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87 番外編 わたしが辺境伯に嫁ぐ理由 23

「嘘でしょ。なんで今ごろになって……」


 父から早馬で送られてきた手紙に目を通していたわたしは、その内容に愕然としていた。


 そこには父のところへ、アルマローレの先代公爵、ロイドとルビーの祖父か融資の話を持ってきたと書かれていた。

 それだけではない。ガーナス様との婚約について、それを破棄してロイドと結び直さないかとも言われたらしい。


「婚約破棄って、それはヒロインじゃなくて悪役令嬢がするものでしょ?」

「どうしたんだい。そんなに憤って」


「とうとうアルマローレ公爵家が出てきたよ。ガーナス様との婚約を破棄しろだって」

「ああ、あそこは奥方がいらっしゃらないからか。そういうタイプではないと思っていたんだけどね」


「相手はアルマローレ公爵じゃないんだよ。その息子のロイド・アルマローレ。わたしの記憶にある、物語上のリコットが恋愛する相手の中のひとりだよ。ガーナス様にも話してあったよね」

「リコットの知っている物語の世界と、ここが瓜二つで、そこに出てくる主人公の恋愛対象者にロイド君が含まれていたんだっけ?」


「そう。今までまったく関わってこなかったのに、なんで今更……」

「相手がロイド君だとしてもリコットは困るんだよね」

「当たり前じゃない」


「だったら心配しなくても大丈夫じゃないかな。いくら公爵家でも、それ相当の理由がなければサーフベルナ家とナジュー家の婚約を覆させることなんてできないし、そんなこと僕がさせないから」

「本当に本当? ガーナス様の気が変わったりはしない? 絶対、婚約破棄しないって誓える?」


 ゲームの強制力があったりしたら、突然ガーナス様の態度が変わる可能性もないとは言えない。


「するわけないじゃないか。僕はリコットを一生守るって誓ってるんだから。逆にリコットが僕との結婚が嫌だと言うなら話は別だけどね」

「わたしがガーナス様以外に嫁ぐことは絶対にないから。もしかしたら、これからもこういうことが起きるかもしれない。誰が相手だとしても、それだけは忘れないで」

「それはわかっているけど、やっぱり僕たちの婚約は、世間には厳しく映っているんだろうね」


 それはわたしが変なうわさ話を広めたからだ。


「王都に戻ったら、私の方がガーナス様のことを大好きなんだって触れ回るよ。今までの噂は本当の話を広めて上書きするから」

「僕はなんて言われたっていいんだよ」


 むかしラザーにロリコンの変態だと言われたことがある。ガーナス様のことをそんな風に思われたままにはしておけない。


 本当にもう。頑張ってここまでたどり着いたのに、なんでこんなことになっちゃっているんだろう。




 ところがそれは、ロイドの話だけではなかったようだ。

 ゲームの強制力を怖れていたわたしに、追い討ちを掛けるように新たな出来事が起こる。


「なんでここにいるの?」


 その日、ナジュー領限定商品の売れ行きの視察に出かけていたわたしの視界に映ったのはラザー。


 よく見ればラザーだけではなく、ロイドとルビーも一緒だ。それにジェイルまでも。


 攻略対象者が三人に、悪役令嬢が一人。


「こっちがどんなに避けていても関係ないってことなの? まさかわたしを無理やり連れ戻しに来たんじゃないよね。どうしよう」

「リコット様いかがいたしましたか」


 怯えるわたしにナジュー家の騎士たちも心配している。


「大丈夫だけど、あそこにいた目立つ人たちは、ガーナス様との婚約を反対していて、私のことを連れ戻しに来たんだと思うんだよ。私の方は嫌っているのにこんなところまで追いかけて来たみたい。絶対にナジュー家には入れないで。お願い」

「承知いたしました。皆の者に伝えておきます」


 ガーナス様との婚約が整ったことで安心していたのに。


 このままではいつまでたってもゲームのシナリオから抜け出すことができないのかもしれない。


 騎士たちがロイドたちを追い返してくれたと聞いても、その日わたしは一睡もできなかった。


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