16話 春になったら、獲物が増えたかにゃ?
雪が融け、季節はすっかり春になった。
テトと一緒に図書館に通ったりしたお陰で、随分とニンゲンについて詳しくなったよ!
テトが言うには、もうアーニャと同じくらいには分かっているみたい。
ん-、それって凄いのかな?
わかんないや。
あ、まだわかんない事あるってことだからまだまだって事かー。
それはともかく、春になったから雪が無くなり草木が芽生える。
それを食べる為に、冬の間寝てばかりだった大きな獲物が増えるって事なんだ。
「にゃー、ちょっと出掛けるって言ってたよにゃ?」
「にゃー(そうだよー)」
「じゃあ、なんで熊なんか咥えてるにゃ?」
「にゃにゃにゃー(出掛けたら、居たから仕留めた)」
傍から見たらにゃーにゃー鳴いているだけだけど、テトにはちゃんと言葉が通じる。
どう頑張っても、人間と同じように発音出来ないのでテトとしか会話は出来ないのが残念だねー。
「んー。…散歩気分で仕留めれる相手じゃないんだけどにゃー。
でも、大物は大歓迎だにゃ。これでまたお金が稼げるにゃ」
「(最近テトは、お金の事ばっかりだねー。お買い物出来るのが嬉しいのは分かるけど、そんなに大事ー?)」
「お金は大事だにゃ!これが無いと服も、下着もご飯も買えないにゃ!」
「(でも、どれも狩りで調達出来るでしょう?)」
「ルカは分かってないにゃ!ヒトは、ごわごわした毛皮よりもサラサラの布で出来た服が好きなんだにゃ。
それに、お洒落な服を着たいのは全ての女の子の欲求だにゃ!」
ふーん。元々毛皮を纏っているボクには服なんてそもそもいらないけど、ニンゲンは色々と着ないといけないから大変だなぁ。
そもそもお洒落ってなんだろ…?
あ、そういや図書館の本で見た!
求愛行動するのに、他のオスより綺麗な羽を自分に飾り付けて目立とうとするとか書いてあったな。
ヒトの場合は、きっとメスがやるんだね。
「(という事は、テトは誰かに求愛行動をするためにお洒落したいのかな?)」
「!!?何てことをいうにゃっ!!」
「(え、違うの?)」
「確かにカッコいい男には見て貰いたい…ゲフンゲフン。えっと、ヒトは褒めてもらいたいだけじゃなくて、自分の気に入った物を着る事でテンションが上がって嬉しくなるんだにゃ!!」
「(ふーん。あ、でも毛繕いが綺麗に出来て毛艶がいい時は気分がいいかも。それと一緒だね!)」
「ルカの言う事は、いつも身も蓋もないにゃ…」
なぜかガックリと肩を落とすテトだったが、獲物を処理する事を思い出しテキパキと動き出した。
相変わらず切り替えが早いなぁ。
毛皮を傷付けると売値が下がるらしいから、今日は重くても咥えて持ってきた。
きっと運んでいる途中に見付けられたら、死に掛けの熊が物凄いスピードで這って動いているように見えただろうね。
想像してみたら全くの別の生き物に見えて、ボクでも怖いかも。ちょっと全身の毛が逆立ったよ。
「んにゃ!?どうしたにゃ?!」
「(あ、何でもない。ちょっと変な想像したらブワってなっただけだよ)」
「ビックリするからやめてにゃ。ルカが警戒するほどの大物でも来たのかと…」
そんな話をしている時だった。
オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンンッッ!!
「(!!)」
「な、なんだにゃ!?」
物凄い大きな遠吠えが辺りに響き渡る。
それだけで、家の壁がビシビシと振動している!
「(テト!湖の方だよ!)」
「まさか見に行くとか言わないよにゃ?」
「(ボクのテリトリーに入ってきて、大きな顔はさせないよ!)」
そう言いつつ、自然と毛が逆立った。
間違いなく、強者の声。
オーガと対峙した時くらい、空気がピリピリしているのを感じる。
「わ、わかったにゃ。でも、飛び込んで行ったら危ないにゃ。
慎重に近づこうにゃ」
「(当然だよ。狩りをするのに真正面から行く猫はいないからね!)」
ボクとテトは、するりと家を出ると湖の方へ移動を始めた。
湖は川を上って少ししたらある。
冬の間は凍っていて、魚も獲れないからあんまり来なかったけど春になって氷が解けたから色んな動物が集まっていた。
ただ、先ほどの遠吠えを聞いたからか少し警戒をしているようだ。
「おかしいにゃ。あれだけの遠吠えを聞いてもみんな隠れていないにゃ」
「(何がおかしいの?)」
「普通はあんな怖い声を聞いたら、逃げるか隠れるかするにゃ。
でも、ここの動物たちは声の主を知っているかのように、逃げようともしてないにゃ」
「(なるほど…。じゃあ、あの声の主がここらのボスなのかもね)」
ちょっと悔しいけど、ここはボクの縄張りではなく、声の主の縄張りみたいだね。
まだここらに住み着いて半年くらいだから仕方ないけど、ちょっと悔しいなぁ。
ん、そうか!
じゃあ、その声の主を仕留めれば正式にボクの縄張りって事だね。
よーし、がんばろう~!
自然とウキウキとした足取りに変わり、それでも音を立てずにどんどん声がした方へ近づく。
なぜか血の匂いがして、どんどん濃くなっていく。
それと同時に、獣の匂いも強まっていった。
「(近くにいるね。しかも、獲物を捕まえて食べている所かも)」
「さすがルカは鼻が利くにゃ。テトも鼻が利く方だけどハーフだからそこまで分からなかったにゃ」
テトは半分だけ獣人の血が流れているから、普通のヒトよりは匂いに敏感だけど猫であるボクよりは分からないみたいだね。
こんなにキツイ匂いがしているのに、分からないなんてさ。
藪の中をすり抜け、木々の隙間が開けたところにソイツは居た。
正直言うと、最初は大きな野生の動物だと思っていたんだ。
だからせいぜいいつもより大きな熊とかが起きたのかな?くらいにしか思っていなかった。
でも、すっかり忘れていたけどオーガと同じって事は、そんな程度の奴じゃなないと考えておくべきだったよね。
だって、あれは…。
「ル、ルカ…!あれは、魔狼だにゃっ!?」
そこにいたのは、野生の動物では無かった。
そう、それは魔獣と言われている魔物の一種だったのだったんだ。
久々に投稿しました!
ルカとテトを書いていると楽しいです!
これから不定期ですが、投稿再開していきます!(目指せ10万字!)
ステータスは変化なしなので、省略!




