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とある老人の思い出  作者: ナウ
story
7/15

戦士

トクトクトクトクトクトク…


透明の小さなグラスに注がれる茶色い液体


「どうぞ」


「すまんな」


老人はグラスを手に取ると口に運んだ

カンタブーザの少し甘い味が口の中に広がる


「ほ…」


若い頃に飲んだ味だ、当時と変わっていない

老人は満足し、グラスをテーブルに置いた


「んで、結局盾はどうなった訳」

「いや…とにかく保留だな…」

「まー、確かに大剣に盾は無理だしね」


女の子二人の会話が聞こえてきた

聞く気はなかったが、盾や大剣という言葉に老人はついつい聞き耳を立ててしまう


「しつっこいからねー」

「いや…分かってたけどさ…」


老人はチラリと二人を再び見る

話をしているのは赤髪の女の子と茶髪の女の子

冒険者だろうが、何の職か分からない

いや…剣や盾と言っているのだからもしかしたら戦士かも知れない


老人は二人の会話を聞きながら…とはいえ少し離れているので全部は聞き取れなかったが、酒を飲みながら店の雰囲気やざわつく人の雑談を酔ってきた気分で楽しむ


昔ならばまだ多少は酒に強かったが年を取ると酔いが回るのが早い

とはいえ酒の強さならメンバーの中では下から二番目だったが…




「ぐが……」


酒場のテーブルの上に突っ伏して眠り始めたのはイーガンである

一番酒に強そうだが、実は一番酔っ払うのが早い

次いでディーロが酔っていた

ラペラは平気な顔をしている

実は酒の強さならディーロとそう変わらないが、一応酒は程々に飲んでいる

一番飲む量が多くて一番早くて一番強いのがエーリである

既にディーロの二倍近くの量は飲んでいるが、ケロリとした表情でグラスを傾けている


「いや…エーリ強すぎ…」


ディーロはエーリを見ながら笑い出した


「エルフ界には私より強いエルフはいくらでもいますよ」


エーリの言葉…にディーロは更にケタケタと笑い出した




「………」


老人は遥か昔、仲間達と共に飲んだ時の事を思い出し少し笑んだ

そして二人の女の子達に近づいた


「すまんがの…」


老人に話しかけられ二人は老人を見た


「なーに?、お爺さん」


茶髪の子が少し警戒しながら言う


「いやなに、お嬢ちゃん達は冒険者じゃろう?」


「そうだけど?」


「もしかして戦士なのかね?」


「…えーと、そうだけど…」


茶髪の子に変わって赤髪の子が話しかけてきた


「へー、よく分かったねー」


「いやなに、そうじゃないかと思っただけじゃ」


「そうなんだー」


「そして只の戦士ではないじゃろ?」


「え?、どういう事?」


「相当な腕前をしておると感じた」


「あー、まぁ、ちょっとは強いかなーなんて…」


「ちょっとか…」


そう言うと老人はカラカラと笑った


「しかし時代は変わったの」


「え?」


「お嬢ちゃん達みたいな可愛い子らが戦士とはな」


「あ、いや…可愛いって訳じゃ…」


赤髪の子は照れながら頭を掻く


「私の若い頃は戦士と言えば男の職だったもんじゃ」


「へー」


「それにしても良い気配を感じさせてくれて良かった、来た甲斐があったの」


老人の言葉に茶髪の子が言う


「お爺さんも強いよね?、あとさっきからずっと私達の話聞いてたでしょ?」


「ほ、バレておったか」


「そりゃあね」


「聞くつもりはなかったのじゃが、つい気になってな」


「あー、まぁ…」


二人の話では老人が入ってきたと同時にその鋭い気配が気になって、話しながらも意識を向けていたとの事


「そうか…」


「そうそう」


「ま、何じゃ、これも何かの縁かの

そうじゃ!!、今日は私にここを奢らせてくれんかの」


「え?、いいの?」

「いえ、悪いですけど…」


乗ってきた赤髪の子に茶髪の子が指でつつく


「構わん、私も久しぶりにしたたかに飲みたくなった」


「奢ってもらおー」

「え…まぁ…なら」


「では乾杯じゃ」

「かんぱ~い!!」


三人はグラスを合わせる


そうして老人と二人の女の子は暫く色々と話しながら酒を飲み時間が過ぎていった

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