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とある老人の思い出  作者: ナウ
story
2/15

街の光景

60年も経てば変わる

その言葉は街の景観には余り当てはまらなかった

確かに壊されて無くなっている家や建て替えられた家もあるが、街路も細い通路も変わる事なくここにある

変わったのは建物や街路ではなく人々だ


コツコツ、コツコツ、コツコツ…


杖をつき音を立てながら老人は街路を歩く

街には活気はない

人々の往来は確かにあるし、馬車も一応は走っている

しかしそれは老人が記憶しているこの街の光景ではない


この街の『かつて』は多くの馬車が路上を走り回り、建物内の店も扉を両方とも開けて、その売っている商品が外まで飾られ道行く人々の目を楽しませた

音楽を奏でる演奏家や旅の吟遊詩人、一角を借りて大道芸を見せる芸人達

多くの人間達が所狭しと路地を歩き、溢れるような人混みを作っていた




「うっひゃ~、凄い人だ~」


ディーロはごった返す人混みに流されそうになる

はぐれそうになるディーロの手をラペラは取った


「迷子になんないでよ、まったく!」


引っ張られ、比較的人の少ない場所まで行く


「いや~、凄い人だな」


「休日だからね、いつも休日はこんなものよ」


ラペラは腰に手あて言う


「ま~た迷子になりかかったか、ディーロ」


「うるさいな~イーガン、いつもって何だよ」


「いつも迷子になってんだろ」


「いや、いつもじゃない!!」


「いっつもじゃない」


ラペラが呆れ顔で言う


「それは…うわ!!」


ドンッと人がぶつかってきた

ぶつかってきた人は謝って行ったが、こんな所で立ち止まっている自分達が悪い


「さぁ、冒険者の店にさっさと行くぞ」


「そうね、行くわよディーロ、また迷子になんないでよ」


「うるさいな~子供じゃあるまいし」


「子供みたいなもんよ!!」


そんなディーロとラペラのやり取りをエーリは苦笑しながら見ていた


冒険者の店、文字通り冒険者が出入りする店だ

狩ったモンスターの首を持っていけば報酬金が出る他、武器や防具や道具類の販売・斡旋も行ってくれる

店は一つだけではなく多数あり、国営の店もあれば私営の店もある

中には金を貸して破産させ売り飛ばしたりする闇の店もあり、『店選びは慎重に』が冒険者の中では常識となっている


今回のディーロ達の戦果はコボルト五匹の首だ

それだけでもかなりの金額の金が入ってきて儲かる

これからその首を店に持って行って換金するのだ


「今日は食べるぞー」


ディーロは腕を上げる


「アンタいっつもめちゃくちゃ食べてるでしょうが!!」


ラペラに怒られた




コツコツ、コツコツ、コツコツ…


閑散とした街路を歩きながら老人はピタリと足を止める

もうぶつかってくるほど人は多くないし迷子になる心配もない


「ふぉふぉ…」


老人はかつてあった賑やかな光景を思い浮かべると目を細め口元を緩ませた

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