10話 冬ってなんだろ?
モンスター襲撃から数か月経った。
あのモンスターの襲撃から数か月過ぎ、子猫だったルカもすっかり大きくなり、体も成長した。
まだまだ成長中ではあるが、それでも見た目は大分猫らしくなってきた。
元々美しかった毛も伸びて、よりふさふさになったお陰でより優雅な見た目の猫になった。
どうやらルカは長毛種だったようで、野良猫には見えないほど美しい猫になったのだった。
ただ、毛が伸びたのは成長のお陰だけではない。
あたりの空気はひりついた寒さを帯びて、行き交う人々からは白い息が出ている。
そう季節は冬。
ルカの体は冬毛に生え変わっていたのだ。
「ん~、今日のルカもふさふさ、ふわふわ~」
「コラ、アーニャ。いつまでルカと遊んでるんだい?そろそろ店の支度をするから手伝いな!」
「はーい、今行きま~す。じゃ、ルカ。また後でね~」
ルカのふさふさの毛を堪能したアーニャは、女将さんに言われて店の中に戻っていった。
一人残されたルカは、ふあぁと欠伸をしながらまたうたた寝に戻るのだった。
町の襲撃のあとは、色々と大変だった。
家や城壁の修繕で職人たちは修繕で大忙しだったし。
教会の人々は、あの襲撃で亡くなった住民の弔いをするために、連日のように葬儀を執り行っていた。
また、噂が噂を呼んでルカにお供えする人が後を絶たず、ルカは狩りをしないでも毎日お腹いっぱいになるまで食事にありつくことが出来た。
(このまま、この幸せな日々が続くといいな~)
と最近まで思っていたのだが、外が寒さを増すにつれてお供えされる数が日に日に減っている。
そろそろ狩りをしないと、食事にありつけないかも知れない。
人々の話を聞く限り、この寒さは”冬”が到来するかららしい。
お供えする人々が色んな話をしてくれるので、ルカは自然と色んな事を覚える事が出来た。
今ではかなりの事を理解できるようになった。
町の看板も全部読めるし、皆が言っている言葉も殆どわかる。
もしかしたら、たまに町の中央で本を読んでいる人がいるが、それもある程度読めるのかもしれない。
ただし、ページをめくる事が出来ないので自分ひとりで読むことは出来ないが。
だが、色んな言葉を理解出来るようになったので、もしかしたら言葉を喋れるかもと思って言葉を発声しようと試みた事があったが、自分の口から出てきたのは『にゃ~』という鳴き声だったのだけが残念だ。
どんなに言葉を覚えても人間と直接話をすることが出来ないようだ。
(それでも何を言っているか分かるからいいけどね)
冬が来たら雪が降るらしい。
雪は白くて冷たいらしく、積もったりすると地面も全部真っ白になるという事だ。
ルカはまだ冬を体験したことがなかったので、それを楽しみにしている反面…。
(んー、でもこの寒さは苦手かも…)
と樽の上で、日々丸まって過ごすことが多くなった。
樽の上には、女将さんが古くなって使わなくなったという毛布を敷いてくれていてポカポカする。
(やっぱり、狩りはもうちょっと後でいいかな)
そうして今日も狩りに行かずに樽の上でゴロゴロするのだった。
そうして過ごしていたある日だった。
空から白い粉が落ちてきた。
試しにルカがそれを舐めてみると何も味はせず、ただ冷たいだけだった。
(これが言ってた雪というやつかな?)
通りで今日はいつにも増して寒いわけだ。
しかもこの雪、体に着くと溶けてしまい、しまいに体がしっとりと濡れてきた。
(このままだと体がびしょびしょになる!それは嫌だよ)
そう思ってブルブルと体を震わせて、雪を振り払う。
もう毛布の上でもポカポカしないし、どこかの軒下を探さないと凍えてしまう。
いくら懐いているからといっても、店の中には入れてくれないだろうし、どこか雨宿りならぬ雪宿り出来る場所を見つけないといけない。
雨の時なら地下に行けばいいが、町の人の話を聞くと雪で地下の入口が塞がってしまう事もあるらしいので暖かくなるまで出れないかも知れない。
どうするのか唸りながらも考えるルカ。
(そうなったら飢え死にしてしまう可能性もあるし、今は止めておいた方がいいかも)
まずは、最近少なくなった餌を確保する必要がある。
久々に森にいって、美味しいごはんの確保をしようと考えた。
(その為に、まずは森に行ってこよう)
お供え生活が始まってから滅多に来なくなった森だが、雪で所々白化粧されていた。
すっかり枝から葉が落ちて、木の枝しか見えない。
心なしか獲物の数も少なくなっているようで、その日はウサギが一羽と鹿が一頭だけであった。
これでも町のハンターよりも成果がいいのだけど、成長したルカには物足りないのだ。
ウサギはお土産用にして、鹿は持ち帰るのが大変なのでその場で解体する。
内臓以外で一番柔らかい肉はお土産用にし、それ以外はその場で食べてしまうのだった。
あたり一面が血の池状態になるが、それは降って来た雪が隠してくれそうだ。
ルカはこの数か月で学習したことがある。
それはスキルについてだ。
冒険者ギルドの受付に、マリンという猫好きで有名な女性がいる。
町でルカを見かけたときも、持っていたお菓子をくれた事もあった。
ルカはそのヒトにすり寄り、懐いたフリをして彼女が受付するカウンターに座っていた。
最初は珍しがったり、追い払われたりしたけど、ヒトは慣れるのが早いらしく数日で気にする人が居なくなった。
そんな努力(?)もあり、冒険者達のスキルを堂々と覗き見することが出来るようになったのだ。
ギルド職員はアドバイザーもやっているので、冒険者が相談しにきたりすると丁寧に教えてくれる。
その中にはスキルのアドバイスや説明もあるのだ。
自分のステータスにあるスキルと同一のスキル所持者に当たるまでかなり時間が掛かったけど、その甲斐があって殆どのスキルの効果が分かるようになった。
ただ、【言語理解】【知識強化】【大喰い】【強運】は似ているスキルですら持っているヒトもなく、会話にすら出なかったので詳細が分からなかった。
なのでおおよその予想くらいしかついていない。
─それはさておき、今重要なのはそのスキルじゃなくて【魔力感知】。
(このスキルって、便利なんだよ。魔物が近くにいると魔力を察知してその場所を教えてくれる)
マリンが説明していたものそのままの受け売りだが、誰に説明するでもなく心の中で独り言を言うルカ。
大型の美味しい魔物が引っかかればいいなくらいで発動したのだったが…。
(…ヒト?にしては魔力の色が違う…)
青は人間。
赤は魔物。
緑は精霊。
白は天使。
黒は悪魔。
とマリンが説明していた。
しかし、今視界にあるのは”紫”だった。
そういえば、もう一つ言っていたかな。
人と魔物の間に生まれた混血児は、その間の色になるという。
(あの色は、青と赤の色に近いから…ヒトと魔物の間っていうこと?!)
そんなのは町で見たことがない。
【危険察知】が反応しない所をみると、そんなに強い相手じゃないみたいだが、それでも油断はしない方がいいと先日の襲撃で感じた事だ。
気が付くと、辺りにかなり強く雪が降り注いできた。
いつの間にか吹雪いたみたいだ。
そんな中、得体の知れないものがフラフラとしながら近づいてくる。
ルカは気配を消すことも忘れ、固唾をのんで何が現れるのか待っていた。
そして、遂に現れたのは・・・
「うう…、お腹すいたにゃぁ~、そのお肉ちょーだい」
そう言うとそのままバタンと倒れてしまった。
現れたのは、頭に獣の耳を付けた不思議な少女だった。
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お待たせしました!
第2部開始です。
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ルカ:L15
種族:霊猫 職業:野良猫
ステータス:
力:75(+50) 魔力:45(+50)
体力:45(+50) 精神:45(+50)
速度:150(+50) 技量:90(+50)
運:30(+50)
所持スキル:
【危険察知】【高位成長促進】【言語理解】【知識強化】
【急所狙い】【爪強化】【牙強化】【大喰い】【潜伏】
【全能力強化】【強運】【精神耐性】【魔力感知】




