表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

独裁国家

作者: 溜池山王外苑前

わー国は、民主主義国家ではありません。なぜかって?

小学校でも中学校でも高校でもまともな民主主義教育、政治教育が行われてないじゃん。税金の授業、法律の授業、予算の授業、果たして何時間ありました?

選挙権は一律18歳以上に与えられるのに、被選挙権は若くても25歳から。とっくの昔にインターネットが普及しているのにオンライン投票はできない始末。老害議員は己の保身のために猛反対。

議員なんてなったもん勝ち。何もしなくてもクビにならない。何もしなくても毎月給料がもらえるし、ボーナスも入る。民間企業やサラリーマンの常識からかけ離れた政治世界。どこのサラリーマンが己の給料やボーナスや予算や経費を決められるのか。政治家本人が自分のお給料もボーナスも予算も経費も決められることになぜおかしいという批判が噴出しないのか。

金で1票を買えてしまうのがこの国。もう嫌だ・・・


ほざくだけで何も行動できない私も小市民、愚民なのか・・・

Y国は、世界中から非難を受ける独裁国家。国連にも加盟できず、サミットにも参加できず、世界的博覧会、世界的スポーツイベントにも参加できない。当然、どの国とも貿易はできない。空路、海路ともに渡航はどの国でも禁止されている。なお、その国は海洋国であるため、陸路で行くことはできない。そんな独裁国家なのだが、どの国も手を出せない。Y国は原子爆弾を大量に保有しているからだ。たとえ独裁者が死んだとしても子供がたくさんいるため、跡継ぎに絶えない。独裁者を暗殺した国は、すぐさま原子爆弾で報復されてしまう。そんな恐ろしい独裁国家だから、やはり子供たちに教えてやらなければいけない。今日もある国のある学校で社会の授業が行われる。






「Y国は世界中の国から非難され、とても恐ろしい国とされています。」


「先生、なぜその国の人たちは外国に逃げないのですか?」


「飛行機でも船でも外国に行くことが不可能だからです。どの国もY国の飛行機と船の就航を禁止しています。もちろん、この国でも。」


「先生、その国の人たちはどんな暮らしをしているんですか?」


「貿易はできませんが、Y国には石油も天然ガスもあるため、エネルギーには困っていません。最近は、化石燃料に頼らず、太陽光発電、風力発電、水力発電に力を入れています。森林も多く、肥沃な土地もあるため、農業大国として知られています。また、海に囲まれた海洋国であるため、漁業も盛んです。」


「先生、その国にはホームレスはいますか?」


「Y国では、福祉は住宅に始まり、住宅に終わるという言葉があるくらい住宅福祉が充実しています。誰もが手頃な価格でお家やアパートに住むことができます。困っている人たちには一定期間無料で住宅を貸しています。したがって、ホームレスはいません。」


「先生、その国にお金持ちはいますか?」


「お金持ちも貧しい人もいます。しかし、Y国は孤立した国であるためみんなで協力しなければいけない国です。いがみ合いや差別はなく、格差是正も行われています。お金持ちもその国でしか生きられないため寄附に積極的で、高い税負担も受け入れています。また、税の使われ方に透明性があり、公正、公平な政治が行われているため、国民は安心して税を納めることができます。」


「先生、その国にインターネットやスマホはありますか?」


「はい、あります。インターネットはY国でも普及しているため、私たちが普段見ているサイトや遊んでいるゲームもY国の人は楽しめます。言論統制や情報操作はありません。」


「先生、その国に学校はありますか?」


「はい、あります。子供は社会全体で育てる、一人の子供も見捨てないという教育方針があるため、子供の貧困はなく、保育園、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、大学、大学院すべて無償で教育が受けられます。入学試験、定期試験、論文審査はありますがね。子育て支援のための給付金も国から手厚く出ています。」


「先生、なぜY国は世界から孤立していて、貿易と旅行もできないんですか?」


一人の子供がその質問をしてすぐに、教師ロボットは停止し、人間の先生が現れて、急遽、自習ということになった。子供たちにはロボットの故障のためと説明した。さっき質問した子供が人間の先生に同じ質問をしたが、返答はなかった。






その日の放課後、子供たち全員がオフラインになってから、二人の先生が話し始める。


「いくら人件費削減と言っても、やっぱりロボットにY国の授業をさせちゃダメだめだな。ガキの質問になんでも正直に答えちまう。」


「そうだな。Y国の授業だけは、人間の先生がやらないとな。次からはそうするよう上の連中に言ってみよう。」


「人件費も削減、校舎も撤去、土地は売却。授業は全部オンライン。体育は、課題だけ与えてデータを提出させる。世界中、そんな具合になっちまった。俺たちが子供の頃はそんなんじゃなかったのにな。」


「まったくだよな。この学校の教師がたった2人だけになるなんて夢にも思わなかったよ。Y国は今でも昔のままなんだよな。なんか良いよな。」


「おい、俺だからいいけど、間違ってもそんなこと他の人に言うなよ。教師じゃいられなくなるぞ。」


「ここでくらい言わせてくれよ。俺はあの子供の最後の質問に答えてやりたかったよ。みんなに言いたかったよ。世界中どの国も格差が広がって、福祉もなくなって、ほとんどみんな貧乏。言論統制、情報操作、監視社会。Y国だけが唯一まともな国だ。Y国が貿易しない理由はY国の方から断ったんだ。言論統制して、自由も平等もない国とは貿易なんてしたくないってね。渡航禁止の理由は、渡航を自由にしたら、みんなY国に行ってしまうからだ。俺だってこんな国にいたくない。Y国で楽しく暮らしたいよ。」


「そう熱くなるなよ。もう切るぞ。また明日な。」


「ああ、また明日。」






熱くなった同僚がオンライン会議から退出した後、もう1人の男は録画した会議動画をメールに添付して、次のような文面を書いた。


教育委員会 御中


私の同僚、H氏が、添付した動画にあるような発言をいたしました。このような者を許しておくわけにはまいりません。国家反逆罪で逮捕すべきです。


2040年までに中国は民主主義国家になるであろう(非民主主義国家の不可能性)。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ