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48.もう黙って寝ようか

「ああ、そうだよね、うん。大丈夫、私ソファで寝るから!」

「それはダメだ。俺がソファで寝る」

「クルトは大きいんだから、ソファで寝たら身体が痛くなっちゃうでしょ? 私は小さいから大丈夫!」

「そういうわけにはいかない!」

「……じゃあ、一緒でいいんじゃない? ベッド大きいし」

「……」


 これはキングサイズだろうか。

 こんなに大きなベッドで寝たことはないくらい、大きい。

 これなら寝返りを打ったって身体が触れ合うことはなさそう。


 だけど深い意味なんてない私の発言にクルトが黙り込んでしまったから、変な空気が部屋を包んだ。


 猫たちは今日はバッグの中で寝るのか出てこないし、茶太郎はあちこち部屋の中を彷徨った後、満足したのか床に伏せている。


「……まぁいいや、とにかく私お風呂入ってくるね」

「ああ……」



 すっかり冷えてしまったから、湯船にお湯をたっぷり溜めて、鏡の前で溜め息を一つ。


「……」


 勢いで家を出てきてしまったけど、これからどうしようかな。

 毎日ホテルに泊まるわけにはいかないし、バイトも増やさなきゃ――。


 考えなければならないことはたくさんあるけれど、これからは自由なのだ。

 学費だって親に払ってもらうわけだから、大学は辞めたっていい。

 自分のしたいことを勉強して、これからは悔いのないように生きる。


 それに私の一番の望みは、クルトと一緒にいることだ。

 私は決して一人で育ってきたわけではないということはわかっている。

 むしろ人より何倍も誰かに助けられながら生きてきたかもしれない。


 母が言うように私のような世間知らずの小娘が、異世界から来たクルトと二人で生きていくのは難しいかもしれない。


 それでもやってみたい。

 あの家に居続けたら、私はきっと母が決めた相手と結婚させられる。

 そんなの嫌。


 私は、クルトと一緒にいたい――。




     *




「はぁ~、あったまった~! クルトも入ってくれば? お風呂広くて気持ちいいよ」

「……いや、俺はいい」

「……?」


 置いてあったパジャマに着替えてクルトの元に戻ると、なんだかクルトの様子が変だった。

 私と目を合わせずに、頰を赤らめてそわそわしている。


 ……なに?


 そんなクルトの態度を見ていたら、急に私まで緊張してきた。

 やっぱり、同じ部屋に泊まるのはまずかったかな……。

 クルトは意外と紳士だけど、男の人だもんね。同じベッドで寝ること、意識してるのかなぁ……?


「まだ少し早いし、テレビでもつけようか!」

「あ……っ! 待て!!」


 この気まずい空気を壊すように笑って、私はリモコンを手に取りクルトの隣に座った。


 だけど、


「……!!?」


 テレビ画面からは女性の高い声が響き、服を着ていない男女が映し出された。


「は!? え、え、何これ! わわわ……っ」


 初めて見るそんな映像にすっかり動揺してしまった私は、どこを押したら消えるのかわからなくなり、色んなボタンを押してみるけどなぜかどのチャンネルもそういうのばかりだった。


「……貸せ」

「あ……」


 一向に消せない私からリモコンを奪い、クルトが静かにテレビを消した。

 そうか、普通に電源を押せばよかったのか……。


「…………」

「…………」


 さ・い・あ・く!!!


 何!? こういうとこって、ああいうのが普通に見れちゃうの!?

 初めて見た本物のそういう映像に、私は心の中で絶叫した。

 ああ……っ恥ずかしい!! 穴があったら入りたい!!


「……俺も何か見ようと思ってつけたら……、この世界では他人のああいう行為も覗けるのか?」

「んん……、いや、その……そんなことはないと思うけど! なんでだろうね!!」

「…………」


 私に聞かないでほしい!! まぁ、私しか聞く人がいないのはわかるけど……!!


「もう寝よっか! 今日は出かけたし、色々あって疲れたよね!」


 もうクルトの隣に座っているのも耐えられなくなって、私はすっくと立ち上がるとベッドの端に身体を横にした。


「おやすみ!」


 クルトに背を向けて、それだけ言うともう黙り込む。

 お願い……もう忘れてクルトも寝て……!


 背後から、クルトも静かにベッドに入ってきたのを感じて鼓動が跳ねるけど、私はそのまま微動だにせず胸の前でぎゅっと手を組んだ。


「…………」

「…………」


 クルトがこっちを見ているような視線を感じたけど、特に何も言わずに私の頭に彼の手が乗った。


「……!」

「おやすみ、ユア」

「…………おやすみ」


 優しく二回そこを撫でると、クルトはそれ以上何も言わずに布団に身を入れた。



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