セレスティアの思い
セレスティアが倒れてから数時間後。
王城の医療棟は、深夜の静寂と薬草の匂いに包まれていた。扉を開けると、セレスティアは薄く目を開け、弱々しく微笑んだ。
「……レオン様?」
その声は掠れていて、いつもよりずっと儚い。
なのに、胸は少しも落ち着かなかった。
僕の心はまだ、リアナのことばかり考えている。
「……レオン様。来てくださったのですね。」
「もちろんだ。体調は良くなったか?」
「ええ……。少しは良くなりました。……レオン様。私、怖かったです。リアナ様でも、まさか毒を使うなんて思わなくて……。どうしてリアナ様は私が嫌いなんでしょう?レオン様の婚約者であることがいけないのでしょうか。ここまで人に嫌われたこと初めてで……。目覚めたあと、怖くて怖くてたまらなかったです。……でも、レオン様が来て安心しました。私を守ってくれる人がいるって。……これからも、私の事守ってくれますか?」
「セレスティア……。」
彼女は声が震えていた。――でも、僕にはその言葉が信じれなかった。だって、毒を盛ったのはリアナじゃない。どうしてリアナがやったと決めつけるのか。セレスティアのことは信じたい。信じたいけど――。彼女が自分から噂をたててリアナを苦しめた。聖具の事件だって彼女の自作自演だった。だから、今回のことも彼女の自作自演だろう。手とか腕を傷つけるぐらいならまだしも、自分から毒を飲むなんて異常だ。彼女の震える声。これは演技だと今ならわかる。リアナとは真逆だ。彼女の声は、人の痛みに敏感で優しい声だから。
――でも。まだ、言えない。セレスティアにこのことを問い詰めれたらどれだけ気が楽になるだろう。でもまだだめだ。せめて、彼女の思惑がわかるまでは。
「……レオン様?」
「セレスティア。リアナはやってないよ。」
「私もリアナ様のことを疑いたくはありません。でも、他に思い当たる方はいなくて……。」
セレスティアは悲しそうに目を伏せる。彼女は演技が上手い。感心しながら、心の中を悟られないように偽りの笑顔を顔に貼りながら応える。
「君は安静にしてれば大丈夫だよ。学園が調べてるはずだから。」
「そう、ですね……。」
「セレスティア、聞きたいことがある。」
今まで直接聞けなかったこと。聞くのが怖かったけど――確かめるしかない。覚悟を決めて、僕は聞いた。
「……リアナのことは嫌い?」
「リアナ様、のこと……?」
「ああ。今、この場には2人しかいない。だから、話してくれないか?嫌いならそれでいいから。人は会う合わないだってある。傷つけられたんだから、嫌いになるなんておかしいことじゃないよ。僕が絶対受け止めるから、――本当の気持ち、話してよ。」
「……レオン様。リアナ様は、私の事、きっと気に入らないんだと思うんです。私は公爵家じゃないし、容姿だってリアナ様の方が美しいし、魔法だって私は属性少ないし、私はレオン様に釣り合わないんです。リアナ様の方がレオン様にふさわしい。私がレオン様の婚約者なのが気に食わないと思います。だから、私のことを嫌いなのも当然。ですので、……嫌い、だとは思いませんよ。私もリアナ様と同じ立場だったら同じことをしてたかもしれませんから。」
「そうか。話してくれてありがとう。」
セレスティアは本音では話してくれなかった。僕が言えたことでは無いけど。でも、……。――セレスティアと分かり合えることは無いと決断するには十分だった。
その時、ベルフォード宰相が部屋に入ってきた。宰相は、淡々とした顔でいった。
「失礼します。リアナ様が殺人未遂の疑いで捕らえられました。」




