5話 冒険者の話を(盗み)聞いてみよう?
いつもの通り狩りをしていたルカ。
今日も獲物を追いかけて…。
ここ数日の狩りはとても順調だった。
ウサギの良く出るポイントも分かって来たし、危ない魔物とかが居そうな場所も分かる様になったので効率よく狩りをすることが出来ている。
この間一緒に狩りに行った(ルかが勝手について行っただけだが)狩人たちも、狙い通りに成果を上げているらしく、毎日ほくほく顔で狩りをしていた。
「ここ暫く、外れの日が無いなぁ」
「ああ、以前よりもやたら獲物がいるからな。たまに逸れゴブリンやオークが出てくるのが気になるが、冒険者ギルドには伝えてあるし、そのうち冒険者が調査に来るだろうさ」
「それまでは魔物に襲われないようにして、獲物をばんばん取っていこうぜ」
毎日二人の狩人は、野ウサギや野ガモなどの仕留めた獲物や、採取した山菜や木の実などで籠がいっぱいになるまでそこで狩りをしていた。
そんな様子をじっと見ている者がいた。
日々色んな人の会話を聞いているおかげで、どんどん言葉を覚えるルカ。
最近は、少しづつ張り紙に書いてある言葉も理解出来るようになっていた。
(冒険者って、魔物を倒す職業だと前に話をしているヒトがいた。この間の嫌な感じとかするのが魔物なのかな? うーん、街で探して話を聞いてみよう!)
ルカはいつも通り、二人の狩人には見つからないように獲物を捕まえつつ二人の話に聞き耳を立てていた。
結構おしゃべりなので、色々な事が聞けて都合が良かった。
「おいっ、あれ!」
「うわ、あれは大猪か。今日は仕掛けを持ってきていないから、仕留めるのは難しいな」
全長2mほどになるとても大きな猪が近くにいたようだ。
通常の猪でもかなり危険なのだが、このサイズになると下手に刺激するのは自殺行為だ。
なので、通常は罠を仕掛けて動けなくしてから仕留めるのが基本だ。
下手に矢でも射ようものなら、逆に襲ってくる。
普通の人間ならそのまま轢かれて即死というわけだ。
(ん、あの獲物は猪ってやつ? この間の熊よりは小さいけど、そこそこ強そう…)
ルカは狩人の二人が見つからないようにそーっと逃げていくのを見送ったあと、気配を消しながら大猪に近づいていく。
見つかって襲われれば、いくら身軽なルカでもひとたまりも無い。
と、本人はそう思っている。
幸いにして、大猪は木の根を漁っているようでルカに全く気が付いていなかった。
その為、完全な無防備状態だ。
(ココだ!)
ルカは真後ろまで近づいた後に、ザアッっと飛び出し爪に力を込めてその首を狙った。
ドスンッと重たい音を立てて大猪が倒れる。
その場には胴と首が分かれた大猪が転がるのだった。
【ルカは、経験値を獲得しレベルが6になりました。】
久々に頭に聞こえたあの声。
そう言えば、どこかで聞いたことがあるような気がする…。
ここ数日、街の中で人の話を聞いていて分かったが、どうやらこの経験値というのは自分より強い物を倒すと手に入りやすいらしい。
これが沢山貯まるとレベルというのが上がるらしいのだ。
そして、レベルが上がると強くなる。
と、『冒険者になるんだ俺!』と言っていた少年が、一緒にいた少女に話していたのを聞いたのだ。
(ということは、この『レベル』というのが上がれば、美味しいものが沢山食べれるっていう事だよねっ!?)
と、まだ見ぬ美味しい食べ物を想像し、だらしない顔をしながら涎を流すルカであったが、目の前の大猪の事を思い出し早速解体を始めた。
最近かなり力が上がって来たので、引き摺って持っていく事が出来るのだが、そんな事をすると他の動物に襲われかねないので止めておいている。
ルカはまだ知らないが、もしそんな事をしたら魔物と勘違いされて冒険者に襲われる羽目になっていたのだが、知らずにそんな事態になる事を回避出来ていたのは幸運であっただろう。
たらふく食べた後、いつも通りウサギを一匹だけ捕まえたルカは空が明るいうちに帰る事にした。
理由は、さっき狩人が話をしていた冒険者を探すためだ。
『経験値』や『レベル』についてはなんとなくわかったが、時々聞こえる『スキル』というのがなんなのかを調べるためだ。
当然、ルカは本を読むことが出来ないので図書館で本を読む事は出来ない。
まぁ、図書館自体知らないのだけども。
ちなみに、文字自体はある程度読めるまでに成長した。
と、言っても店の看板の文字を覚えたとか、張り紙を呼んでいる人の聞いて覚えたとかそういうレベルではあるが。
ルカはいつも通り、酒場の裏に獲物をコッソリ置いてから町の広場に向かった。
冒険者がどこにいるのか分からないが、人が多い場所に行けばそのうち見つかるだろうと思ったのだ。
(どんなのが冒険者なんだろう~?あの狩人達が魔物を倒すとか言っていたから、強そうなヒトだとは思うけど…)
キョロキョロしながら、人を探す仕草は好きな人から見れば堪らない仕草に見えたかもしれない。
「あっー!あの時の猫ちゃん?無事だったんだね~」
そんなルカを発見して、近づいてくる人間がいた。
単なる猫なら、すぐさま逃げていただろうが、ルカは人間に慣れていたので逆にその女性にすり寄っていった。
まだ、ルカは生まれて数か月の子猫なので、周りからみたら甘える子猫にしか見えないだろう。
実際は大熊を倒せるあり得ない猫に育っていたのだが…。
「おまえっ!また猫かよ~。遊んでる暇があったら依頼を見に行くぞ」
ルカを撫でている白いローブを着た女性見るなり、男が嫌そうな声で女性を呼んでいる。
大体こういう声を出す人は、ルカに優しくないと学習しているので変な事をされない内に白ローブの女性から離れた。
「ああっ、もう逃げちゃったじゃない!どうして貴方はいつもそうガサツなのかしら!」
「あんだとうっ!これから仕事しに行くっていうのに遊んでるおまえが悪いんだろう!ギルドマスターに呼ばれているんだ。さっさと冒険者ギルドへ行くぞ」
「はいはい。分かりましたよぅ…。あ、猫ちゃんまたね~!ばいばい~」
優しい笑顔でこちらに手を振りながら去っていく白ローブの女性を見送りつつ、ルカは男の方が言ってた事を思い出す。
(冒険者ギルドに行くと言っていたよね…。じゃあ、ついて行くと何か分かるかも!)
ルカは二人にバレないように、こっそりとついて行く事にした。
まぁ、実際は餌が欲しくてついて来ているんだろうなと思って、気にされていなかっただけなのだが。
そういうわけで、冒険者ギルドに来たルカ。
酒場も兼ねているらしく、オカミサンのお店にいるお客よりもガラが悪い人間が酒を片手に話込んでいる姿が見受けられた。
それとは反対側にさっきの白ローブの女性が男と一緒に向かっていく。
そこには一杯紙が貼ってあって、みんなそれをじっくりと見てあれやこれやと話をしていた。
「アーロン、いいのありそう?」
「リリア、ちょっとこれ見てみろ。これ近くの森だぞ」
さっきの男がアーロンで、白ローブがリリアというらしい。
ルカに変な木の実をくれたのはリリアの方だ。
「あら、ホブゴブリンを見掛けた人がいるの?」
「そうみたいだ。ゴブリン程度ならそこまで脅威ではないけど、居る場所が街に近すぎるな。放っておいて人でも攫われたら厄介だ」
「そうね、ゴブリンは色々とね…。受けるの?二人じゃさすがにキツイわよ?」
(ホブゴブリン?初めて聞くなぁ。あの緑の猿みたいなのがゴブリンって前に狩人の二人が言ってから、それの仲間みたいなものかな?)
ルカはどんなのか想像が出来なかったが、似たようなヤツなんだろうと勝手に想像していた。
狩人より強いと言っていた冒険者が危ないというのだから、なるべく避けたいとも思ったが。
「まずは巣の調査を受けよう。戦士と魔法使いを雇いたいところだな」
「そうねギルドのカウンターで相談しましょう」
ルカは、二人が去った後の紙を眺めて、そこに描かれた姿を見た。
(うわー、なんかやたらデカい気がするよ…)
ゴブリンの姿も一緒に描いてあるので比較しても分かりたくなくてもその恐ろしさが伝わってくるのであった。
(うう…見たら、絶対逃げよう!)
そう心に決めて、奥に行った二人のあとを静かに追いかけるルカであった。
気ままに更新継続中。
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ルカ:L6
種族:猫(?)
ステータス:不明
所持スキル:
【XけXさっX】【XX成長XX】【知識強化】
【急所狙い】【爪強化】【牙強化】【大喰い】