少しづつでも
夜の地下牢は、昼間よりさらに冷えていた。けれど僕の胸の奥は、もっと冷え切っていた。セレスティアの侍女から何も聞き出せなかった。証拠はどうすれば見つかるだろう?でも、証拠よりもリアナに会いたかった。だから、気づけばまたここに来てしまっていた。
「レオン様……?」
鉄格子の前に立つと、リアナは驚いたように目を丸くした。前より少しやつれている。頬も心なしか痩せて見えた。
「リアナ、会いに来た。迷惑だったら言って。」
「迷惑なんて……。ただ、来ないほうがレオン様のためなのに……。」
そう言いながらも、リアナは少しだけほっとしたように見えた。僕を見て、ほんの少しだけ肩の力が抜けていくのがわかった。その姿が、胸に刺さる。
「リアナ。君がどう思っても、僕は来るよ。……来ずにはいられない。」
「……どうして……。」
リアナの声は、かすかに震えていた。
強がろうとして、でも強がりきれない声。
「だって……私は、もう終わってるんですよ。罪がなくても、私はきっと処刑されます。だから――」
「終わってなんかない。」
思わず鉄格子を掴んだ。
力を込めすぎて、鉄が冷たく痛かった。
「君は何も悪くない。君がそうやって“仕方ない”なんて言うたびに、僕のほうが苦しくなる。」
「レオン様……?」
「君が怖い時は、僕がそばにいればいい。君が泣くなら僕が涙を拭う。君が処刑されるなんて、絶対にさせない。」
「……そんなこと、できません。」
「できるよ。約束したじゃないか、処刑させないって。」
その瞬間、リアナの瞳が揺れた。
ほんの一瞬だけ、今にも泣きそうな顔になった。
――ああ、やっと。
ずっと強がっていた心が、少しだけほぐれたんだ。
けれど彼女はすぐに顔を伏せ、かすかに笑った。
「無理です、無茶しないでください……。」
「無茶でも何でもいい。君を助けたいんだ。」
「……。」
リアナがそっと鉄格子に手を添える。
僕もその上に自分の手を重ねると、リアナは驚いた顔をしたが、今度は手を引かなかった。
触れているのは鉄越し。それでも、温もりは確かに伝わった。
「ありがとう……来てくれて。」
その一言で、すべてが報われる気がした。
「また来るよ。」
「……はい。」
その小さな返事が、どれほどの力になったか。リアナはまだ不安でいっぱいで、諦めのほうが大きい。それでも――少しだけ彼女の心がほぐれた気がした。その“少し”を、僕は絶対に逃さない。必ず助けるよ。




