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森で聖女を拾った最強の吸血姫〜娘のためなら国でもあっさり滅ぼします!〜  作者: 瀧川 蓮
第一章 滅びゆくジルジャン王国
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第二十話 混乱の後処理

王都オリエンタルで暮らす人々にとって、真祖による王城への攻撃はまさに青天の霹靂であった。


おとぎ話で伝え聞く国陥としの吸血姫が現れただけでも驚きであるのに、王侯貴族を誅殺すると宣告し強大な魔法で王城を焼き払ったのだ。


だが、人々がもっとも驚いたのは、国王が真祖の娘を人質にとって従属を迫ったという点である。


かつていくつもの国を滅ぼしてきたと伝わる真祖に対し、そのような行為と要求をするのは自殺行為だと誰でも分かる。あっさりと一線を越えてしまった国王に多くの人々は呆れてしまった。


へたをすると、国そのものが地図から消えていた可能性があるのだ。


短慮で愚かな王による統治がごく短い期間でよかった。国王の生存が絶望的であると確信した人々はそっと胸をなでおろした。



「パール。本当にどこにも痛いところはない?」


小高い丘の上から、いまだ燃え盛る王城を眺めていたアンジェリカがパールに問いかける。


「うん。大丈夫だよ」


今回はパールに怖い思いをさせてしまった。人質目的であったため危害は加えられていないが、もしそうでなかったと考えるとゾッとしてしまう。


パールの安全を確保できる方法を何か考えなければ、と強く思ったアンジェリカであった。


ふと背後に魔力の揺らぎを感じ、振り返るとアリアが転移でやってきたところだった。おそらく私とパールの魔力を感知したのだろう。


「パール!!」


「アリアお姉ちゃん!」


パールに駆け寄り抱きしめるアリア。


「大丈夫!?どこもケガしていない!?何も変なことされてない!?」


「大丈夫だよー。ママがすぐ助けに来てくれたからね」


「そう……。本当にごめんね。私がついていたのに……」


アリアはパールがさらわれてしまったことにひどく責任を感じていた。無事を確認して自然と涙がこぼれ落ちる。


「ううん。お姉ちゃんのせいじゃないよ。それに、悪い人たちはママがやっつけてくれたしね!」


見る影もなくなった王城を指差し、満面の笑みを浮かべる。


「おお……。お嬢様、なかなか派手にやりましたね……」


「さすがに今回の件は捨て置けないからね。ただ、統治する者がいなくなったから、何とかしないと人々の生活が混乱してしまうわね」


パールの居場所を探るため、いろいろな人間に手助けしてもらった。私の行動によってその人たちの生活が立ち行かなくなるのは寝ざめが悪い。


「お嬢様が下等種の人間どもにそこまで配慮する必要はないのでは?」


「パールを助けるのを手伝ってもらったしね。そのおかげでパールをすぐに助けられたわけだし、それくらいはしてもいいでしょ」


ただ、現実問題どうするか。王族の血筋が絶え、城に詰めていた有力な貴族もいなくなったとなると……。


私たちだけで考えていてもらちが明かないわね。


「とりあえず、キラたちに相談してみようかしらね」


目を閉じてキラの魔力をサーチすると、思いのほか近くにいるようだ。


「よし。行きましょう」


アンジェリカはパールの手を握り、アリアとともにキラのもとへ転移した。




巨大な魔力の塊により王城が蹂躙される様子を、キラたちは少し離れた場所から眺めていた。


その凄まじさに見る者すべてが息を吞む。


「すごい……。これがお師匠様の本気……?」


「つくづく、あのとき本気で敵対しなくてよかったな……」


「ああ、まったくだ」


キラにケトナー、フェンダーの三人はぶるりと体を震わせた。


そのまましばらく全壊した王城の様子を眺めていたのだが──


「ちょっといいかしら?」


後ろからいきなりアンジェリカに声をかけられ、三人は跳びあがるほど驚いてしまった。


「お師匠様!パールちゃんも!」


「キラちゃん!」


パールの元気そうな様子にキラは安堵する。


「キラ。それにあなたたち。パールを救い出す手助けをしてくれてありがとう。感謝しているわ」


国王はパールを人質にアンジェリカを呼び出すつもりであったため、いずれ犯人にたどり着いていたのだが、スムーズに救い出せたのは彼女たちの協力があったからだ。


「あと、これまでの経緯と、これからのことについて話をしたいと思うの」


アンジェリカはまずこれまでの経緯について話した。帝国との戦争に備えて従軍を要求されたこと、キラたちSランク冒険者に襲撃を依頼したのは国王であったこと。


そして、今回の件も国王の謀略であったこと。これに関しては王城を攻撃する前に宣告したからおそらく理解していると思う。


「王族と主だった貴族がいなくなったことで、いろいろ問題が起きると思うの。それをどうしようかと考えているのよね」


「たしかに、このままでは何かと問題ですね。帝国もここぞとばかりに介入してくる可能性がある」


ケトナーが考え込むような仕草を見せる。


「町の治安が悪化する可能性もあるな」とフェンダー。


「では、冒険者ギルドのギルドマスターに相談してみませんか?」


少し思案したあとキラが口を開く。


ほう。どういうことだろう?


「ギルドマスターはこの町の有力者であり、信頼できる人物でもあります。何かよいアイデアを提案してくれるかと」


なるほど。


「ではみんなで冒険者ギルドへ行きましょう」


疲れているパールをアリアが転移で屋敷に連れ帰り、私たちは冒険者ギルドへと向かった。



-冒険者ギルド・執務室-


「大変なことになりましたね……」


冒険者ギルドのギルドマスターであるギブソンは、諜報員からの報告書に目を通しながらため息をついた。


自分はその場にいなかったが、真祖を名乗る少女がギルドに訪れ、殺気だけで荒くれ者の冒険者たちを制圧した話はすでに聞いている。


その少女は王侯貴族に対し攻撃の意思を宣告し、実際に王城を壊滅させたのである。


しかも、報告書によるとたった一撃の魔法で王城はほぼ全壊、炎に飲み込まれたという。


おとぎ話で語られる真祖の力が誇張されたものでないことは、すでに疑いようがない。


これからどうなるのか……、と思案していると、職員からSランク冒険者が面会を求めていると伝えられた。


「ここへ通してくれ」


少しして部屋に入ってきたのは、Sランク冒険者のキラとケトナー、フェンダーの三人、そして紅い瞳が印象的な美少女だった。


「忙しいところすまない、ギルドマスター。少し相談があって来たんだ」


「問題ないですよ。ところで、そちらのお嬢さんは……?」


美しい黒髪と紅い瞳、優雅にゴシックドレスを着こなすその姿から想像するに、上級貴族の令嬢であろうか、などとギブソンは考える。


「この方は私のお師匠様です」


ギブソンはキラの言葉に首を傾げた。エルフとのハーフで実年齢50代であるキラの師匠?この少女が?


やや混乱していると、紅い瞳の少女が静かに口を開いた。


「私はアンジェリカ・ブラド・クインシー。真祖よ」



「…………え?」



一瞬思考が停止してしまったギブソン。


「ギルドマスター。この方が真祖であり国陥としの吸血姫であることは間違いないわ。そして今は私のお師匠様でもあるの」


キラの言葉を聞いても、まだギブソンは信じられなかった。目の前にいる美しい少女が、おとぎ話で伝えられるおそろしい国陥としの吸血姫とは。


「それからギルドマスター。以前あなたの案件で魔の森に住む吸血鬼の退治があっただろう?その魔の森にいたのがこの方だ」


続くケトナーの言葉を聞いて、ギブソンの顔色がみるみる青くなる。


「そ、そんな……」


「ああ。そのことに関しては気にしていないわ。多分だけど、あなたは真の依頼者を知らず森に住んでいるのが私だとも知らなかったのでしょう?」


たしかにその通りだ。真祖の討伐と聞かされていたのなら、そのような依頼請けるはずがない。


「その話はもういいわ。それより、この国の未来についての話をしにきたの」


その言葉にギブソンの目が真剣になる。


「聞きましょう」


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― 新着の感想 ―
[気になる点]  始祖の特徴くらいは報告しとかなきゃ。
[気になる点] 依頼人不明なのを下調べもせずにSランクに紹介しちゃったギルマスはかなりダメでは。
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