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体操着やユニホームに着替えた子供達が、道具倉庫入れの扉の鍵を開け、中に入ってきた。子供達は、サッカーボールが入った大きなカゴ、カラーコーン、ハルやソウが入っている、野球のボールのカゴなどを、校庭に運び出し始めた。
ハルは、校庭に運ばれながら、今日が過ぎれば、怖い思いをしなくて済むという思いと、寂しいという思いがあったが、いざ、部活が始まると、いつもの様に叫び声を出していた。
最初のうちは、他の道具達から、文句を言われたが、最近はそういう事もなくなった。ハルの叫び声に慣れてくれたみたいだ。それにハルを応援してくれる道具もいる。いつもは怖くてお礼を言えなかったが、今日は違う。勇気を出して、いつも応援してくれる、サッカーボールのレンにお礼を言った。ハルは投げられながら喋っているため、言葉が途切れ途切れになってしまった。ハルがお礼を言えた事に安堵していると、レンがハルに声をかけてきた。レンは大きなカゴの下の方にいるから、まだ出番は無い。
「今日はどうしたんだい? 苦手な事を克服するには、それなりの覚悟が必要だけど……、怖くなくなったのかい?」
それを聞いたハルは、ソウから提案された話をそのまま話した。
「そうなのか……。でも、僕達ボールには、何も出来ないから、すべて天に任せた方がいいよ。それにもしかしたら、キミの友達も同じカゴに入ってくるかもしれないし……。それにしても寂しいね……。キミの叫び声はこの校庭の、風物詩だから……」
レンはなんだか寂しそうだが、今まで、部活の時間に、叫び声ばかり出していたハルにとっては驚きだ。ハルはレンに言われた「天に任せる」と、いう事の意味が分からず黙っているとレンが「大丈夫、なるようになるから」と言った後に、天に任せるコツを教えてくれた。そのコツとは「忘れる事」らしい。ハルはまたしても意味が分からず黙ってしまったが、ハルの叫び声を聞いて、一度も文句を言わなかったレンが、変な事を言うわけがないと思ったハルは、きちんとお礼を言った。
「いいんだよ。同じボールじゃないが、仲間だから。それと、バッティングのボールには、バッティングのボールの辛さがあるだろうが、がんばるんだよ」
レンがそう言った後、出番が来たようで、カゴから出されて行った。
ハルはそれから、レンに言われた事を考えていたら、初めて叫び声を出さずにいる事ができた。
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