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森で聖女を拾った最強の吸血姫〜娘のためなら国でもあっさり滅ぼします!〜  作者: 瀧川 蓮
第四章 浸食されるランドール
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閑話 アンジェリカの弱点 1

魔の森の奥深く。ある屋敷の庭では一人の少女が複数人に取り囲まれていた。


輪の中心に立つのは、屋敷の主人である真祖アンジェリカ。いつものゴシックドレスを纏うアンジェリカは腕を組んでそのときを待つ。


アンジェリカを囲むのは、彼女の愛娘であるパールに弟子のキラ、吸血鬼ハンター兼メイド見習いのルアージュ、ダークエルフの居候ウィズ。


風が止み静寂が訪れた刹那、まずパールが動いた。瞬時に複数の魔法陣を展開すると、アンジェリカに照準を合わせる。


魔散弾(バレット)!』


魔法陣から細い光線が一斉に発射されアンジェリカに襲いかかる。が、アンジェリカに魔法はいっさい通用しない。


パールもそれは重々承知している。これはただの目くらまし。


アンジェリカの視界を奪い注意を向けさせた瞬間を狙い、ルアージュが懐に侵入し二本の剣で連撃を見舞った。


が、常に五枚の結界で体を守るアンジェリカには通じない。以前彼女と戦ったことがあるルアージュもそれは理解済みだ。軽く結界を削ったのを確認し再び距離をとる。


「ウィズちゃん!」


「おお!」


パールの合図に合わせウィズが動いた。


闇の鎖(ダークチェイン)!』


ダークエルフが使う闇属性魔法なら……と一縷の望みを抱いた一同だが、その希望はあっさりと打ち砕かれる。


意思を持つ蛇のようにアンジェリカの体へ絡みつく黒い鎖。だが、その細い体に巻きついたかと思った瞬間、粉々にちぎれ弾けてしまった。


「くっ……! やっぱりダメか! キラ!」


「ああ!」


ウィズの呼びかけに反応したキラが即座に魔法を放つ。またもや目くらましである。


パールも同時に魔導砲を放ち援護した。その隙を逃さず、背中の剣を抜いたウィズが一気にアンジェリカとの距離を詰め鋭い剣撃を放つ。


さらにルアージュも再度アンジェリカの懐に入り連撃を叩き込んだ。が──


剣が、腕が動かない。見ると、アンジェリカは左手の指二本でウィズの剣を、右手の指二本でルアージュの剣を挟み止めていた。


刹那、アンジェリカの体からとてつもない魔力が開放され二人は吹き飛ばされた。ゴロゴロと地面を転がる。


放った魔力が強すぎたのか、二人は起き上がってこない。どうやら気絶しているようだ。


「うん、今日はここまでかしらね」


にっこりと笑顔を浮かべたアンジェリカがパンパンと手を打つ。その場にへたり込むキラにパール。


「この面子で一斉にかかってまったく何もできないなんて……はぁ……」


「うう……強すぎるよママぁ……」


分かりやすく落ち込むパールとキラのもとへ近づいたアンジェリカは、そっと二人の頭を撫でる。


「ふふ。娘と弟子に負けるようじゃダメでしょ。もっともっと精進しなさい」


ちらりと目を向けた先では、子フェンリルがルアージュとウィズの顔を心配そうにのぞき込んでいた。顔をペロペロと舐められ目を覚ます二人。何が起きたのかを思い出し、パール、キラと同様その場でがっくりとへこんでしまった。


なお、再度会議を開いた結果、子フェンリルの名前はミルクとシェル、コットンに決まった。白い毛を纏っているので、白から連想できる古代語をいくつか挙げて、そこから選んだのである。


「あなたたち、大丈夫? ケガはしていないわよね?」


アンジェリカがルアージュとウィズに声をかける。


「はいぃ……精神的な傷しか負っていません~……」


「右に同じです……はぁ、つら」


めそめそとする二人に近づくと、パールたちにしたのと同じように頭をそっと撫でる。ルアージュは慣れているが、初めてアンジェリカから頭を撫でられたウィズは思わず赤面してしまった。


「今日の戦い方はよかったわよ。もっと頑張りなさい」


ふふふ、と笑うとアンジェリカはそのまま屋敷のなかへと消えていった。




「なあ、アンジェリカ姐さんの弱点って何かねぇのか?」


「お師匠様の弱点……聞いたことないし、あるとも思えんのだが……」


ここはアンジェリカ邸の一室。ウィズが自室として使用している部屋である。アンジェリカがソフィアとお茶を飲んでくると出かけたので、パールとキラ、ルアージュはウィズの部屋に集まり作戦会議の真っ只中だ。


「お嬢、娘なら何か弱点知ってるんじゃないですか?」


「まったく知らない……逆に弱点とかあると思うの? ウィズちゃん?」


「……ないと思う」


再び頭を抱えて唸り始めるウィズ。


「うーん、アンジェリカ様は普通の吸血鬼とはまったく別次元の存在ですからねぇ~……」


今日は仕事がお休みのメイド見習いルアージュが口を開く。


「ルアージュの姐さん、その気が抜ける喋り方何とかならないんですか……?」


「うん、無理ぃ~」


これはいつものやり取りである。パールやキラにとってはよく見慣れた光景だ。


「あ! アリアの姐さんに聞けば知ってるんじゃねぇの? 何せ大昔からアンジェリカ姐さんに仕えているんだし」


「なるほど」


同時に返事をした三人は、すぐさま部屋から飛び出しアリアのもとへ。今の時間帯はキッチンで夕食の仕込みをしているはずだ。


「お姉ちゃん!」


「姐さん!」


「アリア(さん)!」


キッチンへ駆けこんできた四人にいきなり大声で同時に呼ばれ、思わずその場で跳びあがりそうになるアリア。


「ど、どうしたのよ!?」


あーびっくりした、と呟くアリアに四人は先ほど議論していた内容を伝えた。


「お嬢様の弱点? うーん、お嬢様は小さいころからめちゃくちゃ強かったしなぁ」


「いや、戦いで敵わねぇのはもはや分かってるんですよ。だから、それ以外で何かちょっと驚かせたり悔しがらせたりできねぇかなって」


「うーん、そうねぇ。あ、そう言えばお嬢様は辛い食べ物が苦手だったような……」


「それだ!!」


同時に叫ぶ四人。よし、さっそく辛い食べ物を買いに行こうと、四人はドタバタとキッチンから出ていった。


「んー……苦手だった……よね?」


自分の記憶に自信がないアリアは、騒がしくキッチンを出ていく四人の背中を眺めつつ首を傾げるのであった。


が、アリアのこの助言がまさかあのようなことになるとは、このとき誰も想像だにしなかったのである。

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