3話 怪異との出会い
ピーン!
頭の中で、そんな音が鳴った気がした。私はすぐさま、視界に何か移っていないかを確認した。
ステータスバーが映し出されていないか。レベルアップのテロップが映し出されてはいないか。でもなかった。私は膝から崩れ落ちた。希望がないのだ。そろそろ馬車に乗った商人でも通りかかっていいころじゃないのか?
神かそれに近しい存在が私の頭の中に語り掛けてくる頃じゃないのか?
待っていても仕方がない。とにかくこの小道沿いにでも進んでいこうか。
そろそろ疲れてきた。。いつも持ち運んでいる万歩計を今日はたまたま忘れたから、何歩歩いたのかもわからない。ただ景色は何となく変わってきている気がした。私は10mほど先にある草むらに目をやった。これが私の運命を大きく変えたのだ。
ピーン!
さっきと同じ音だ。それもさっきに比べて大きい。
私は恐る恐る草むらの中をのぞいた。
時計だ。それも少しさびていて、なかなか古いものに見える。もし万が一元の世界(?)に戻ることができたなら、なんでも鑑定団に応募してみよう。そう思った矢先、その時計の針は加速した。時計の針が進むと同時に、太陽のようなものは沈んでしまい、あたりは暗くなった。
「壊せ」
それは確かに時計から聞こえた。それと同時に、私は確信した。これこそが私の異世界ライフを救ってくれるであろうスイッチなのだと。
私はためらうことなくその時計を踏んずけてやった。時計のガラスの部分が割れた音が聞こえると同時に、目の前には黒いもやもやが現れた。
「ほう。こんな小娘のガキが」「あのね、私はあなたを封印らしきものから解放してあげたの。あなたが誰かは存じ上げないけど、助けてもらった相手にその口の利き方はないんじゃないの?」
「まぁそう怒るな。肌とやらが荒れるぞ(笑)」「失礼な人ね。育ちの環境が良くなかったの?」
「おっと、勘違いされては困るな。私は人間ではない。怪異だ。」