闇のような夜明け
朝になった。世界が勝手に光り始めただけなのに、胸の内側を殴られたように気持ち悪い。リアナの処刑の日――そんな言葉が頭に浮かぶだけで吐き気がした。
昨夜から、後悔が頭蓋の中で暴れ続けている。痛くて、うるさくて、どうしようもない。どうしてもっと考えなかったんだろう。僕がもっと計画的にできたら。僕の詰めが甘くなければ。そうしたらこんな日を迎えずに済んだかもしれない。後悔すると、芋づる式に思い出が引きずり出される。全部が自分の愚かさに繋がって、胸の奥を焼いた。
昨夜、父に見つかった瞬間が何度もよみがえる。別の道を選べば成功したかもしれないパターンが無限に浮かんでくる。その全てが自分への罵倒となって首を絞める。
そして――最悪の想像に辿りつく。
リアナが今日、処刑台の上で――。
そこまで考えた瞬間、胸の中に黒い決意が膨れ上がった。恐怖でも絶望でもない。もっと冷たい、鋭いもの。
もしリアナが殺されたら。僕はセレスティアを徹底的に潰す。彼女が大切にしている全てを奪う。地位も、名誉も、信頼も、愛も。息をしている価値すら感じなくなるほどに追い詰める。リアナを死なせたら。そんな復讐じゃ足りないよ。何をしてもその絶望を埋めれない。
そして最後に、自分の存在がどれほど無価値で惨めなのか思い知らせて――絶望の底へ落としてやる。婚約者?そんなのいい。僕は全部捨てるよ。リアナのいない世界なんて生きててもつまらない。セレスティアを道連れにしてやる――。
そうする未来が、すぐそこまで形になりかけていた。
だが――ふと気づいた。
そんな未来は間違っている。それでは、リアナが処刑される現実を前提としているじゃないか。処刑を“起きるもの”として受け入れている。駄目だ。そんな未来は存在してはいけない。リアナが死んだらだめだよ。
リアナが処刑される未来が間違っている。狂っている。認められるはずがない。セレスティアの思惑通りになるなんておかしい。
リアナは生きるべきで、救われるべきで、幸せになるべきなのだ。彼女がいない明日なんて、あってはならない。
だから今日、何があっても彼女を奪う。王家でも国家でも、世界を敵に回しても関係ない。誰が立ちはだかっても壊す。処刑そのものを壊してやるよ。僕はそのために生まれ変わったんだ。
そして――彼女を傷つけた原因を作ったセレスティアには、相応の未来を与える。死よりも苦しい、しっかりとした絶望を。
リアナ。昨日は失敗したけど、それでも僕を信じてくれる?今度こそ、絶対に君を救うから。




