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47 リコットが聖女になるために

 秘宝のことはヒューバートに調べてもらっているけど、婚約のことは格下の家からの申し込みなので、とりあえず保留にしてもらった。


 あの話し合いで、何がヒューバートの琴線にふれたんだろう。


 学院ではずっと、ヒューバートには嫌われないように動いていたから身に覚えはある。

 好感度が上がりすぎているのなら、嫌われるように持っていかないといけないけど、情報が手に入らなくなるのは困る。

 どうするべきか。


「ヒロインの私が言うのもなんだけど、着々と攻略してるね。ちょっと尊敬しちゃう」

「嫌われないようにしていただけで、そんなつもりはなかったのに」

「それでもヒューバートが協力してくれるならありがたいよ。わたしは嫌われているから、頼んでも助けてくれるわけないからさ」


「本当になんでこんなことになっているのかしら」


 だからと言って、ヒューバート任せにする訳にもいかない。

 私はロイドにも手伝ってもらい、王立図書館で関係のありそうな書物を読み漁ることにした。


 結局、有益なものは見つからず、ガッカリしながら屋敷へと帰ったのだが……。



「じゃあ、わたしは万全にしておくために聖女になっておくよ。権威があれば、何かの役にはたつだろうから」


 そう言って教会に出かけたリコットが、すでに辺りが暗くなり始めたと言うのにまだ戻っていない。


 聖女になる方法は王都にある五つの教会すべてで祈りを捧げる必要があるそうだ。今日は家から一番近い教会に向かったはず。


 アルマローレ家の護衛はつけてはいるけど、何かあったのかもしれない。


「リコットが心配だわ。様子を見にいってもいいかしらお兄様」

「たしかにこんなに遅いのはおかしいな」



 図書館から帰ってきたその馬車で今度は教会へと向かった。

 しかしその場にいたのはアルマローレ家の護衛だけだ。


「礼拝堂に入ったまま出てこないですって?」


「我々は立ち入ることを禁じられてしまい、ここで待機していましたので、どうなっているのかまったくわかりません。ですが、リコット様はあの建物から出てはおりませんから、あの中にいらっしゃることだけは確かです」

 護衛騎士も困惑している。まさか教会でリコットが行方不明になるなんて思いも寄らなかったのだろう。


「私が見てくるわ」

「ルビーはダメだ。俺が様子を見てくるから皆とここにいてくれ」


「大丈夫なの」

「ああ、リコット嬢の話が本当なら俺に危険が及ぶことはないだろう」

「それでも気をつけてね」

「わかってる」


 三十分たっても、ロイドはもどってこない。

 しびれを切らした私は武装解除した護衛をふたりだけ連れて、礼拝堂まで向かうことにした。


 重い扉を開けて礼拝堂に入ってみると、ロイドと教会の人たちがなにやら騒いでいる。


「何があったの?」

「来たらダメだと言わなかったか」

「ごめんなさい。どうしても心配になってしまって。それでこれはどう言うことなの?」


「リコット嬢が懺悔室に閉じ込められたんだよ」


「申し訳ございません。なぜか懺悔室の扉が開かなくなってしまい、しかも司祭たちはもちろん、誰もそのことに気がつけずに、サーフベルナ様をずっと閉じ込めたままにしてしまいました。本当になんとお詫びをしたらよいものか」


 白髪頭の司教だと言う老人が私たちに向かって謝罪する。


どうしても開かない頑丈な扉を、最終的にはバールを使って無理矢理こじ開けることでリコットをやっと助けることができた。



「心配かけてごめんなさい」


 自分が悪いわけではないのに、私たちと、外で待っていた護衛騎士たちにも、頭を下げるリコット。

 それに対して「何ごともなくてよかったです」と胸をなでおろした護衛騎士たち。



「本当に申し訳ございません」

 何度目かの謝罪をする司教。


「さっきから言っているけど、わたしなら別にいいから。なんとなくこうなる予感はしてたし」

「は?」


「わたし、そういうことに巻き込まれやすい体質だってこと。だからお爺さんも気にしないで」

「そう言っていただけると助かりますが」


「本人がこう言っているから、今日のことはここだけの話ということでお願いしたい」

「さようでございますか。承知いたしました」


 そう言いながらも司教は、私たちが教会を去るまで頭を下げ続けていた。



 馬車の中で三人きりになってからリコットが事の真相を話し始める。


「やっぱりイベントが起きちゃうのか」

「イベント? 予感がしたって言っていたわね。どういう意味なの」


「私が聖女になるには、五ヶ所の教会を回らなきゃいけないんだけど、ゲームだと問題が発生したりして、すべて攻略対象者と関わることになるんだよ」

「それなら、あと四人とイベントがあるってことなのね」


「ラザーは大丈夫だし、ヒューバートもルビーに誘導してもらえば何とかなりそうだよね。だけど他の二人がなあ」


「コパルとも知り合いだから、リコットが教会に行く日に何か理由をつけて約束を取り付けるわよ。問題はパトリック王太子殿下ね」


「わたしとルビーは遠ざけられてるから、まず教会まで来てもらうことが難しいし、一度は好感度が上がっているからちょっと心配なんだよ」


「それは、俺がもう一度違う教会でリコット嬢を助けたら駄目なのか」

「たぶんそれじゃ聖女になれないと思う」


 パトリック王太子殿下をリコットに近づけて大丈夫だろうか。

 せっかくエレーナ様とうまくいっているのに、ここでもめることになったら、今後に支障がでそう。


 前途は多難だ。


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