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森で聖女を拾った最強の吸血姫〜娘のためなら国でもあっさり滅ぼします!〜  作者: 瀧川 蓮
第一章 滅びゆくジルジャン王国
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第三話 真祖と王国の関係


パールを屋敷に連れ帰ったその日のうちに、アンジェリカはジルジャン王国の王都オリエンタルへ向かった。パールのベッドや服などを買うためである。


向かった、といってもアンジェリカは高位魔法の『転移』を使えるため移動は一瞬で済む。久しぶりの王都であったため、のんびりと散策を楽しみつつ街の様子を観察してみた。


街はそれなりの活気にあふれているものの、人々の表情はどこか曇っているように見える。昔はもっと人々がいきいきとした表情をしていたのにな、とアンジェリカはかつての日々に思いをはせた。


ジルジャン王国は五百年の歴史をもつ大国である。建国王はジルジャン・ハーバード。もともと奴隷であった彼は当時の国に対し奴隷解放を求めて立ち上がった。その過程でたまたまアンジェリカと知り合い、気まぐれで彼女が手伝ったこともあり、ジルジャン王国の建国を成功させたのだ。


建国王は彼女に感謝し、未来永劫にわたり最高の敬意をもって接すると約束した。彼女が真祖であること、魔の森に拠点を構えていることは国家機密とされ、代々国の上層部のみが知ることとなった。


彼女が直接、国王や上級貴族と接することはないが、年に数回程度アリアやフェルナンデスは王城を訪れ情報交換などをしている。たまに贈り物を持ち帰るが、アンジェリカはあまり興味がないため扱いはアリアやフェルナンデスに任せていた。



王都で一番大きな衣料雑貨店に入り、パールのベッドを選ぶ。すぐ成長することを考え、少し大きめのベッドを購入した。


「ご自宅まで馬車でお運びしましょうか?」


魔の森に住む真祖と知るよしもない店員が提案してくれた。


「結構よ。『収納(アイテムボックス)』」


アイテムボックスと呼ばれる魔法を展開し、ベッドを収納すると店員は目を見開いて驚いた。


「まさか……アイテムボックスですか?」


店員が驚くのも無理はない。アイテムボックスは高位魔法のひとつであり、失われた魔法とも呼ばれている。十代の少女が使えるような魔法ではないのだ。


なお、実際は千年以上生きているのだが。


「内緒ね」


別にバレてもいいけど、などと思いながらとりあえず口止めするアンジェリカ。


店を出て「ほかに必要なものはと……」と考えつつ歩いていると、後ろから何人かつけてくる気配を感じた。まあ思い当たる節はある。


転移してもよかったのだが、アンジェリカはわざと人目につかない路地裏に入り込んだ。


「ようお嬢ちゃん。貴族のお嬢ちゃんが一人でこんなとこ来ちゃダメじゃないか」


「へへへ……。とりあえず金出せや。素直に出したら命は取らねぇ。まあ少し楽しませてもらうけどな」


三人の男がニヤニヤ笑いながらアンジェリカを呼び止める。もちろん、「貴族じゃなくて真祖だけど」などとアンジェリカは言わない。


くるりと振り返り、


「遊んであげるからいらっしゃいな。坊やたち」


にっこりと笑いながら挑発するアンジェリカ。


十六歳くらいの小娘にしか見えない少女に挑発され目を剥くならず者たち。


千年以上生きているアンジェリカにとって大抵の人間は坊やかお嬢ちゃんである。


「クソガキがなめやがって……」


「穴だらけにしてやるからな……!」


男の一人がアンジェリカに飛びかかる、が彼女が軽く手を振るとその瞬間男の姿が消し飛んだ。


何が起きたか理解できず、茫然とする男たち。刹那、アンジェリカは底冷えするような殺気を放つ。


「ヒッ……!」


涙目で腰を抜かし、全身をぶるぶると震わせるならず者たち。よく見ると失禁している。


「あらあら。どうしたのかしら。楽しいことしたいんじゃなかったの?」


薄い笑みを浮かべながらアンジェリカは男たちに近づいていく。


「ば、化け物……!!」


「無礼ね。言葉に気をつけなさい」


アンジェリカが再度腕を振るとまた一人男が消し飛ぶ。残された男はそれを見て絶望しながらも必死に命乞いを始めた。


「ゆ、許してください!!知らなかったんです!何でも言うこと聞くんで殺さないで……!!」


「無理ね。私は悪意を向ける者を決して許さないわ。」


そう口にすると、アンジェリカは男の足元に魔法陣を展開させた。


交換(チェンジ)


魔法陣が発する光に飲み込まれた男は跡形もなく消えた、のではなくハエになっていた。


「反省したみたいだから命だけは助けてあげるわ。まあその姿じゃ長生きは望めないけど」


にっこりと微笑みつつ「ではごきげんよう」と転移しようとしたが、パールの服を買い忘れたことに気づき慌てて買いに戻るアンジェリカであった。


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― 新着の感想 ―
[一言]  知らなかったんですは言い訳にならないでしょうよ。
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