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君だけを見て


 処刑場に着くと、たくさんの観衆がいた。リアナの処刑を見物にしに来た人々。彼らに罪は無いと分かっていても、心の中で少し嫌悪してしまう。人の死を見物にするなんて――。それがこの世界の常識なんだろうけど、僕には馴染めない。


 騎士たちは緊張した面持ちでそれぞれの持ち場に立っている。たくさんいる、成功するかな、?闇魔法で錯乱させるつもりだけど、上手くいくとは限らない。指示が滞って時間が稼げると信じたい。でも、騎士たちが迅速に動く可能性だってあるし、僕が想像しているより騎士たちの連携はうまいのかもしれない。――でも、やるしかない。もうチャンスがない。死んだら、戻れない。過去になったら変えれなくなる。リアナを助けれなくなる。――だから、僕にできる最大限のことをしよう。


 リアナが入場した。凛としていて、公爵令嬢としての威厳を保っている。――でも、僕は知ってるよ。その仮面の裏で、君はすごく寂しがり屋なとこ。本当は辛いのに、無理しているとこ。僕が昨日失敗しなかったら彼女にこんな顔をさせずに済んだ。もう同じ失敗はしない、そう心の中でリアナに誓った。


「最期に言い残すことはあるか?」


 騎士がリアナに聞いた。


「何もありません。」


 そう答えるリアナは、しっかりと前を向いていた。観衆がざわついている。これから、始まるんだ。


 リアナの手首につけられている魔術具が外されようとしている。あれが外れたら――。僕はその瞬間(とき)を待った。


 ――今だ。僕は、深呼吸してから魔法を発動した。防御魔法で自分を守りながら彼女の方へ向かう。


 辺りは騒然としていた。あちこちで悲鳴が聞こえる。ごめんなさい、今すぐにでも迷惑をかけた人に謝りたい。でも、今は無理だ。全て終わったら謝ります、許して。


「リアナ、行こう。」

「レオン様?……なんで……。」


 リアナも混乱していた。ごめんね、リアナ。でも、君を助けるのに必要だったんだ――。

「時間が無い、急ごう。」

「……来て、くれたのですね。」


 僕はリアナを抱いて処刑場の外に向かって飛び出した。まだ騎士たちも混乱しているはず。大丈夫、冷静に。そう自分に言い聞かせた。

 闇魔法が薄くなっていくと、また観衆はざわざわし始めた。


「リアナ様は……!?」

「逃げたのか!?」


「――!レオン殿下がいない!」

「どこに行ったのだ!?まさか――」



 処刑場の喧騒とは裏腹に、もうだいぶ離れたところにいる僕たちの中には静寂が流れていた。そろそろ騎士たちが動き始めるだろう。早くもっと遠くに行かないと――。


 

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