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森で聖女を拾った最強の吸血姫〜娘のためなら国でもあっさり滅ぼします!〜  作者: 瀧川 蓮
第一章 滅びゆくジルジャン王国
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第九話 小さな聖女パールの社会勉強

「ママ!町に行ってみたい!」


国王への挨拶(?)に王城へ出かけてから3日後。突然パールがこんなことを言い出した。


ちなみに、王城での出来事を聞いたアリアはすぐにでも王城へ出かけていきそうな雰囲気だったので、やはり事後報告でよかったとアンジェリカは胸をなでおろした。


「ねぇパール。どうして町に行きたいの?」


「フェルさんとお勉強してるとき、教えてもらったの。町にはいろいろなお店があって、私くらいの年の子どもがお使いで買い物に行ってるんだって!」


ああ、なるほど。


そういえばパールは一度もこの森から出たことなかったわね。


「パールはお使いに行ってみたいの?」


「うん!!」


「でもダメ」


パールの切なる願いをあっさりと却下するアンジェリカ。


「えーーー!なんでーーー!?」


「危ないからよ」


「危なくないよ!魔法も使えるし、町まではお姉ちゃんに転移で連れていってもらうし!」


アリアも共犯か。


「ダメ。どうしてもというのなら、私かアリアが町のなかまで一緒についていくわ」


いくら魔法が使えるとはいえパールはまだ6歳。王都の中心エリアにはガラの悪い冒険者もいればチンピラまがいの人間もいる。


そんなところへかわいい娘を一人で放り出すなんてとんでもない。


「んもーーー。ママ過保護すぎるよぅ……」


「当然よ。あと歩く道とか入るお店とかも全部私かアリアが決めるから。」


「何でよーーー!過干渉だよママ!」


……どうしよう。娘がグレてしまった。


いや、これがいわゆる反抗期──。


……違うか。


「じゃあこうしましょ。町にはアリアと一緒に行く。もちろん町のなかも一緒よ?私はお留守番してるから、紙に書いたものを買ってきてくれる?お店選びはパールに任せるから」


「ほんと!!?」


「ええ」


「やったーーーー!!ありがとうママ!」


やだかわいい。


「そうだ。町に行くなら手袋していきなさいね」


パールの右手の甲には聖女の紋章がある。誰かに見られたら面倒なので手袋は必須アイテムだ。


「わかったー!」


なお、去年の冬、パールにプレゼントした手袋にはこっそり特殊効果付与(エンチャント)を施してある。


どこにいようと魔力を感知し居場所が分かるエンチャント品だ。


万が一、森で迷子になったときのために作ったのである。


とりあえずあの手袋さえしていれば、何かあったときすぐ転移で近くまで行けるわね。


もちろん、パールはそのことを知るよしもない。


まあ、アリアが一緒だし何も心配はないか。




翌朝、目覚めてダイニングへ行くとすでにパールが起きていた。


「おはようパール。ずいぶん早起きね」


「うん!楽しみすぎて早く目が覚めちゃった!」


ああ、そういえば私も昔、初めてドラゴンを退治しに行くとき待ちきれなくて早起きしたような。


ずいぶんスケールの大きな話である。



アリアとフェルナンデスが運んでくれた朝食をパールと二人で食べてから、彼女への指令を記した紙をわたす。


「そこに書いてあるものを買ってきてくれるかしら?」


「わかった!」


「お金はアリアが持ってるから、支払いのときもらってね。使い方は習ってるよね?」


「大丈夫!」


「じゃあ、あとはこれね。はい」


不思議そうに首を傾げるパールに銀貨を三枚わたす。


「これはあなたへのお小遣いよ。何か欲しいものがあればそれで買いなさい」


「お小遣い!?いいの!?ありがとう!!」


「フフ、無理に全部使わなくていいから、余った分はあなたが貯金しなさい」


「うん!」


ああもう。うちの娘がかわゆすぎる件。


バカ親で結構。


こんなのだが最強種族、吸血鬼の真祖である。


パールにデレてる顔をアリアがニヤニヤしながら見てたので、ひとつ咳払いをして彼女のほうを向く。


「アリア、今日はよろしくお願いね」


「かしこまりました。お嬢様」


「パールの安全を一番に考えてね。害がありそうな人間がパールに近づいたら迷わず消し炭にしちゃっていいから」


さらっと物騒なことを口走るバカ親……もといアンジェリカ。


「は、はい。お任せください!」


それからすぐに、アリアとパールは王都へ出かけていった。まあ転移だから王都までは一瞬だ。




「ちょっと帰ってくるの遅くないかしら……」


パールたちが出かけてからというもの、まったく落ち着けないアンジェリカ。


ちなみにまだ1時間も経っていないが。



やっぱり私もついていくべきだったかしら?もしかして何かあった?いや、アリアがそばにいるんだし……。


そんなことを考えつつ悶々と過ごすこと三時間。


「たっだいまーーーーー!!」


やっと二人が帰ってきた。


「お帰りパール!」


思わず抱きついてしまう。ああ、三時間離れてただけでちょっと大人になったような。


そんなはずはないが。


「町はどうだった?楽しかった?」


「うん!お姉ちゃんとカフェで紅茶も飲んだよ!」


「そう。楽しかったのならよかったわ」


「あ、これママからお願いされてた物ね!」


パールから受けとった紙袋のなかを覗くと、紙に書いた通り紅茶の茶葉と万年筆のインクが入っていた。


「はい、ありがとう。よくできました」


優しく頭をなでてあげると、うれしそうに目を細めるパール。


これにて、小さな聖女パールの記念すべき初めてのお使いが無事に完了したのであった。


最後までお読みいただきありがとうございました。少しでも面白いと感じてもらえればうれしいです。ブックマークや感想、評価ありがとうございます。

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