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第五十七話 驚きに包まれるギルド

突如アルディアスを襲撃したエルフの死霊使いたちを撃退したアンジェリカ一行。ギルドへ報告へ行くついでにパールがアルディアスをテイムすることをキラが提案するのであった。

死霊使いのエルフを退けたアンジェリカ一行は、事の顛末を伝えるために再度レベッカの実家がある里を訪れていた。


「そうですか……。そのようなことが」


二人のエルフがアンデッドを使ってフェンリルを襲撃したこと、霧の森周辺にあるエルフの里をまとめ勢力を強めたい一派があることなどを伝えると、里長は神妙な顔をしてため息をついた。


「たしかに、このあたりの里同士はそれほど関係が良くはありません。そのため、同胞であっても争いになることは幾度かありました」


何でも、200年ほど前までは今のように複数の里が乱立せず、一つの里でまとまっていたそうだ。


それが、あるとき一人のエルフが里を出て新たな里を興し、そこからどんどん新しい里ができ始めたのだそう。


「アンジェリカ様には大変ご迷惑をおかけしました」


里長と妻が深々と頭を下げる。


「別に問題ないわ。それじゃ、私たちはフェンリルを魔の森に連れて行くから、そろそろお暇するわね」


あ、パールたちがギルドへ行くのなら私もたまにはついて行こう。


見送られながら里長の住居を出て里を歩いていると、何人ものエルフが自分のほうを見ていることに気づく。


……? どうしたのかしら?


不思議に思っていると、二人の女エルフと三人の男エルフがアンジェリカのもとへ駆けよってきた。


「アンジェリカ様、もう帰っちゃうんですか?」


女エルフはアンジェリカの腕に自分の腕を絡ませながら上目遣いで見つめる。


「アンジェリカ様…。俺もあのときの夢のようなひと時を忘れられません!」


思い出した。あのとき里長が用意してくれた「アンジェリカ様を癒し隊」だ。


うーん、たしかにこのまま帰るのは少々惜しい。


あんな雑魚相手とはいえ戦闘のあとは体が火照ってしまうのだ。


と、そのとき後ろから服を引っ張られていることに気づき…


「ねーねーママ。エルフさんたちと何かあったの?」


何ひとつ汚れのない、パールのきれいな目で見つめられアンジェリカは我に戻った。


まずい。いくら真祖とはいえ母親が美形のエルフたち相手に乱交まがいのことを繰り広げたとなると、嫌われてしまう…いや、最悪グレるかも。


サーっと顔から色が引くのを感じるアンジェリカ。


「あー…、うん。ちょっとお茶したりいろいろお話ししただけよ。じゃ、じゃああなたたち、またいつか会いましょうね」


ボロを出す前にこの場を離脱せんとするアンジェリカの姿を、エルフたちは寂しそうな目で見つめるのであった。



-リンドル・冒険者ギルド-


「霧の森へ向かったパール様たちは無事だろうか…」


冒険者ギルドの執務室では、ソファに腰掛けたギルドマスターのギブソンがパールたちの身を案じていた。


情報がほとんどないというのは本当に恐ろしい。


もし、精神に干渉できる魔物がいた場合、パール様たちの身に危険が及ぶ可能性は十分ある。


そして今さらながら思うのだが、もしギルドの依頼でパール様の身に何かあったら、私もギルドも、下手したらリンドルそのものがなくなる可能性がある。


ギブソンはアンジェリカの紅く冷たい瞳を思い出してぶるりと体を震わせた。


と、そのとき。


何やら叫び声のようなものが聞こえた。冒険者同士がケンカでもしているのだろうか。


ソファから腰をあげようとすると、一人の冒険者が執務室の扉を勢いよく開いて入ってきた。


「ギ、ギルドマスター! フェ、フェンリルだ!」


は? いったい何を言っているのだろう。このような街中にフェンリルが現れるなど…。


ばかばかしいと言わんばかりの表情を浮かべたギブソンだったが、とりあえず騒ぎを放置できずホールに向かった。


そこで見たのは…。


「みなさーん。大丈夫ですよー。あのフェンリルは私のお友達なんでー」


何とも緩い感じで冒険者たちへ触れまわっているパールの姿だった。その隣には真祖アンジェリカの姿も。


ん? さっきフェンリルは私のお友達って言ったような? ん?ん?


パールはギブソンの姿を見つけると、両手をあげて大きく手を振った。


うん。とりあえず無事でよかったです。



「こ……、これは……!」


ギルドの入り口前に鎮座する巨大な狼。


全身を覆う白銀の毛、鋭い眼光、凶悪な爪に牙。


これまで数多くの魔物を目の当たりにしてきたギブソンであったが、一種の神々しさすら感じる神獣フェンリルを前にして思わず息を呑んだ。


「霧の森で見つけたんです。お話したら仲良くなっちゃって。今日から私たちが住んでいる森で一緒に暮らすんです」


犬猫を拾ったんで連れて帰ります、くらいの軽い口調で話すパールにギブソンはアゴが外れそうになった。


「え…と。仲良く、ですか? このフェンリルと…?」


ギブソンは恐る恐るアルディアスの顔を下から覗き見る。


「はい。アルディアスちゃんって言います。それで、これから一緒に行動することもあると思うので、使い魔? の登録をしたいんですけど」


「は、はあ……」


まだギブソンは半信半疑というか、事態をよく呑み込めていないようだ。


『パールの話したことは本当じゃ。ほれ、早く手続きせんか』


「しゃ、喋った!!」


突然声を発したアルディアスにギブソンは盛大に驚いた。


それを見たパールは「あ。私と同じ反応」とひそかに笑みを浮かべるのであった。



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