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第百六話 特訓

ソフィアから学園対抗魔法競技会について聞かされたアンジェリカ。一方、リズは教え子の一人メルにとんでもない才能が隠されていたことを知り驚愕するのであった。

「お願いします! 私たちに魔法を教えてください!」


二人そろってペコリと頭を下げる様子に戸惑いの表情を浮かべるアンジェリカ。隣に座って呑気にクッキーを頬張るパールに困ったような視線を向ける。


アンジェリカに頭を下げているのは、パールのクラスメイトであるジェリーにオーラ。学園が休みなのでパールと遊ぶためアンジェリカ邸へ訪れていた。


「えーと……二人ともとりあえず頭を上げてくれるかしら?」


昨夜、パールから競技会の話は聞いた。出場選手は学園内で選抜するのだが、パールはふるいにかけるまでもなく候補に名が挙がっているとのこと。


何としてもパールと一緒に出場したいジェリーとオーラだが、後日行われる選抜テストに合格しなければいけないらしい。


というわけで今にいたる。アンジェリカの言葉におずおずと頭を上げる二人。


「まあ……パールのお友達だし指導をするのはいいんだけど……」


パッと明るい表情を浮かべた二人は顔を見あわせたあと手を取り合って喜んだ。


「でも、外部の者に指導してもらうことに問題はないのかしら? 学園の教師はよく思わないんじゃない?」


「あ、先生にはもう伝えてあります! パールちゃんのお母様に指導を受けにいくつもりですって伝えたら、先生も行きたいって悔しそうにしてました」


パールの親は国の上層部とも関わりがある高位冒険者、ということになっている。教師が自分も指導を受けたいと悔しがるのも頷ける話である。


「そ、そう。なら問題ないわね。じゃあ学園が終わったあといらっしゃいな。アリアを迎えによこすから」


「はい! ありがとうございます!」


元気いっぱいに返事をする二人。そのあとはパールも加わり学園生活のことなどお喋りに華を咲かせた。




「魔法競技会?」


「うん。私たちが通ってる王立魔法女学園とリンドル学園の生徒が魔法で戦うの」


器に盛られたクッキーを手に取りひょいっと口のなかへ放りこむユイ。しっかり者のモアからはしたないと窘められるもどこ吹く風である。


メルはと言えば、庭で拾ったという丸い石を一生懸命に磨いている。意味不明な行動だが、メルのこうした行動や奇行にユイやモアは慣れている。


「その競技会には希望すれば出場できるんですの?」


「いえ、学園内で選抜された生徒だけです。基本的には成績上位者から選ばれるんですが、選抜試験に合格すれば出場できるんです」


聖デュゼンバーグ王立魔法女学園は、魔法技術と知識の向上を目的とする教育機関である。魔法で身を立てたい者、魔法研究に興味がある者など、意識の高い生徒が国中から集まる場所だ。


なお、学園の運営は国の機関が担っているが、教育方針などは教会の意向が大きく働いている。入学式や卒業式などには、枢機卿を介して教皇ソフィアのありがたいお言葉も述べられるのだ。


「あなた方、学園での成績はどうなんですの?」


ティーポットから紅茶のお代わりを自らカップへ注ぎつつリズが質問する。


「うーん、私とモアは割と成績いいほうかなぁ。メルはめちゃくちゃ悪い」


「ですね。あまり言いたくないですが、メルちゃんは学園に入学できたのも不思議なくらい……」


いまだ石を磨き続けているメルに二人はちらりと視線を送る。


「二人とも酷い。私だってやるときはやるもん」


ふぅ、と一息ついたメルは磨いた石を窓から差しこむ光にかざしにんまりとした。どうやら満足いく仕上がりになった模様。


「メル、あなたなぜ学園では成績がよくないんですの? お世辞ではなく、あなたの才能は素晴らしいものですわよ。きちんと指導を受けていればもっと早くその才能は開花していたはずですわ」


「んー……学園の先生の話って何か分かりにくいというか理解できないというか。とにかくこれをやりなさいって言われても、なぜそれが必要なの? って疑問が湧いちゃって、それを質問しても答えてくれないし」


ふむ。やはりこの子は天才肌のようですわね。でも、よく接していればこの子の特異性には気づくはず。もしかして、ただの天然なめんどくさいお馬鹿さんだと思われてるのかしら?


「どうしたの、リズせんせー?」


「……いえ。ずいぶん無能な教師もいたものねと呆れているんですわ」


適切な指導さえしていればメルの才能は必ず開花していたはず。それをしていないのは怠慢かつ無能としか言いようがない。


「たしかに、リズ先生の指導は学園の先生に比べてとても分かりやすいです」


キラキラとした目を向けるモア。紅茶の湯気で少しメガネが曇っていた。


「うん。リズ先生の話は頭のなかにスッと入る。頭のなかでぴかーんって何かが光るの」


意味不明なことを口にしたメルは、すでに冷めているはずの紅茶にふーふーと息を吹きかけた。やはりど天然である。


「でも、リズせんせーの指導を受け続けたらきっとメルも選抜試験に合格できるよね! これで三人そろって出場できるぞー!」


おーっ、と拳を天井に向かって突き上げるユイとモアを、メルは首を傾げながら眺めるのであった。


「ふふ。では選抜試験に合格できるよう明日からはもっと厳しくいきますわよ」


はい! と元気よく返事をする三人にリズは優しい笑みを向けた。

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[気になる点] いきなり視点が切り替わるのでん?ってなることがある
[一言] やっぱり従姉妹?との代理戦の展開かな?
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