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森で聖女を拾った最強の吸血姫〜娘のためなら国でもあっさり滅ぼします!〜  作者: 瀧川 蓮
第一章 滅びゆくジルジャン王国
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第十一話 Sランク冒険者たちの強襲

魔の森の奥に鎮座する真祖の屋敷。


その敷地内でアンジェリカとパールが一定の距離をあけて向き合っていた。


「いつでもいいわよ。パール」


「うん!」


目を閉じて集中しつつ魔力を練り始める。


展開(デプロイ)!』


詠唱するとパールの背後に直径30cmくらいの魔法陣が二つ現れた。そして……


魔導砲(キャノン)!』


パールが叫ぶや否や、魔法陣の中心から光の砲弾が射出され、もの凄い速さでアンジェリカを襲った。


まっすぐに飛んでくる光の砲弾を、アンジェリカは軽く腕を振って消滅させる。


「うん、かなり上達したわね。パール」


にっこり笑って褒めてあげると、パールはその場でぴょんぴょん飛び跳ねながら喜んだ。


そう、今日はパールへの魔法指導の日。


さっきのはアンジェリカが創ったオリジナル魔法である。


「もっと魔力操作が上手になれば、まっすぐ飛ばすだけじゃなくて動く相手を追尾することもできるわよ」


「そうなんだ!じゃあ今度はそれを教えてね、ママ!」


「ええ、いいわよ」


聖女だからなのか、パールの魔力はかなり多い。魔法を扱うセンスも抜群だ。まだ6歳であることを考えると、末恐ろしいなとも思う。


人々を守り癒すはずの聖女が、次々と凶悪な攻撃魔法を覚えていくのはどうかと思ったが、身を守る手段が多いに越したことはない。



「戻ってお茶にしましょうか」


とパールに声をかけると同時に、何かの気配を感じた。


どうやら何者かが結界を破って侵入したようだ。


アンジェリカが張った常時結界は、Aランクの魔物でも破れないほど堅牢なものである。


それを破って侵入したということは、Aランクの魔物よりは強いのだろう。


「……ママ?」


私の手を握ったまま、パールが心配そうに見上げてくる。


「フフ、大丈夫よ」


方角は──あっちか。気配は多分人間、三人くらいかな。


あたりをつけた方向へ目を向けると、森のなかから三人の人間が現れた。


格好を見るに、どうやら冒険者のようだ。


おそらく真ん中の男が剣士、向かって左の男は重戦士、右側の女が魔法使いといったところか。


「パール、少し後ろに下がっていなさい」


「うん」


三人組の冒険者は少し離れたところで立ち止まった。


「お前がこの森に住みついている吸血鬼か?」


年齢は30代後半であろう剣士の質問に対し「ええ、だったら何かしら?」と応じるアンジェリカ。


「そうか。恨みはないが少し痛めつけさせてもらうぜ。こっちも仕事なんでな」


剣士が慣れた動きで剣を抜く。


仕事ねえ……。まあ何となく背後関係は分かるけど。


目の前の三人は人間にしてはまあまあ強そうに見える。


が、もちろん真祖の敵にはなりえない。


おそらく一瞬で皆殺しにできるが、ここにはパールがいる。


6歳児の前で殺しちゃうのはよくないよね、情操教育的にも。


よし、殺さない程度に痛めつけよう。ついでに、パールの魔法学習になるように工夫してみよう。


そんなことを考えているうちに、剣士の男が一気に距離を詰めてきた。速い。


そのまま高く跳び上がり、上段から斬り伏せにきたところを、指で剣を挟んで止めた。


「なっ!!!」


まさか受け止められると思わなかったのか、剣士の顔が驚愕に染まる。しかも指で白刃取りなど尋常な技量ではない。


狼狽えながらも距離をとる剣士に代わり、重戦士が大型ハンマーを構えて突っ込んでくる。さらに、その後ろでは魔法使いの女が詠唱を開始していた。


「攻守交代しないとパールに魔法見せてあげらんないわね」


小声で呟いたアンジェリカは、ゆったりと重戦士に近づき、フルスイングされたハンマーに軽く触れて粉々に砕いた。


同時に魔法の矢が複数飛んできたが、アンジェリカに魔法は通用しないためそのまま体で受け止める。


「なんだとっ!!?」


「はぁ!?魔法無効化!?」


Sランク冒険者である自分たちの攻撃がまったく通用しないことに、愕然とした表情を浮かべる三人。


「……おい。お前はただの吸血鬼じゃないのか……?」


剣士の男が嫌な汗をかきながらアンジェリカに問いかける。


「私はただの吸血鬼よ。真祖一族の姫だけどね」


その言葉に三人は凍りついたように動かなくなった。


いや、動けないのだ。今アンジェリカはやや殺気を込めた魔力を放出している。


「く、国陥としの吸血姫──!」


過去にいくつもの国を単独で滅ぼしたと言われる伝説の吸血鬼。おとぎ話で語り継がれるその名を知らない冒険者はいない。


目の前にいるのが真祖であると確信するのに十分な殺気と魔力。


疑う余地はなかった。


「ん?もう終わりなんて言わないでね?娘の教育のために魔法を見せてあげないといけないから。」


これは絶対にヤバいやつ、と直感した三人はアンジェリカに背を向けて一目散に逃げ出した。


「パール、よく見てるのよ」


「うん!」


アンジェリカが右手を軽く横に振ると、彼女の背後に直径1m程度の魔法陣が横並びに10個展開した。


魔導砲(キャノン)


瞬間、魔法陣から一斉射撃が開始される。


いくつもの光弾がとんでもないスピードで射出され、逃げる三人を正確に追尾していく。


当然逃げられるはずもなく、三人は一斉射撃を受けボロ雑巾のようになってしまった。



「ママすごーーーーい!!!」


パールは大騒ぎである。


「ちゃんと見た?パールも練習を続ければあれくらいはできるようになるわよ」


「うん!頑張る!」


ちなみに、パールが見ていたため魔法の威力は控えめにしている。冒険者たちもボロ雑巾のようになっているが、命に別状はないだろう。


情操教育は大切だからね、などと考えていると屋敷からアリアが大慌てで走ってきた。


「お嬢様!!大丈夫ですか!?パールもケガはない!?」


「ええ、何の問題もないわ」


「くっ……お嬢様の屋敷の敷地に侵入するとはなんと無礼な……!始末していいですかお嬢様?」


「ダメよ。パールの魔法教育の役に立ってくれたし。屋敷に連れて行って手当てしてあげてちょうだい。」


「本気ですかお嬢様!?下等な人間ごときを神聖なお屋敷のなかになんて……」


あ。この子はそういう子だったわね。


「アリアお姉ちゃんーー、私も人間なんだけど……」


パールが唇を尖らせてアリアを上目遣いで見る。


「何言ってるの。パールは私の妹じゃない」


「えへへーーー」


うれしそうに少し頬を染める様子が何とも愛らしい。


「まあ、あの三人には聞きたいこともあるのよ。お願いね、アリア」





最後までお読みいただきありがとうございました。少しでも面白いと感じてもらえればうれしいです。ブックマークや感想、評価ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言]  力量さが分かってないというか、情報が隠蔽されてる系だと思うけど、事前と対峙した時の情報収集ができてないのは……
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