34.クリスマスの予定
「結愛は今年のクリスマスどうするの?」
「え?」
学校の帰り道、いつもの三人でクレープを食べていると、ふと綾乃がそんな言葉を口にした。
「クルト君とどこか出かけるとか?」
「まさか……恋人でもないのに」
クリスマス……。もうそんな時期?
と言ってもクリスマスまでひと月近くあるのに、みんな気が早いなぁ……。
言われて意識すれば街には早くもイルミネーションが飾られていて、あちこちのお店でクリスマスフェアの文字を見た。
「まだそんなこと言ってんの? 一緒に住んでるんだし、その気になればいつでもどうにでもできるのに」
「だから別に、クルトとはそういうんじゃ……」
「えー? あ、もしかして結愛、今時小学生でも言わないような〝この気持ちがなんなのかわからない……!〟とかって言うんじゃないの?」
「あはは、結愛なら言いそ~!」
きゃはははは――!
二人にからかわれて、私の顔は熱を帯びる。
さすがの私だって、もう自覚している。
私は、クルトのことが好きだ。
「私だったらあんなイケメンが家にいたら押し倒してるけど」
「なっ、何言ってるのよ綾乃! だいたい、お兄ちゃんもいるんだし……そんなの無理に決まってるでしょ」
イチゴと生クリームのクレープを頰張りながら、綾乃が言ったとんでもない言葉から視線を逸らして否定する。
「ふーん。じゃあ、琉生君がいなかったらやってるわけ?」
「そうじゃなくて!!」
正直、クルトが私のことをどう思っているのか気になる。
けれどそれを確認する勇気も、自分の気持ちを伝える度胸も今の私にはない。
「よし、それじゃあ今日はクルト君の顔を見に行こう!」
「え!? 今から?」
「うん、クルト君どうせ暇でしょ?」
クルトは私の従兄で、最近まで海外にいたことになっている。
日本に帰ってきたばかりでまだ仕事はしていないと言っているけど、一体いつまでそれが通るだろうか。
……とういうか、本当にいつまでクルトはあのままでいられるのだろうか。
いつか、異世界に帰ってしまうのだろうか……。
もし帰れなかったとしても、いつまでも今のままでいられるはずがないということはわかっている。
「……」
あははと笑いながら私の腕を引っ張る綾乃たちに、その来訪を断るいい理由も浮かばなくて。
仕方なく、私は二人を家へと招き入れたのだった。
*
「……ただいま」
「「おじゃましまーす」」
浮かれ足の綾乃を筆頭に、クルトと犬猫だけがいる家の中へ足を進めた。
お兄ちゃんは仕事に行っているはずだ。
「クルト君〜!」
必要以上に元気のいい綾乃の背中を追ってリビングに顔を出せば、案の定クルトだけがそこにいて、ソファに座ってテレビを見ていた。
「ああ、こんにちは」
「クルト君元気だった? 遊園地のときはごめんね!」
「ちょっと綾乃」
早速クルトの隣に飛んで行く彼女に、もやもやしてしまう私。
「あはは、クルト君見て、結愛がヤキモチ焼いてる」
「「え?」」
綾乃は男の子ともこうして気さくに接することができるから、きっと深い意味なんてないんだと思う。
だけど軽い口調で告げられたその言葉に、クルトと私だけは大きく反応してしまった。
「……いや、まさか」
「クルト君も照れてるの? もう、二人付き合っちゃえばいいのに!」
「……」
「……」
友香も「そうだよ」と同調しているけど、ちらりとクルトの顔を窺えば、彼は気まずそうに苦笑いを浮かべていた。
……そんなに困った顔しなくたっていいじゃん。
「私、着替えてくる」
そんな様子を見ただけでへこんでしまう私は、どんな顔をしたらいいのかもわからずに溜め息ついて階段を上がった。
後編、連載再開しました!また連続投稿していきますのでよろしくお願いいたしますm(*_ _)m




