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72 番外編 わたしが辺境伯に嫁ぐ理由 8

 実のところ母の死因は特定できていない。ゲームではそこまで詳しい話が出てこないからだ。だから病気だけではなく、突発的な事故である可能性もある。


 それでも、病気であった場合は私の知識で救えるかもしれない。そう思ったらナジュー様を頼るのが一番確実だと思ったのだ。


「今はまだ動きようがないけど、その時になったらよろしくお願いします」

「そうだね。僕にできることは協力するつもりだよ」


 それから数日間、わたしはナジュー家に通ってガーナス様と協議を続けた。

 ちなみに次の日から父は、自分がいても邪魔になるだけだと言って同行はしていない。父もガーナス様のことは信頼しているようだ。


 父にはできるだけ家にいて欲しいと思っていたからちょうどいい。理由は言っていないけど、なるべく母のそばにいて欲しいとだけお願いしてある。


 それから、私はナジュー辺境伯をガーナス様と名前で呼ぶことにした。なぜかと言うと、ナジュー家の一族すべてがナジュー様だからだ。


 一度打ち合わせをしていたところへナジュー様の長男が自分も仲間に入れて欲しいと部屋へ突撃してきたことがあって、ややこしいので、それから名前呼びになった。

 ついでにその時から私のことは呼び捨てにしてもらっている。


 ガーナス様の長男は私の二つ下。そして年子で次男がいる。


 ガーナス様は次男が生まれてすぐに奥様を病気で亡くされたようだ。だから母を守りたいわたしに対して「僕にも身に覚えがあるからね」そう言って無理難題にも文句ひとつ言わずに付き合ってくれている。

 それだけで、とても優しい人だとわかる。


 私の知っていることをすべてガーナス様へ教えて、化粧品の開発は順調に進んでいた。


「物によっては防腐効果の高い原液に近いまま販売して、使用時に水と二種類の液体を混ぜ合わせてから使う方法がいいと思うんだ」

「リコットが言うように、それなら長期保存も可能だろうね」


 安価で庶民が手にすることのできる化粧水や保湿液は、作り方さえ知っていればわりと簡単なものだ。だから、すぐに商品化にこぎつけることができた。


 わたしの家の雑貨屋で売り始めると、口コミでどんどんお客が増えていき、現在の店だけでは手狭になったので他にも店舗を増やすことに決まる。


「ガーナス様のおかげでお店が繁盛してるのは嬉しいんだけど……」

「リコットが心配しているのは準男爵の件かい。そればかりは国が決めることだからな」


 お店は大きくなったけど、わたしの思惑通りに準男爵を得ることは出来ないらしい。それがガーナス様の説明でわかってしまった。


 何故かと言うと、うちの商売はあくまでもナジュー家の後ろ盾があってのもので、ナジュー家の一部だと見なされてしまうそうだ。


 もしそれで準男爵家として認めてしまえば、もともと財力がある貴族はそうやって自分の派閥に与する貴族家を増やすことができてしまうだろう。

 国が荒れる原因にもなるので、候補から省かれてしまうそうだ。


 そう言った場合は直接の繋がりがわからないようにうまくやるしかない。うちの場合それは無理だった。


「ゲーム通り、白磁器の輸入しかないのかな。だったら香辛料でも同じだよね。どっちにしてもその方が確実な気はするけど」

「そうなんだろうけど、リコットは避けようとしているんじゃなかったっけ」

「うーん。そこが悩みどころなんだよね。困っちゃうよ」


「だったら、うちの養女になる気はないかい。君にはそれだけの価値があるからね。と言ってもご両親に悪いから名前だけのもので、生活は今まで通りでもかまわないから」


 思いつきで話を出したわけではなく、ガーナス様は以前から考えていたのだと言う。


「うーん…………考えておくよ」


 なぜかわたしは、ガーナス様の誘いに頷くことが出来なかった。本当だったら喜んで飛びつくほどの提案なのに。


 胸の奥で何かが疼く。自分でも訳がわからなくて、私は戸惑いを隠せないでいた。


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