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とある老人の思い出  作者: ナウ
story
5/15

宿屋

カツカツ、カツカツ、カツカツ


杖をつき街の丁度中心地に程近い場所にやってきた老人

あちこち見て回ったので既に時間は夕方になっていた


「この辺りじゃな」


老人は今夜泊まる宿を探してこの地区まで来た

この辺り一帯は宿場として繁盛していた

しかしそれは老人が若かったかつての話であって今は分からない

ひょっとするともう廃れてしまっている可能性はある


杖を片手に老人は昔の記憶を頼りに宿場エリアに入った


「ほっ」


老人の目の前には確かに宿場が広がっている

しかし繁盛しているかと言われれば微妙だ

確かに道行く人々はいるし、宿の明かりもある

しかし活気はない

それに記憶している頃とは宿屋の数は減っている


「まぁ、そうしたものか」


宿屋は昔は冒険者の多くが利用していた

昔は冒険者をやっていれば幾らでも稼げたから多少高くても皆宿屋を利用した

中には高級宿を利用する者達もいて、より高い宿屋を利用するのがベテラン冒険者としてのステータスでもあった


「寂れたかの」


今はそういう冒険者達はいないと聞く

モンスターを倒せば高額の金が入り、冒険で手に入れた宝も高額で飛ぶように売れた時代とは違い、今はまったく儲からず冒険者達もいる事はいるが殆ど困窮しているという話だ

老人の若い頃とはまったく違う


「さて…」


老人はかつて何度も泊まった宿の前にきた

しかしそこはもう建て替えられて違う店に変わっていた


「そう都合よく残っとりはせんか…」


老人は近くにあった宿屋に宿を取ろうと入口から入る

他にも知っている宿は幾つかあるが今でもあるのかどうか分からないからだ

昼間沢山歩いたので、取りあえず座って一服したい


「どっこいせ」


部屋を案内され入り、椅子に座る

疲れが一気にきた


「昔なら公園から走ってこの辺りまで短時間で来れたもんだが…」


そう言うと老人は自分の足を見る

一体いつ頃から足を悪くしだしたか?

もうかれこれ10年近く前になるか…

突然ガタがきた

医者に見て貰うと、若いときの無理が祟ったらしい


「若い時は無茶をした…」


パンっと足を叩く老人

若い時は無理が出来る

若い頃は後の事など考えない

それが若さの強みである

しかし反面、年がいってから後悔する事もある

いや、後悔だらけだ


「………」


老人は暫く椅子に座りじっと物思いに耽っていたが、喉が渇いたので水差しを持ちコップに水を注ぐ

そして少し飲んだ


昔ならコップに入っている水を一気に飲めたが今では少しずつしか飲めなくなっている

まったく年を取るというのは嫌なモノだ


再び椅子に座ってじってする老人

そのまま時間が過ぎ、夕方から夜になった

街の明かりが部屋の窓越しに入ってくる


「夜の街か…」


この街に来るのももう最後であろう…

老人は杖を片手に夜の街を見に部屋から出た

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