父との決裂
「レオン。地下牢から直接来たと聞いた。リアナの件か?」
父に僕の用件は知られていた。隠し事ができそうな相手じゃない。僕はもう、単刀直入に言うことにした。
「父上。リアナは無実です。証拠だって誰かに偽造されたものです。どうか、彼女を――」
「レオン。」
僕の声は、父のはっきりとした声で鋭く断ち切られた。
「感情に流されるな。お前は王子、後に国王となるのだ。国王が事実ではなく感情に流されたら国は滅びるだろう。もっと王子としての自覚をもて。」
「わかっています。でも、感情ではありません。真実です。」
「……そうか。では聞こう。リアナが無実だと確信する理由はなんだ?」
「リアナは、人を傷つけることなんてできません。彼女がするわけない。そう断言できます。」
「レオン。確信は証拠ではない。ひとりのただの妄想と、毒が見つかったという証拠。どっちを優先するかは考えなくても分かるだろう?」
「妄想なんかじゃない。証拠なんて、いくらでも偽造できる。父上は、罪のない人間が地下牢に入れられていいと思っているのですか?あんな冷たいところで――」
「レオン。」
父上の声が、いっそう険しくなった。
「頭を冷やせ。お前には王になる器があると思っていた。だが、今のお前は“恋に狂った若者”だ。」
胸の奥が傷んだ。そんなこと、そんなのわかってる。でも、自分の考えを曲げるつもりなんてない。
「レオン、お前は優しい。リアナのことを庇いたいのもよくわかる。――でも、優しさだけで国を治めることは不可能だ。時には誰かを処刑しなければならない時もあるのだよ。」
「……!リアナを処刑するのですか!?」
「まだ正式には決まっていない。だが、証拠は揃っている。おそらくそうなるだろう――。」
「父上。リアナは――。」
「やっていない、と言うなら証拠を見つけ出せ。無いなら、もう話すことは無い。」
そう言って、僕に背中を向けて去ろうとした。今を逃したらチャンスはない――。
「――全て、セレスティアが仕組んだことです。」
「――証拠は?」
「ありません。ですが――記憶魔法を使えば真実が分かります。」
記憶魔法。国王のみが扱える魔法で、対象の人の記憶を覗くことができる。主に罪人に使われる魔法。でも、セレスティアの記憶を視ればきっと――。
「駄目だ。易々と使っていいものではない。使って欲しいのなら、証拠を見つけてから言え。」
それなら――証拠を見つけ出すしかない。毒の出処が見つかれば……。知っていそうなのは……セレスティアの侍女かな?セレスティアに口止めされてないといいけど。口止めされていたら――。もう父には頼れない。自分でリアナを助けに行くしかない。それで全てを失うことになったとしても――。




