愛する人のためなら《セレスティア》
私は、自分で攻撃した傷跡を見ながら微笑む。レオン様が心配してくれた。レオン様がこちらを見てくれるなら、傷なんていくらでも作る――。
「昨日、リアナ様に突然攻撃されたの。」
「また、悪口を言われてしまいましたわ。私、リアナ様になにか嫌なことしてしまったのでしょうか……。」
あの日――リアナ様と二人で話したあとから、私は噂を流していった。悲しそうな表情で話せば、みんな信じてくれる。私のことを、可哀想な聖女だと信じてくれる。
――全てはレオン様のため。レオン様がリアナ様に惑わされないように。悪女にたぶらかされないように。私は、婚約者としてレオン様を助けなきゃいけない。たとえ、少し汚い手段を使ってでも――。少しだけだ。リアナ様に嫌なことをされました。そう言うだけ。そうすれば、噂はどんどん広まってゆく。もちろん、彼女のことを悪くいうことはしない。あくまで、彼女は悪くない。私がなにか彼女にしてしまったのです……。と彼女を庇う。ほら、私は少し嘘をついただけで彼女を庇っているのよ?何も悪いことはしてない。――周りは、なんて慈悲深い聖女なんだ、と勘違いしているけどね。
「……セレスティア。何の用ですか?」
リアナ様は怯えたようにこちらに聞く。あなたが悪いのに――。どうしてそんな顔をするの?悪女は悪女らしく笑っていなさい。まるで私が悪女みたいじゃない。
「リアナ様、来てくれてありがとうございます。あなたの髪飾りをもらおうと思ったんです。」
私は、微笑みながら風の魔法で彼女のルビーの髪飾りを手に取る。あなたにこの髪飾りはふさわしくないわ。
「……セレスティア!?返して……。」
「あなたにはふさわしくないでしょう?人の愛する人を奪ってよくそんなことが言えるわね。」
彼女は何も言い返さなかった。そうよ、あなたは私のレオン様を奪ったんだから――。
私は、髪飾りを持ちながら聖堂へ向かった。自分の聖具を壊すために――。
レオン様。聖具が壊れたら、悪女の洗脳が解けますか?私に振り向いてくれますか?――どうして、あの女に夢中なのです?あの方は――悪です。気づいてください。聖具をリアナ様が壊したとなれば、さすがに気づきますよね?あの方じゃなくて私を愛すべきだと気づきますよね?レオン様は悪くありません。レオン様をたぶらかす悪女が悪いのです。だから、私がレオン様を助けます。――だから、少しの嘘は見逃してください。これも、あなたを助けるためなんです。そうしないと、あなたは気づけないでしょう?レオン様、私が助けるので待っててください――。




