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森で聖女を拾った最強の吸血姫〜娘のためなら国でもあっさり滅ぼします!〜  作者: 瀧川 蓮
第一章 滅びゆくジルジャン王国
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第六話 立ち込める暗雲

パールは6歳になり、さらに愛らしくなった。3歳のとき聖女の力が顕現して以降、私やフェルナンデスが指導しある程度の魔法も使いこなせるようになっている。


そのパールは今、私と一緒に森のなかで魔物退治の実践訓練中だ。目の前にいる体長2m以上あるオークに対し、パールが魔法を放とうとしている。


「パール。落ち着いていけば大丈夫よ」


「うん、ママ!」


パールが魔力を練ると、ブロンドの美しい髪がふんわりと持ち上がる。前方へ突き出した手の平に魔力を集中させ、一気に放った。


風刃(ウインドブレード)


鋭い風の刃が一直線にオークへ向かい、丸太のような腕を切断した。


「やった!」


「まだよ。油断しちゃダメ」


私の言葉にパールは頷き、オークと距離を取りつつ再度魔力を練り始める。


「『風刃(ウインドブレード)×2(ダブル)!!」


ひとつの風の刃はオークの残った腕を見事に切り落としたが、もうひとつの刃は外れてしまった。やぶれかぶれになったオークがパールへ突進し体当たりしようとしてくる。


が、パールにぶつかりそうになった瞬間、オークは跡形もなく消し飛んだ。


アンジェリカが軽く魔力を込めて腕を振った結果である。


「惜しかったわね。今後は魔法のコントロールが課題かな」


「んもう。私の力だけでなんとかしたかったのにー!」


ぷっくりと頬を膨らませてすねるパール。やだかわいい。


「生意気言わないの。あのままだとあなたふっ飛ばされていたわよ」


「そうかもだけど……」


まだ納得がいかないのか、唇を尖らせたままである。


「まあ今日はここまでね。戻ってお茶にしましょう。アリアが美味しいお菓子も用意してくれているわ。」


「お菓子!本当!?」


単純な娘に可愛らしいなと思いつつ、手を引いて屋敷に戻るのであった。



「お帰りなさいませ。お嬢様」

「ええ、ただいま」

「ただいまお姉ちゃん!」

「お帰りなさい、パール」


アリアにお茶の用意をお願いして部屋に戻ろうとすると、執事のフェルナンデスも戻ってきた。今日は王城へ行っていたのだ。


病気がちだった先王が引退し、皇太子が即位したことでフェルナンデスが顔合わせに足を運んだのである。


これまでも代替わりのたびに、アンジェリカではなくフェルナンデスが名代として訪れており、特に問題もなかった。


ただ、今回戻ってきたフェルナンデスの顔には怒りとも何とも言えない表情が浮かんでいた。


王城で何かあったのだろうか。アンジェリカが不思議に感じていると――――。


「お嬢様。後ほど報告したいことがございますので、お時間よろしいでしょうか?」


「今からでいいわ。パール、アリアとおやつ食べてなさい」


「うん、分かったー」


こういうとき素直なのは助かる。空気が読めるさすがのわが娘である。


「ごめんね。あとで行くからママにもお菓子残しておいてね」


アリアにパールを預け、屋敷のリビングでフェルナンデスと向き合う。


「王城で何かあったのかしら?」


「はい。このたび即位したハーバード15世から、お嬢様に登城して挨拶するようにとのお話がありました」


怒気を抑え込むようにしてフェルナンデスが口を開く。


ここにアリアがいなくてよかったとつくづく思った。アリアがいたなら「無礼な!」と激怒し即座に王城へ攻撃を開始していただろう。


もちろん、アンジェリカにとってもあまり愉快な話ではない。長い歴史のなかで真祖の恐ろしさや建国に貢献した事実などが正しく伝わらなくなっている可能性がある。


まあ、挨拶に来いと言われたくらいで怒り狂うほどアンジェリカは狭量ではない。何より、その気になればいつでも王国を地図上から消せるだけの力があるのだから。


「あなたから見た当代の王はどうだった?」


フェルナンデスはやや考えたあと、迷わず「愚物です」と切り捨てた。


おそらく、王国史上例を見ない暗君になるであろうとも。


それを聞いたアンジェリカは、当代の王に興味を抱いた。


初代の建国王は奴隷であったにもかかわらず聡明で、とても気持ちのいい青年だった。


あの初代から王家の血が薄まり、どのような愚物が生まれたのか余計に気になり始めたのだ。


「その話、受けるわ」


黒い笑みを浮かべながらアンジェリカはそう口にしたのだった。


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