎士団に僕たちの居場所を教えるのか?」
「しないよ、約束する。」
「…………。」
そんなことを言われても、僕の警戒心が溶ける訳がなかった。だから、エリオットに剣の先を向けたまま。過剰すぎるって思われるかもしれないけど、エリオットが嘘の王命を伝えていて、今すぐ僕を襲ってくる可能性だってある。――そうしたら、僕は莉亜を守れない。
「信用して、って言っても無理だよな。だから、信じてくれなくてもいいよ。でも、俺はレオンを信じてる。」
「……わかった。信じないけど、忠告だけは聞いとくよ。」
「それでいい。」
エリオットは小さく笑った。
そして踵を返し、森の奥へ戻ろうとする。僕はエリオットの背が森に溶けていくのを黙って見送った。




