3話 熊は美味しいかな?
ルカが人間の言葉が覚えれる様になってから、ひと月が経った。
言葉を覚えるスピードは、人間の子供を遥かに凌ぐ勢いで、よくパンクしないものだと自身で感心する。
なんだか考え方も少し人間に近くなっている気がするが、もうそこは気にしないようにした。
言葉を覚えると、人間が集まるところに行くだけで狩りに役立ちそうな事を知る事が出来る。
その事が分かってからは、毎日この街の中央広場というところに行く事にした。
どうやら自分が猫という種族でも、珍しい種類らしく。
自分のように青い毛並み(といっても灰色っぽい青だが)の猫は珍しいらしい。
とご飯を分けてくれる老夫婦が話していた。
瞳も青いので、より珍しいのよと話しかけてくる。
どうやら人間たちは、猫に話は通じないと分かっているのに話しかける癖があるようだ。
ルカの場合は、通じているのだがそんな事を知っている人間はだれもいない。
「おいおい、聞いたか?最近西の森で魔物に襲われた奴がいるってよ」
「まじかよ、最近あそこの森は平和だったのになぁ。今度から狩場を変えないといけないな」
街の人の話では、ああいう恰好をしているのは"ハンター"というらしく、食べ物を集めたり、肉になる獲物を狩ったりして生計を立てる人間のようだ。
魔物というのは、普通の動物よりも狂暴な生き物らしく、”魔力"というものを持った動物を言うらしい。
そう言うのを仕留めて生活するのは、"冒険者"という人間らしい。
その人間達は"ハンター"と違って、スキルや魔法というのを使えるらしく、その分ハンターよりも強いのだそうだ。
この街にも数人いるらしいが、詳しくは分からなかった。
話を戻すが、さっきのハンター達の話を盗み聞きしたところ、西の森に棲みついた魔物のせいで動物達が平野にあふれ出してきているようだ。
その分狩りがしやすくなっているので、さっきのハンター達もそれを狙って結局西の森に行くようだった。
(最近、ネズミの肉ばかりだしにゃ~。ウサギの肉とか食べてみたいなぁ)
ルカは、生まれてから食べたことが無い肉の味を思い浮かべ涎が溢れ出そうになる。
そうなったらもう、本能の赴くままに西の森へ向かうだけであった。
こっそりと、ハンターたちの後をつけていった。
天性の隠密性で(猫だから)見つからずに森の前までやって来たルカ。
ハンターたちは森の様子を確認しつつ、森の外に出てきた獲物を狙うようだった。
ルカはというと、もう頭にはウサギの肉の事しかなく若干目が血走っている。
もはや待ってられないという様子だ。
(にく~~~~~~~~~~~~~!)
ついには、魔物を事を忘れて森の中に入っていってしまうのだった。
森の中はかなり静かだった。
ルカは森の中に入るのは初めてになるが、それでも虫の鳴き声も聞こえてこないのは異常だと感じた。
(あれ、ちょっとヤバイかも?)
なんとなく身の危険を感じるルカ。
本能から来るその感覚は、外れてくれる事は無かった。
グオオオオオオオオオオオオオォォ!!
なんと、いきなり藪の中から魔物…ではなく大熊が現れた。
ルカからすれば充分に危険な状態であることには変わりないが。
だがしかし。
(わわわわっ!これが熊ってやつ? 毛深くて毛皮を剥ぐのが大変そうだぁ)
なぜか目の前の熊を食べることしか考えていなかった。
ルカが少し集中し、自分の右前足に力を籠める。
そうすると、爪がとても硬く鋭くなることが分かったのだ。
ルカはまだ認識していなかったが、それがレベルアップで得たスキル『剛爪』の効果だとは知らずに使っていたのだった。
グオオオオオオォォッ!グオオオオオオォォッ!
と咆哮のような唸り声をあげながら大熊は左右の腕を振りかぶり爪で切り付けてくる。
掠った木の幹が爪の形に抉り取られるのを見ても、その威力が凶悪だと語っていた。
だがしかし、今のルカにはそれを脅威に感じないでいた。
それどころか、その攻撃が遅いとすら感じる。
(そんなの余裕で躱せるよ! じゃ、次はこっちの番!)
ナーーーーーーーーーーーウゥッ!!と低い鳴き声をあげつつ、ルカは大熊に飛び掛かると、その小さな右手を振りかぶった。
そのまま大熊が認識出来ない速さで振り下ろした。
ズシャアアアアアアアアアアアア、ズドオオウン!!
と、首から噴水のような血を噴出させて大熊がその場に前のめりに倒れた。
その横には、ルカに切りおとされた頭が転がっている。
(うんうん、狩り成功~。予定のウサギとは違うけど、さっそく味見~)
さっそく食べやすい様に、各部位を爪を使って切り落としていく。
もしこの光景を誰かが見ていたら、小さな子猫が腕を振り下ろすたびにバラバラになっていく熊を見て逆に恐怖に陥ったかもしれない。
それくらい違和感のある光景であった。
さて、そんなことは気にしていない、というか分かっていないルカはゴキゲンなまま解体作業を終えた。
本当はこれを持ち帰れればしばらく肉に困らないかもしれないのだけど、こんな量を持っていく術がないので早々に諦める。
自分もおこぼれに与かった事もあるので、森に住む動物にあげるのがいいかと思う様にした。
(そうなると、ここでたらふく食べていくしかない!)
比較的柔らかい部位や栄養価の高い部分を満足いくまで食べたルカは、またもあの声を聞いたのを思い出した。
【ルカは、経験値を獲得しレベルが5になりました。更に、スキル"牙強化"と"大喰い"を覚えました。】
(いま誰かなんか言ってた?あ、今スキルって言ってたよね。という事は”ボウケンシャ”とかいうニンゲンなら何か知っているかも)
取り敢えずその事は忘れて、お腹いっぱいに食べたので帰る事にしたルカ。
しかし自分に起きた異変にすぐ気が付いた。
そう自分が食べた量だ。
明らかに自分の体よりも多い量の肉を食べている。
消化が早いとかそういうレベルではない。
しかし、すぐにお腹が減るというわけでもないので、これもまた気にしない事にしたのだった。
ひとまず町に帰ったら冒険者を探して見るか程度にする。
(でも、お土産にウサギの肉を持って帰りたいなぁ)
そんな事を考えて、大熊の死体をそのままにしてウサギを探し始めたルカであった。
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以下は、メモ要素があります。
ルカ:L5
種族:猫(?)
ステータス:不明
所持スキル:
【XけXさっX】【XX成長XX】【知識強化】
【急所狙い】【爪強化】
【牙強化】New!
【大喰い】New!