明日への1歩
「行こう、莉亜。」
「うん……優真くんと一緒なら、怖くない。」
僕たちは手をつないだまま、一歩ずつ森の奥へ進む。さっき抱きしめあって溶かした不安や涙は、もう背後に残してきたようだった。霧の間から朝日が差し込み、木漏れ日が二人の体を優しく包む。小鳥のさえずりと風の匂いが、旅立ちの高揚感を静かに演出する。
「優真くん……優真くんのおかげでなんだか私、少し強くなった気がする。」
「うん、僕もだよ。莉亜がそばにいてくれるから、どんな場所でも歩ける。」
莉亜はその言葉に目を細めて笑う。その笑顔は、森の朝に溶け込み、僕の胸を温かく満たした。
「でも……まだ、ちょっとだけ怖いかな。」
「怖くても大丈夫だよ。僕がそばにいるから。」
「優真くん……ほんとに? 私、また迷惑かけちゃうかもしれないのに。」
「迷惑なんて一度も思ったことない。むしろ、莉亜がいるから、僕はここにいる意味があるんだ。」
その言葉に莉亜は小さく息を漏らし、しばらく黙って歩いた。森の中は静かで、木々の間から差し込む光が二人の影を長く伸ばす。手をつないでいるだけで、心が落ち着く。互いの鼓動を感じながら、僕たちは少しずつ、しかし確実に森を抜けていった。
「優真くん……私、こうして一緒にいられるだけで、幸せ。」
「僕もだよ、莉亜。君といるだけで、世界が少し優しくなる。」
「……あのね、優真くん。」
「ん?」
「私、もっと……優真くんに頼っていい?」
「もちろん。いつだって頼ってほしい。」
その瞬間、莉亜はそっと僕の腕に体を預け、頬を寄せた。小さな吐息が胸に触れ、僕は自然に彼女を抱きしめ返す。森の空気が柔らかく二人を包み込み、まるで時間がゆっくり流れるようだった。
「ねえ、優真くん。今日からずっと一緒にいるんだよね?」
「うん。ずっと一緒だよ。」
「うれしい……ほんとに、うれしい。」
笑顔と小さな涙が混ざる莉亜の顔を見て、僕は胸がいっぱいになった。これまでどれだけ二人で戦ってきたか、どれだけ心を通わせてきたか――そのすべてが、この朝に集まっているようだった。
森を抜ける道は長く、まだ先は見えない。でも、手をつないだまま進む僕たちの心には、不安よりも信頼と愛が満ちていた。風に揺れる葉の音や小鳥のさえずりが、まるで僕たちの旅を祝福しているかのようだった。
「莉亜、疲れたら無理しなくていいよ。」
「うん。でも……優真くんのそばなら、どこまででも歩ける気がする。」
肩を寄せ合い、手を握り続け、二人は森の奥へと進んでいく。まだ見ぬ世界と未来が、その先で二人を待っていた。小さな不安も、迷いも、すべて溶けて、ただ僕と莉亜は互いの存在を感じながら歩く――新しい日々の始まりだった。




