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仮設風向計/詩集その3

虹の出るとき

作者: 浅黄 悠
掲載日:2020/07/14

天気予報が外れた日に

彼等は泣きながら歌っていた

あまりにも楽しくて

芝生の香りに酔いしれた


優しさは溶け込んでしまうから

自由は息が止まるから

忘れてしまう

そんなさびしさが勝利の証




後の歴史に残された日は

鳶が太陽の周りをまわっていた

誰もいない砂浜へ犬が出ていくから

彼は退屈を晴らそうと口笛を鳴らす


金星が重なる

花火が降ってくる

君や僕の名前を呼んでいる人が

確かにいる




君が風を掴んだ日

それ以外に何があろう

でも僕はいつも通り紙袋抱えて

いつもの橋を渡り


君は両手を開いて

突然降ってきた恩恵に驚きながら

瞼をそっと閉じ

明日がどこから来るのか考えはじめる




これまでにたくさんの影が去った

立ち上がれなくなった人達が

お互いに傷つけあうことをはじめた

自分の言葉が届いて欲しい人ほど

全く振り向きもしてくれないこと

誰もが知っていた

だからみんな時計の針を止めた

大切な人の写真をしまい込み

書きかけた物語を投げ出し

馴染んだ楽器をどこかへ返して

プラスチックのように生きた


だから今日は深く息を吸いこんで

君とどこかへ行くことを約束して

楽しみにしながら夢の底へ行く




みんな知っているはずなのに

誰も知らない

誰も知らない

知りたかった僕は

あの場所で最後に咲いた花を見に行った




今日も丘の斜面で

転がって遊びふざける子供を眺める


兵士が瓦礫の中で

よく晴れ渡った青空を仰ぐ


海の向こうで

静寂のうちに虹がかかる


たくさんの涙が洗い出す

この世のありとあらゆる希望

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