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冷たい地下牢

 王城の地下牢は、地上とは別世界だった。湿った石壁と、薄く灯った魔導灯。人の気配の少ない静寂が、かえって胸を締めつける。リアナはこの暗さの中で、一人で……。


「レオン殿下、こちらです。」


 案内役のベルフォード宰相が足を止めた。

 鉄格子の向こう、簡素な寝台に座る少女がいた。


 ――リアナ。彼女は僕の足音に気づくと、静かに顔を上げた。その表情は驚きよりも、覚悟を決めた人間のものだった。

 

「リアナ。」

「レオン様。私は処刑されるべきだったんですよ。だから、もう来なくて大丈夫です。」

「……は?」


 何を言っている。


「私の部屋から毒が見つかったんでしょう?犯人は私しかいないじゃないですか。」

「リアナ。セレスティアの思い通りに動くのか?」

「……それでいいですよ。」

「……いいわけない。罪のない人間が処刑されるべきじゃない。」

「罪のない……?私は犯しました。たとえ毒を盛っでなくても、セレスティアを傷つけたのは事実でしょう?まだ償えきれてない。」


 その瞳は、諦めと覚悟で濁っていた。そんな目、させるために僕はここに来たんじゃない。


「それでも、君が罪を被る必要はないよ。後で、父上に君は無実だって伝えに行く。」

「だめです。そうしたらまたレオン様を巻き込んでしまう。そんなの、もう耐えれません……。」

「巻き込まれるんじゃない、僕が君を助けたいから助けるんだよ。」


 リアナが居なくなったら、なんて考えられない。だから、全部失ったとしても君を守りたいよ。


「レオン様は、何を言っても変わらないでしょうね……。でも、レオン様には傷ついてほしくないんです。無茶だけはしないでくださいね……?」

「ああ、心配するな。」


 リアナがもう泣かなくて済むように。我慢しなくて良いように。ずっと笑顔でいられるように。そのためになら、何でもするよ。


「大好きだよ、莉亜。」


 衛兵や宰相に気づかれないように小さく耳元で囁くと、リアナが驚いたように目を見開いたのがわかった。そんな驚いた顔でさえ美しい。その笑顔を、次こそ守るよ――。


「ベルフォード。父上に会いに行く。」

「かしこまりました。――判断を誤らないよう、お気をつけください。」


 リアナ、君のことが大好きだよ。他のどんなものよりも君を優先したいと思ってしまう。僕の愛は重いかな?そうだよね、重いよね。でも、好きな人がいわれのない罪で処刑されそうになっているのに何もしないなんて無理だよ。僕はどうしたらいい……?どうしたら君を救えるの?

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