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森で聖女を拾った最強の吸血姫〜娘のためなら国でもあっさり滅ぼします!〜  作者: 瀧川 蓮
第一章 滅びゆくジルジャン王国
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第0話 プロローグ

濛々(もうもう)と舞い上がる粉塵と火煙。風にのって運ばれる焦げた臭いが人々の鼻腔を刺激する。未だ猛々しく燃え盛る炎は夕暮れのようにあたりを赤く染めた。


その日、歴史あるジルジャン王国は国としての機能を停止した。


十代半ばにしか見えない一人の美少女が放った一撃の魔法で王城は全壊し、自慢の騎士団も消し炭となり王族も一人残らず殺されたのである。


王城から少し離れた小高い丘の上で、小さな女の子を連れた一人の少女がいまだ爆炎に包まれる王城に視線を向けていた。その深紅の瞳からは何の感情も窺えない。


少女の名はアンジェリカ。吸血鬼の頂点に君臨する真祖一族の姫であり、過去に単独でいくつもの国を滅ぼした国()としの吸血姫である。


ジルジャン王国の国王は真祖の逆鱗に触れた。単独で国を焼き払える真祖を意のままにできると勘違いし、愚かとしか言いようのない行動を起こした。


その結果がこの惨状である。


「……さて、これからどうするかしらね」


背中まである美しい黒髪、優雅にゴシックドレスを纏う紅い瞳の美少女、アンジェリカは静かに口を開く。


「どうするってどういうこと?ママ」


アンジェリカをママと呼ぶ六歳の女の子、パールが素直な疑問を口にした。


アンジェリカはパールに優しく微笑みかけたあと、彼女の手をそっととる。星形の紋章が浮かぶ手の甲に軽く触れ、頭をなでた。


「王族の連中は自業自得だったけど、このままじゃこの国に住んでいる人たちが困るでしょ?だから何か考えてあげないとね」


「そっかー!ママは優しいね!」


優しい人は一国を滅ぼしたりしないのよ、とツッコミそうになったのをこらえながら苦笑いするアンジェリカ。


彼女自身、自分が優しい生き物だとはまったく思っていない。目の前で起こっていることも、()()()()()()()()()ことだと納得している。


なんせ、この国の連中は彼女の「宝物」に手を出そうとしたのだから。


アンジェリカにとって唯一無二の存在であるパールをさらい、危険にさらした王族や貴族にかける情けはない。


敵意と悪意のもと愛娘に害をなす者、平穏を脅かす者には容赦しない。


この子の幸せのためなら私は迷わず国でも世界でも焼く。


ただ、今回の件では人間たちにもいろいろと手伝ってもらった。王族が滅んだ以上、今後この国の運営は混迷を極めるであろう。


「とりあえず、国として機能する程度には手をかしてあげようかしらね」


聖女の紋章が浮かぶパールの小さな手を握りしめながら、アンジェリカは遠くに目を向けた。

「万能吸血鬼リズ先生のほっこり弟子育成日記」

「永遠のパラレルライン」「戦場に跳ねる兎」「今も貴方に私の声は聴こえていますか」連載中。「連鎖〜月下の約束〜」完結⭐︎

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