【緊急クエスト】ギルドからの依頼
ギルドの扉を開けると、受付の職員がこちらを見つけて手招きした。
「ルミナスブレイブの皆さんですね? ちょうどよかった。実は、ギルドとしてお願いしたい依頼があるんです」
「俺たちに?」
アレンが訝しげに尋ねる。
「はい。今回の依頼は、Fランクパーティの中でも 特に実力が高いと判断されたチーム にのみ声をかけています」
「ほう、そりゃ光栄だな!」
ユージンが得意げに腕を組む。
「実は、街の北にある岩場で獣の大量発生が確認されました。通常のFランクパーティ単独では対処が難しく、ギルドとして合同討伐作戦を立ち上げることにしました」
「異常発生……?」
リリアが眉をひそめる。
「ええ、獣の発生数が通常の2~3倍に達しており、現場の冒険者たちも困惑しています。そこで、 実力のあるFランクパーティを集めて、合同で討伐を進めることになりました」
「つまり、俺たちはその実力アリの枠に入ったってわけか」
ルーシーがニヤリと笑う。
「もちろん、あなたたちだけではなく、他にも2つのFランクパーティを招集しています。合計3パーティ、12名での大規模討伐作戦になります」
アレンは考え込むように腕を組んだ。
「……ここ最近、小規模なクエストを積み重ねてきたが、俺たちの力を試すにはいい機会かもしれないな」
「そうだね!」
リリアも やる気を漲らせて 頷く。
「俺たち、もうFランクの底辺じゃないんだ!」
「では、参加ということでよろしいですね?」
ギルド職員が確認すると、リリアたちは 迷うことなく快諾した。
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ギルドでの作戦会議 & 顔合わせ
ギルドの会議室には、今回の討伐に参加する 3つのFランクパーティ(計12名) が集まっていた。
■ 第1パーティ「ルミナスブレイブ」(リリアたち)
•リリア(魔法使い・サポート型)
•アレン(魔法剣士・攻撃型)
•ユージン(防御魔法使い・バリア担当)
•ルーシー(回復 & 補助魔法)
■ 第2パーティ「ブレイズハウル」(火属性中心の攻撃型)
•リーダー:ギルバート(ギル)(火炎魔法使い・高威力の広範囲攻撃)
•エルザ(火属性の速攻型魔法剣士・近接型魔法)
•ノエル(爆炎の弓魔法使い・遠距離狙撃)
•ボルド(炎壁術師・防御型の炎魔法)
■ 第3パーティ「アイスリーフ」(氷・雷属性のバランス型)
•リーダー:カレン(氷結魔法使い・冷静沈着な指揮役)
•ゼイン(雷撃魔法使い・瞬間火力に優れる)
•ミナ(氷槍魔法使い・遠距離狙撃型)
•オズマ(召喚魔法使い・氷精霊を操る)
ギルド職員が地図を広げ、現場の状況を説明する。
「今回の討伐作戦は、北の岩場に巣食う獣の群れの殲滅が目的です。報告では、通常の2〜3倍の数が発生しているとのこと」
「そんなに!? そりゃ確かに、Fランクパーティ単独じゃキツイな……」
ギルバートが腕を組みながら唸る。
「基本的には、各パーティ単位で討伐を進めてもらいます。ただし、戦況次第では他パーティとの連携が必要になる場面もあるでしょう」
「なるほど……つまり、協力しながら戦えってことね」
カレンが落ち着いた声で応じる。
「お互いに連携を意識しながら動くようにしましょう」
ギルバートが豪快に笑う。
「俺たちは獣相手にド派手に暴れるだけだ! だが、まあ……困ったら助けてくれよ?」
ゼインがニヤリと笑う。
「お前らがすぐヘトヘトにならなきゃいいけどな?」
ユージンが 「まあまあ、戦闘になったらお互いの力を見せつけようぜ」 と場を和ませる。
作戦会議を終え、リリアたちは 各パーティの仲間と軽く挨拶を交わす。
「よし、これで準備は整ったな!」
アレンが 意気込むように拳を握る。
「みんな、気合い入れていこう!」
リリアたちは 新たな戦いへ向けて、気合いを入れた。
朝日が昇るころ、ルミナスブレイブのメンバーは他の2つのパーティと共にギルド前に集結した。
「よし、全員揃ったな」
ギルバートが豪快に腕を組み、他のリーダーたちと視線を交わした。
「3パーティ合同で、北の岩場へ向かう。途中で何か異変を感じたら、すぐに報告し合おう」
カレンが静かに付け加える。
「この状況は普通じゃないわ。くれぐれも油断しないようにね」
全員が頷き、討伐作戦が始まった。
岩場へ向かう道中、それぞれのパーティメンバーが自然と打ち解けていった。
「お前ら、けっこう腕が立つって聞いたぜ?」
ギルバートがリリアたちを見やりながら話しかける。
「ま、まあ……少しずつ鍛えてるしね!」
ルーシーが得意げに笑うが、アレンは慎重に言葉を選んだ。
「でも、まだまだFランクの範疇だ。気を抜いたらすぐやられる」
「その謙虚さは大事ね」
カレンが微笑みながら歩調を合わせる。
「でも、今回のクエストでお互いの実力を見極められるでしょう」
ユージンはゼインと並んで歩いていた。
「雷魔法が得意なんだって? 連携できれば面白い戦いになりそうだな」
ゼインがニヤリと笑う。
「お前の防御魔法がどこまで持つか、見ものだな」
他のメンバーもそれぞれの武器や戦い方について話しながら歩き、次第にチームワークが生まれていった。
岩場が見え始めると、全員が慎重になった。
「ここからは静かに行こう」
エルザが手で合図を出し、全員が足音を殺す。
やがて、遠くに獣の群れが確認できた。
「うわ……思った以上に多いな」
ノエルが遠距離視認の魔法を使いながらつぶやく。
「これは確かに普通のFランクパーティじゃ厳しいな……」
ボルドが低く唸る。
「下手に突っ込んだら、囲まれる可能性が高い」
「だからこその合同作戦よ」
カレンが冷静に言った。
「全員が役割を理解して動けば、決して不可能じゃない」
「それじゃあ、最終確認だ」
ギルバートが地図を広げ、指でポイントを示す。
「基本は各パーティ単位で固まって討伐を進める。ただし、危険を感じたら他のパーティと即座に連携しろ」
カレンも補足する。
「長期戦になれば、魔力の消耗も激しくなるわ。リリア、ルーシー、あなたたちの補助魔法が重要よ」
リリアが少し緊張しながら頷く。
「うん、みんなのサポートは任せて!」
「それじゃあ……行くぞ!」
ギルバートの合図で、討伐作戦が開始された。
ギルバートの号令とともに、討伐作戦が開始された。
「各パーティ、展開開始! いつでもフォローできる位置を意識しろ!」
カレンが素早く指示を出し、全員がそれぞれの陣形に移動した。
ルミナスブレイブ は中央部を担当し、 ブレイズハウル は前衛での攻撃を、 アイスリーフ は後方からの支援を担う形で布陣する。
ルミナスブレイブ
•リリア はサポート魔法を展開し、仲間の魔力回復とバフを維持。
•アレン は中距離から魔法剣による斬撃を飛ばし、広範囲の獣をなぎ払う。
•ユージン は防御結界を張り、味方が無防備な瞬間に攻撃を受けないように守る。
•ルーシー は回復魔法と状態異常解除で支援。
「みんな、いけるね!」
リリアの声に仲間たちが頷く。
ブレイズハウル
•ギルバート が 爆炎魔法 で獣をまとめて焼き払い、敵の陣形を崩す。
•エルザ は 火属性の速攻魔法 を連発し、高速で獣を撃破。
•ノエル の 火矢魔法 は正確無比で、遠距離から次々と獣を仕留める。
•ボルド は 炎の壁魔法 で獣の行動を制限。
「派手にいくぜぇぇ!!」
ギルバートが叫び、獣たちが燃え上がる。
アイスリーフ
•カレン の 氷結魔法 で獣の動きを止める。
•ゼイン の 雷撃魔法 は麻痺効果を発揮し、敵の動きを鈍らせる。
•ミナ の 氷槍魔法 は長距離から敵を狙撃。
•オズマ の 召喚魔法 による氷精霊が支援。
「テンポよくいきましょう」
カレンの冷静な指示のもと、的確に獣を狩っていく。
「……おい、いくら倒しても、数が減ってない気がするんだけど」
ユージンが呆れたように言う。
「確かに……こんなに多いとは聞いてないぞ」
ノエルも遠距離から魔法を放ちつつ、違和感を感じていた。
「これは……普通のFランク討伐依頼じゃないぞ」
リリアの心の中にも、不安がよぎる。
「でも、戦闘はスムーズに進んでる。今のうちに数を減らしておくしかないね!」
ルーシーの言葉に、全員が気を引き締めた。
「やるじゃん、Fランクの割には!」
ゼインが楽しそうに言うと、ユージンが笑って返す。
「お前こそ、雷魔法のキレがすげぇな!」
互いに連携しながら、確実に獣を倒していく。
「このまま押し切るぞ!」
ギルバートが叫ぶ。
だが、その時——
「……!? また湧いてきたぞ!」
獣の影が再び岩場の奥から溢れ出してきた。
戦いの中で、全員が 異常な気配 を感じ始めるのだった。
戦闘が続くにつれ、各パーティの 強みと弱み が明確になってきた。
「前衛が攻撃に集中しすぎると、防御が手薄になるな……」
ユージンが獣の突進を防御魔法で受け止めながら、仲間に声をかける。
「だったら、俺たちがフォローする!」
ギルバートが爆炎魔法を炸裂させ、ユージンのバリアに向かってきていた獣を吹き飛ばした。
「おお、助かったぜ!」
ユージンが軽く親指を立てる。
魔法職と防御役の組み合わせが、次第に戦場での最適な動きを生み出していく。
「前衛が引きつけて、後衛が一気に殲滅! それが一番効率いい!」
カレンが冷静に指示を出す。
「アイスリーフの氷結魔法で動きを止め、ルミナスブレイブがまとめて攻撃。そして、ブレイズハウルがとどめを刺す形でどう?」
「いいね! やってみよう!」
ルーシーがすぐに同意し、リリアもサポート魔法の準備を始めた。
リリアのサポート魔法「マナブースト」が、仲間たちの魔力消費を軽減する。
「よし、これで長期戦でも耐えられる!」
「お前ら、意外とやるな……!」
ゼインが驚きながらも、楽しそうに雷撃魔法を放つ。
「お互いに助け合うってのも、悪くねぇな!」
ギルバートが笑いながら叫び、戦闘はどんどんスムーズになっていった。
「……よし、これでだいぶ数を減らしたな!」
アレンが魔法剣を振るい、最後の一体を仕留めたかに見えた。
「でも、まだいる……?」
ミナが不安そうに後方を見た。
「……いや、それどころか、また増えてる?」
遠くの岩場の影から、新たな獣の群れが 次々と湧き出てくる のが見えた。
「……こんなに!? さっきより多くないか?」
ユージンが驚き、リリアも焦る。
「どういうこと……? こんなに長時間、獣が途切れないなんて……!」
確かに、 順調に戦闘を進めているはずなのに、状況が好転していない。
「これは……何かおかしいぞ」
アレンが剣を構え直し、 仲間たちに警戒を促す。
そして、不気味な違和感の正体が まだ明らかになっていないこと に、全員が気づき始めていた。
「倒しても倒しても、終わらない……!」
リリアが息を切らしながら叫ぶ。
戦闘開始からすでに長時間が経過していた。
だが、獣の数が減るどころか、むしろ増えているように感じる。
「こんなはずは……!」
アレンが魔法剣を振るい、襲いかかる獣を次々と斬り伏せる。
しかし、 視界の端にはまた新たな影が広がっていく。
「おいおい、いい加減にしてくれ……!!」
ギルバートが爆炎魔法で前方の獣を吹き飛ばすが、背後から次の獣が飛びかかってくる。
「くっ……! 数が多すぎる……!」
ユージンが防御魔法を展開するが、連続して魔法を張り続けているせいで、息が上がっていた。
「ダメだ、そろそろ限界が近い……!」
「……おかしい……」
カレンが静かに呟いた。
「普通、これだけの数を倒せば、流石に減るはず。でも、戦闘が始まったときと変わらない……」
ミナが短剣を握りしめながら、荒い息を吐く。
「私、もう魔力が底をつきそう……」
「俺もだ。こんなに長期戦になるとは思わなかった……」
ゼインの雷撃が弱々しくなってきている。
パーティ全体に、じわじわと疲労の色が見え始めていた。
「このままじゃジリ貧だ……!」
リリアが焦る。
このままではいずれ、魔力が枯渇し、全員が戦えなくなる。
「一旦、後退しよう!」
ギルバートが指示を出し、全員が戦闘区域から距離を取る。
「どうする? いったん撤退するか?」
エルザが冷静に問いかける。
「いや、それよりも……」
カレンが息を整えながら、周囲を見回す。
「この異常な湧き方の原因を探ったほうがいいかもしれない」
「原因?」
リリアが聞き返す。
「これ、普通の群れじゃないわ。何かがこの状況を引き起こしているはずよ。」
オズマが慎重な口調で言う。
「つまり……このまま倒し続けても、終わらない可能性があるってことか?」
ユージンが息を整えながら尋ねる。
「……その可能性は高い」
カレンが頷く。
「だが……それを調査する余裕が、私たちに残されているのか……?」
ミナが膝に手をつき、肩で息をしている。
全員が限界に近い状態だった。
「……何かがおかしい。でも、今のままじゃ探る余裕すらない……」
リリアの言葉に、誰もが答えを出せずにいた。
そして、そんな彼らの前に、新たな影が現れる――。
「もう……ダメかもしれない……」
リリアは、周囲の仲間たちが次々と疲弊していくのを見ながら、胸の奥にわずかな違和感を覚えていた。
(……私だけ、そこまで辛くない)
魔力の枯渇、体の重さ、戦い続けることによる極限の疲労。
それらを口にする仲間たちをよそに、リリアだけは まだ十分に魔力が残っていた。
(でも……今、本当のことを言ったら……)
彼女は しんどそうなフリ をして、息を切らしながら膝に手をついた。
「くっ……もう限界だ……」
ギルバートが膝をつきそうになった、その瞬間——
「——アストラルストーム!!」
突如、空が光り輝き、眩い雷と暴風が獣の群れを襲った。
バリバリバリバリッ!!
空間が一瞬で裂け、雷と嵐の魔力が交錯し、戦場を覆っていた無数の獣が 一撃で蒸発 した。
「……え?」
リリアは呆然とした。
あれほど倒しても湧き続けた獣が、たった一撃で……。
「おいおい……マジかよ……」
ゼインが驚きの表情を浮かべる。
「何だ今の……?」
ミナが息を呑む。
そして、彼らの視界の先——
黒いローブを纏い、悠然と歩く者たちが現れた。
「——おい、こいつら……Fランクの奴らだけで、この状況を抑えてたのか?」
先頭を歩いていた青年が、淡々とつぶやく。
彼らは—— Dランクパーティ だった。
Fランクの戦士たちが立ち尽くす中、Dランクパーティ 「ヴァルキュリア」 のメンバーが姿を現した。
•リーダー:レイヴン(嵐と雷の魔法を操る天才)
•アメリア(光属性の結界魔法を操る防御役)
•ロキ(闇属性の妨害魔法を得意とする戦術家)
•ヴィクトリア(爆発魔法のスペシャリスト)
レイヴンは軽く手を払った。
「ギルドの依頼で状況を調査しに来た。……まあ、お前らだけで戦い続けるには無理があるな」
ギルバートが拳を握る。
「チクショウ……たった一撃で……」
カレンが冷静に前を見据える。
「あなたたちの目的は……ただの獣討伐じゃないんでしょう?」
レイヴンが頷いた。
「その通り。獣の異常発生の原因を突き止めるのが、俺たちの仕事だ」
リリアは息を飲む。
「原因……?」
アメリアが静かに言う。
「この現象の裏には 魔獣亜種 が関わっている可能性が高いわ」
「魔獣亜種……?」
リリアは初めて聞く言葉に戸惑う。
ロキが不敵に笑う。
「つまりな、お前らがいくら頑張って獣を倒しても、この状況は何も変わらないってことだよ」
戦場に 静かな絶望 が広がった。
「……このままじゃいくら獣を倒しても無駄かもしれない」
アレンが剣を握りしめる。
リリアは、みんなが焦りと不安を滲ませる中、 自分だけはまだ戦えるという事実を隠すように そっと拳を握る。
(……今は言えない。でも、もしものときは……)
「じゃあ……俺たちは、何をすべきなんだ……?」
レイヴンが不敵に笑った。
「それをこれから教えてやるよ——ついてこい」
こうしてFランクの3パーティは上位パーティであるDランクパーティの調査に同行する事となった。