公園の木
綺麗に整えられている街路樹を見ながら暫く歩き、老人は公園の前に到着した
そこは小さい公園ではなくかなり広い面積の公園である
「懐かしいの」
老人は陽光に照らされながら公園の中に入っていく
管理はキチンとされているらしく芝は整えられゴミは落ちていない
しかし人はまばらだ
かつてあった子供用の遊具も全て撤去されていた
あるのは木で出来たベンチぐらいか
「………」
公園の中を走るグネグネ曲がった道を歩き、池まできた
「池は…枯れておるか」
かつては綺麗な水を湛えていた池に水は無かった
噴水も無くなっている
「ふむ…」
老人は溜め息をつくと暫く池の跡を眺めて奥に歩き出す
「………」
公園の形はかつてと変わらない
しかし老人の記憶している風景とは少し違う
「………」
老人はゆっくりと歩く
早足は体に堪えるし、若い時のようにも動けない
ふと老人は足を止めた
そこはグネグネした道と違って少し先まで一直線に奥に続いている道
この道ははっきり覚えている
かつて若かりし頃に奥に向かって駆けた道だ
「………」
あの時の事が昨日のように思い出される
しかし今はもう駆けるのは老体には無理だ
老人は懐かしみながら奥を目指す
そして辿り着いた
「まだあったか…」
老人の目の前には大きな木が遥か頭上まで伸び大地に根を下ろしていた
樹齢何年かは分からないが、少なくとも老人の若い頃からあり今の姿を当時の頃から見せていた
「うひゃ~、デカい」
頭上に聳える葉っぱと枝の屋根にディーロは眩しい日の光を手で遮りながら見上げた
「ほんと大きいねぇ」
ラペラも大木を見上げる
「エイリマの樹ですね、エルフ界には多くありますが、人間界で見るのは初めてです」
「へ~、エルフ界にはたくさんあるんだ~」
「はい、寿命はエルフの如く長いです」
エーリの説明にイーガンが聞く
「長いってどんぐらいだ?」
「記録では一万年生きた子もいるようです」
「うげ、一万年!!」
「はい、この子はまだ若いほうですね」
「へ~、若いんだ」
「恐らく二千年ぐらいでしょうか」
「それでも二千年かぁ…」
そう言うとラペラは手を木に付けた
「私達が生まれるずっと前に生まれて、私達が年いってもずっとあるんだね~」
「ぷぷ、婆さんラペラ」
「何か言った?、イーガン?」
「いや、別に」
ラペラに睨まれ反対方向に顔を向けるイーガン
「僕たちが年いったらか~」
ディーロはラペラ達を見て言った
「年いってもまた皆で来ようよ」
「あほ、その前に魔王退治で死ぬかもしれないっつーの」
「うん、誰も死なずに魔王を倒してさ」
「かー、簡単に言ってくれるぜ」
イーガンは頭を掻く
「そうね、魔王を倒して平和が戻って…皆が幸せに暮らして…お爺さんお婆さんになっても…また皆で来てバカな話出来たらいいね」
ラペラはそう言って微笑む
「年いったらって、その中にまだ若いのが一人いるんだけどな」
「大丈夫です、皆の介護は任せて下さい」
エーリの言葉に皆吹き出した
「………」
木の前に座って当時を思い出していた老人は目を開ける
木は当時と同じまま、老人を見下ろしていた