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とある老人の思い出  作者: ナウ
story
1/15

冒険者亭

人生とは何かと問われれば何と答えようか?

私は言う

人生とは流れていくだけの無意味なモノだと



「どっこらしょ…」


古びたローブを着た老人は杖を片手に街の一角にある定食屋の椅子に座った

ローブはヨレヨレで一部穴が空いており、ツキハギも所々見えた

髪はボサボサで肩まで伸ばしている

そして殆ど白髪だ

靴も見ればかなり痛んでいる


「ご注文は?」


店の給仕係の若い娘が老人の座る席に行き注文を取りに来た


「あー、何があるのかね?」


「え…と、こちらがメニュー表です」


給仕娘はテーブルの隅に置いてあるメニュー表を取り、老人の前に広げた


「おお、すまないね」


老人は目を細めにこやかに笑う

そしてメニュー表を見た

見た事もないカタカナメニューが並んでいる

文字だけでは何が何やら解らない


「………」


老人はどうしたモノかと悩んだが、適当に注文してみた

給仕娘は注文を受け厨房の方に引っ込む


「………」


老人はもう一度メニュー表を見た

全体的に昔に比べて実に値段が高くなっている

そして知っているメニューが一つもない


「うむ…」


老人は昔この店に来た事がある

もう随分と昔の事だ

何年ぐらい前の事か?

それは老人がまだ16歳の頃の事である



「いただきます!!」


山盛りに盛られた山盛り定食を前に勇者ディーロは手を合わせた


「凄いなお前、まだ食うのか…」


山盛り定食をおかわりしたのを仲間の戦士イーガンに呆れられる


「ディーロは大食漢だから」


女魔術師のラペラが言う


「まったく、本当に凄いです」


女エルフで狩人のエーリが感心した


ここは冒険者を主に客とする大衆食堂だ

店名は『冒険者亭』

冒険者の食べる量に合わせているため、通常の量ですらその量は多い

しかも金のない冒険者に合わせての格安値段だ


「しっかり食べとくれ」


でっぷり太った店の女将さんがにこやかに言う


「はーい」


ディーロはそう言いながら山盛り定食を食べ始めた


時代は剣が支配する大王国時代

魔王が復活し、配下のモンスターが出現した

冒険者達は魔王を倒すべく旅に出る

今は若者達の中では冒険者になり魔王退治の戦いに参加する事が流行していた

しかも熱狂的な流行


ディーロ達もまた冒険者としてモンスターと戦い力を付けていた

人間世界を滅ぼそうとする魔王を倒すために



「お待ちどうさま」


給仕の声に老人は目を開けた


「………」


運んでこられたのは中皿の中にちょっと乗った食べ物

そしてちょっとしたパン

そして同じく運んでこられた少ない量のスープ


「………」


「ごゆっくり」という給仕の声ににこやかな顔で応じた老人はパンを手に持ち千切って口に運ぶ

時代は変わる…あれから60年も経てば全てが変わろう

老人はパンを片手にかつて活気のあった店を思い出し懐かしんだ

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