表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/22

希少な万能型

リリアは薄暗い路地に身を潜めながら、静かに呼吸を整えていた。


(……どうしよう)


測定器の爆発。


周囲の人々の驚いた顔。


そして、自分の魔力を制御できなくなるかもしれないという恐怖——。


だが、冷静になって考えると、逃げ続けるわけにはいかない。


(ギルド試験を受けないと、行き場がなくなる……)


リリアは深呼吸し、膝に置いた手をぎゅっと握りしめた。


(大丈夫……私は普通のままでいられる。


測定器が壊れただけ。


何も問題はない……)


そう自分に言い聞かせると、ゆっくりと立ち上がった。


足元には、路地に転がる小石。


走って逃げたときに蹴り飛ばしたものだろう。


(……あの場に戻るのは、正直怖い。


でも、私はここで諦めるわけにはいかない。


普通のギルド員として生きるために——。)


意を決して、リリアはギルド試験会場へと戻った。



試験場に戻ると、思ったよりも騒ぎは大きくなっていなかった。


それどころか、まるで何事もなかったかのように進行している。


(……? どういうこと?)


リリアが戸惑いながら様子を伺っていると、試験官の一人が彼女を見つけ、駆け寄ってきた。


「おお、リリア! もう大丈夫か? 走って逃げたから、相当痛かったんじゃないか?」


「えっ……?」


「測定器が暴発して、すごい衝撃だったろう? 怪我はしてないか?」


周囲の受験生たちもリリアを心配そうに見つめていた。


「リリア、大丈夫だったのか?」


そう声をかけてきたのは、アレン。黒髪で真面目そうな青年で、試験中も冷静に対処していた。


「うん、大丈夫……。アレンも試験は順調?」


「まあね。ところで、あの測定器……やっぱり壊れてたのかな?」


「……たぶんね」


(私のせいで爆発したのに、どうして……?)


試験官は、彼女の腕を優しく掴んだ。


「大丈夫なら、もう一度測定しようかと思ったが……機械の方が壊れちまったからな。


でも、幸いデータは記録されていた。お前の測定結果を伝えるよ。」



「リリア・エルフィス。


君の適性は……『万能型』だ。」


ギルド試験では、攻撃・防御・回復の3つの型がそれぞれ測定され、その評価は10段階の星の数で示される。


リリアの結果は——。


「攻撃型、星1。


防御型、星1。


回復型、星1。」


会場が静まり返る。


「……えっ?」


リリアも思わず驚いた。


「って、最低ランクかよ!?」


驚きの声をあげたのは、ユージン。短髪で筋肉質な青年で、試験中も堂々とした態度だった。


「お前、戦闘で全然目立ってなかったけど……まさかの星1って、おいおい……」


「うん、まあ……」


(こんなに低くなるなんて……いや、むしろこれなら普通のままでいられる……?)


試験官は微笑みながら言葉を続けた。


「確かに、一つ一つの能力は微弱だ。


だが、全ての型を兼ね備えているという点では、とても貴重な存在だ。」


「は、はあ……?」


「万能型は珍しいんだよ。


攻撃、防御、回復のどれかに特化する者がほとんどだからな。」


そこへ、小柄な少女が近づいてきた。


ルーシー、金髪ツインテールの少女で、明るい性格が特徴だ。


「リリア、結果どうだったの?」


「……星1が三つ、だって」


「えっ!? じゃあ、すっごくレアってこと!?」


「え? いや……最低ランクだけど……?」


「でも、万能型って、めったにいないでしょ? なんか凄そう!」


リリアは複雑な気持ちになりながらも、静かに微笑んだ。



「さて、ギルドの説明をしておこうか。」


試験官に案内されながら、リリアはギルドの施設を回った。


「お前もギルドに入るんだな!」


元気よく話しかけてきたのは、カイル。長身で、ややお調子者の雰囲気がある。


「いや~、正直びっくりしたけど、万能型って面白そうだよな!」


「そ、そうかな……?」


試験官の説明を聞きながら、リリアは少しずつ心を落ち着かせていった。


(……私はここでやっていける。)


そう自分に言い聞かせながら、ギルドの空気を肌で感じていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ