7話 ついていったら、凄いのがいた?
ルカは冒険者について行く事にした
アーロンとリリアの後についていったルカは、いつもの西の森へ来ていた。
(なんだいつもと同じ場所~)
とがっかりしていたのだが、彼等はすぐに森の奥へ奥へと進んでいく。
いつもは森の入口で充分狩りが出来ていたのと、奥の方に危ない気配を感じていたので無理に入ろうとは思っていなかったのだ。
それが冒険者と言われる強いニンゲンが一緒ならば、いつもとは違う獲物が取れるかも知れない。
(美味しいお肉が出てくるといいな~。 柔らかくて、美味しいお肉~~)
最近は色々と人間の知識が付いてきたので、より美味しいものがあると知ってしまったのだ。
中でも、オークとかいう魔物のお肉はジューシーで美味しいらしい。
ただ、ゴブリンよりも力が強く、普通のニンゲンだとぺしゃんこにされてしまうとか言っていたので、流石にルカだけで探しに行くのは危険だと思っていたのだ。
(うまく何匹か出てくれれば、オーク肉に辿り着けるかもしれないね!)
と意気揚々とついて行くのだった。
そう、彼らがホブゴブリンの話をしていたのをすっかり忘れていたのだった。
しばらく森の中を進んでいくと、あの猿みたいな魔物が数体現れた。
4人の冒険者達は、すぐに戦闘を初めて難なく倒したようだ。
(あのゴブリンとかいうのは、美味しくないからパ~ス。 オーク…オーク…)
もう、頭の中がオーク肉でいっぱいだった時だった。
一体の巨大な魔物が現れたのだ。
(あれは…何?)
「こいつホブだ!本当にいやがったぞ!」
「こいつが居るって事は、近くに集落があるはずよ!戻られたら仲間を呼ばれるわ!ここで仕留めるわよ!」
冒険者達がざわめく中、ルカの頭の中に警鐘が鳴り響いた。
【キケンキケンキケン…】
(わわわ、これは、あの大きいのは危ないってこと?)
ぶわっと全身の毛が逆立つルカ。
本能でも、戦ってはいけないと言っているようだ。
どちらにしろ、とても美味しそうに見えないし、ルカの獲物リストからは除外するのだった。
冒険者達が魔法や武器で仕留めるのをジッと観察していたルカは、ひたすら息を殺して見ていた。
そのせいだったのか、一つのスキルを身に着けた。
【条件を満たしました。スキル”潜伏”を習得しました】
(また何か覚えたみたいだけど、何の事かわからない…ま、いっか)
ただ、言葉の意味が分からず効果が理解出来なかったが…。
しかし、効果は勝手に発揮するのでルカは図らずも魔物や好戦的な動物から見つからなくなるのだった。
そのおかげで、より安全に移動することが出来るようになったのだった。
ホブゴブリンを倒したアーロン達は、その先にあるであろうゴブリンの集落の探索を開始する。
いくら歴戦の冒険者でも、ホブゴブリンの集団となると分が悪い。
かなり慎重に足を進める事30分。
ついに問題の集落を突き止めた。
「こりゃあ、思った以上に規模が大きいぞ」
「しかも、あれを見ろアーロン。あれはオーガだ」
「なっ!?なんでオーガとゴブリンが一緒にいるんだよっ!?」
「「しーーっ」」
仲間の戦士と魔法使いが慌ててアーロンの口を塞ぐ。
リリアもアーロンを肘で小突いた。
「う…、すまん興奮してつい…」
「しかし、この数でオーガまでいるんじゃ、とてもじゃないが4人じゃ勝ち目がないね」
「そうだね…、しかもゴブリンにマジックキャスターいる」
リリアの言葉に付け足す形で魔法使いが更に悪い知らせを告げた。
「元々偵察だったし…、撤退だな」
「「「異議なし」」」
こうして、冒険者4人組は町に戻るためそれ以上の戦闘を避けて静かに立ち去るのだった。
(あれ、帰っちゃった。でも、ここに美味しそうなやつはいなしな~)
ルカも自分の狙った獲物がいないのも分かり、そのまま踵を返して町に戻ろうとした。
森の中腹くらいだっただろうか、ルカの頭にまたあの声が響き渡る。
【キケンキケンキケン…】
(また!?いきなりなになに!?…近くに、何かいる?)
そこに居たのは、大きな豚の顔をした魔物だった。
そう、狙っていたオークだ。
(あの顔は、ギルドの張り紙でも見たよね。 あれがオーク?)
ルカはまだこちらに気が付いていないオークをジッと観察していた。
どうやら、自分より強い気配がする。
それは単なる野生の勘ではあったが、ただ警鐘のようにずっと聞こえ続ける声が聞こえている時は大抵が自分よりも強い相手の時だからだ。
だがルカは、逃げる事をせずじっと様子を伺っていた。
それはなぜか…?
それは…。
(美味しいお肉が目の前にいるのに、逃げるなんて無理な話だよねっ!!)
単なる食欲だった。
オークが目の前を通り過ぎる。
そして、背中を見せた瞬間だった。
(ここだっ!)
前足に力を込めて、渾身の一撃をオークの首にお見舞いする。
しかし、分厚いその首に浅くはないが、切り裂くには足りなかった。
ブギイイイイイイ!!?
それならばと、そのまま喉元に食らいつき顎にあらん限りの力を込めた。
オークは悲鳴を上げつつ、ルカを両手で掴もうとするが捉えきれずにもがき続ける。
スキルにより強化されたルカの牙がついに奥深くまで突き刺さり、オークは吐血してその場に倒れそのまま絶命した。
【ルカは、経験値を獲得しレベルが7になりました。更に、スキル"跳躍強化"を覚えました。】
【ルカは、経験値を獲得しレベルが8になりました。更に、スキル"筋力強化"を覚えました。】
【ルカは、経験値を獲得しレベルが9になりました。更に、スキル"耐久強化"を覚えました。】
【ルカは、経験値を獲得しレベルが10になりました。更に、スキル"魔力強化"を覚えました。】
一気にレベルがあがり、レベルアップの声が沢山聞こえてきたがルカはそれどころではなかった。
ドオオンと音を立てて地面に倒れ込む瞬間、ルカはひらりと宙を舞い見事に着地する。
さすが猫、身軽なものである。
(危なかった~、一発でも殴られてたらこっちがやられてたかも)
弛んだ顔やお腹とは対照的に、筋肉の塊のような腕と脚をみて戦々恐々とするルカ。
後先考えずに飛び込んだ自覚はあったため、今更に恐怖を感じるのだった。
だがそれも一瞬だった。
(ふっふふ~ん、おっにくおっにく~)
人間だったら、間違いなく鼻歌を歌っていたであろう。
それほどの上機嫌で、オークの解体を始めるのだった。
もはや凶器以外何物でもないその爪で、サクサクと肉を切り出し内臓以外の柔らかい部分を取り分けていく。
お肉屋に売られていたら、『リブ』とか『ロース』とかの部分だ。
一口味見をするが、なんとも言えない芳醇な味が口に広がり幸せいっぱいのルカ。
だが、ここはまだ森の中だという事を思い出し、一番美味しそうな部分だけ咥えて帰る事にしたのだった。
今回は生肉の状態なので、途中で丈夫そうな大きな葉っぱを取り、器用にそれで包んでから運ぶことにした。
そうしないとアーニャがまた青い顔をして、逃げてしまいそうだったからだ。
酒場の裏に行くと、丁度女将さんが出てくる。
ルカを探してというわけではなく、空いた酒樽を運んでいた様だ。
「あら、ルカじゃないか。・・・あんたまたなんか持ってきたんだね?どれ、見せてごらん」
と言って手を出したので、口に咥えた大きな肉を渡す。
受け取った女将さんは、その重さに少々びっくりしていたが、それよりも中身に驚いた。
「もしかして、オーク肉?しかも、かなり上等な奴じゃないかっ!あんた何処で拾って…いや、なんでもいいよでかしたよルカ!少し待ってな」
というと、肉を店の中に持っていった。
その間、ルカは毛づくろいしながら待っていた。
ルカは人の言葉が分かるから、女将さんが持ち逃げしたわけじゃないとちゃんと分かっていた。
どちらかというと、今から出てくるであろう更に美味しくなった肉を待っているのだ。
数分で中から肉の焼いたいい匂いが漂う。
生の肉も十分美味しいのだが、ルカにとっては焼いて味付けされた肉の方がより好みであったのだ。
それからしばらくして、女将さんが木の皿に焼いたばかりの上等なオーク肉を持ってきた。
それを樽の上に置いて、『さあ、お食べよ。熱いから気を付けるんだよ?』とルカに言うのだった。
にゃ~ん。
と鳴きながら、すぐに肉にかぶり付こうとして。
ニギャアアアッ!!
舌を火傷するルカなのであった。
「だから、言ったろうに。あっはっはっは」
その日の夜は、美味しいオーク肉を食べれて幸せなルカなのであった。
気ままに更新継続中。
面白いと思った方は是非ブックマークをお願いします!
あとは、広告の下の評価ボタンも宜しくお願いします~!
~~~~~~~~~~~~
今回のオークは、実は単なるオークではなくオークソルジャーでした。
ゴブリンの集落を見つけて襲撃しようとしたところに、返り討ちに遭い武器をなくして逃げている所にルカに出会ってしまった運の無いオークさんです。
本来ならルカに負けないのですが、武器もなく弱っていた所に強襲されたための結末という事です。
~~~~~~~~~~~~
ルカ:L10
種族:霊猫 職業:野良猫
ステータス:
力:50(+30) 魔力:30(+30)
体力:30(+30) 精神:30
速度:100(+30) 技量:60
運:20
所持スキル:
【危険察知】【高位成長促進】【言語理解】【知識強化】
【急所狙い】【爪強化】【牙強化】【大喰い】【潜伏】
【跳躍強化】【筋力強化】【耐久強化】【魔力強化】




