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自殺しようとする同級生を助けたら乙女ゲームの世界の王子になりました  作者: 夜月海歌


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春の訪れ

「兄上、お久しぶりです。」


 目の前には、弟のルシアンがいる。そう、今日は入学式。入学式は在校生は参加出来ないが、入学パーティーは参加できるため、弟が挨拶してきた。昔は可愛いだけだったのに、今は成長して美男子になっていた。同性でも惚れてしまうぐらいに。


「……ルシアン!久しぶりだな、会いたかった。」

「ありがとうございます。僕も会いたかったです。兄上と一緒に学べるのすごく楽しみです。」

「ああ。」

「兄上のようになれるように頑張ります。」


 ルシアンは前と同じようにまっすぐな目で、このまま過ごして欲しいと思った。学園は、貴族の裏の顔を知ったり、事実のない噂が広まったり、綺麗じゃない側面だっていっぱいある。それでも、この純粋な子には、それを知って欲しくない。王族として必要なのかもしれないけど、そんなことを知らずにまっすぐ生きてほしい。そう思ってしまう。



 3年になっても、噂が絶えることはなかった。


「また聖女様が攻撃されたみたい。」

「聖女様はそれでもリアナ様を庇ったって聞いたわ。」

「聖女様はなんて慈悲深いのかしら。」


「……リアナはそんな事しない。」


「……王子様。」

「ご、ごめんなさい。」


 止めても止めても変わらない。セレスティアは聖女として、圧倒的な信頼を得ていった。セレスティアは慈悲深い聖女。リアナは聖女の優しさに漬け込み王子を惑わす悪女。レオンは悪女に洗脳された王子。いつしか、そう呼ばれるようになっていった。全部、セレスティアの虚言によるもの。でも、彼女の嘘に気づくことなく、彼女の慈悲深さに心酔していく。どうしたら彼女を止められる?どこまでやったら気が済む?自傷してまで噂を広める意図は?――何も分からない。彼女の考えていることが分からない。何が彼女をそうされてるのか。リアナのしたことがそれほど辛かった?リアナに復讐したい?でも、何かが違う気がする。それだけであんなに彼女を突き動かすのか。彼女の行動の裏に、なにかへの執着心がある気がして。何かが分からない。でも、怖い。分からないから怖い。彼女の行動はいつ終わるのか。卒業したら終わり?それとも、結婚したら?リアナが耐えきれなくなったら?聖女だと国中が崇めたら?何がきっかけなのか。何をしたら終わるのか。教えてくれ――セレスティア。

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