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44 ヒューバートの攻略

「ルビー様がうちに訪ねてくるなんて珍しいですね。それにロイド殿と……」


 ヒューバート・ワイズはリコットのこと嫌っているんだったっけ。

 私に向ける眼差しと、リコットへの嫌そうな視線があまりにもあからさますぎて笑える。


「リコットさんとはお友達ですのよ。ヒューバート様がいらっしゃるからリコットも頑張れるんですって。そういうの好敵手っていうのでしたかしら。ヒューバート様と肩を並べられるリコットが羨ましいわ」


「そうでしょうか」

「ええ、そういう仲ってとても素敵」


 とにかく褒める。ひたすら褒める。ヒューバートを攻略するためには褒め続けることが大事。


「それで、私に用事とはなんでしょう」

「突然伺って申し訳ない。実はヒューバートの知識と力を借りたいんだ」

「私にわかることでしたら構いませんよ」


 気をよくしたヒューバートは私たちに向かって微笑む。


 リコットだけはヒューバートから無視されていたので、話には入らず出されていたケーキと紅茶を堪能していた。


「ヒューバート様は王家の秘宝のことはご存知かしら」

「王家の秘宝? お二人はそれをどこで知ったのですか」


 ロイドと私は顔を見合わせ頷き合う。この感じからしてヒューバートには心当りがありそうだ。


「ヒューバート様は、私が予知夢を見たと言ったらどう思われます」

「未来を夢に見たと言うことですか? ルビー様には悪いですが私は眉唾ものだと思っています」


「私、王家の秘宝のことは夢で知ったんですのよ。ヒューバート様は信じてはくださらないの?」


「ルビー様を疑っているわけではありませんが、それが事実であると言う、それ相応の根拠や証拠がなければ、鵜呑みにはできません」

 それはそうだろう。こちらもそう簡単に信じてもらえるとは初めから思っていない。


「でしたら……ワイズ家には家宝のワンドがございますでしょ。『いつの日か、ワイズ家の者が世界を救うことになる』ヒューバート様はその言い伝えを信じていらっしゃいますよね」


 私はリコットに教えてもらったワイズ家の秘密を告げる。


 ガタンッ


 私の言葉に驚いたヒューバートがいきなり立ち上がった。


「どうしてそれを」


 目を見開いて、私を見降ろしているヒューバート。


「夢で見ましたの。他にも、野良犬にオリバーと名をつけてこっそり可愛がっていましたでしょ? それと、ある方に渡せなかったブローチが机の奥底に眠っているのも知っておりますわ。弟さんへ向けていた仄暗い気持ちを救ってくれた方でしたかしら」


 ヒューバートが息を飲んだ。私が話していることはすべてリコットとのイベントから引用している。間違いないはず。


「これで真実だとわかってくださるかしら。私はヒューバート様に世界を救ってほしくて、今日はお願いに来ましたのよ」

「私が世界を救う?」


「ヒューバート、どうかルビーの話を聞いてもらえないだろうか。戯言だと思わないでくれ。本当にルビーの命や、皆の運命が掛っているんだ」


「夢が真実であれば、私の命はつきてしまいます。ヒューバート様だけが頼りなのですわ」


 混乱しているのか視線が定まらないヒューバート。


 しばらくして自分の中で結論が出たのかソファーに座りなおし、その目はしっかりと私たちを見据える。


「とりあえず、お話だけはお伺いいたしましょう」



「王家の秘宝、そこに世界を滅ぼす者が封印されていますの。だから間違って誰かが封印を解いたりしないように、葬る必要がありますわ。それも秘密裏にです」


 どこまで協力してくれるかはわからないけど、私たちは王家から宝を盗もうとしている。とても大それたことをしようとしているのだ。味方はできるだけ多い方がいい。 


「こんなこと、ヒューバート様にしかお願いできませんわ。私のために力を貸していただけないかしら」


 愁いを帯びた表情でヒューバートに懇願する。


「ルビー様のお気持ちはしかと伝わりました。良い方向で考えさせていただきます」


 とりあえず、ヒューバートを引きずり込むことに成功したようだ。

 ヒューバートなら王宮内を探索するのも、そう難しいことではないと思う。宝物庫の場所と忍び込む方法さえ教えてもらえればそれだけでいい。

 その時はそう思っていた。



 まさか私の言葉で、思ってみなかった方向にヒューバートが行動を起こすなんて、思いもしなかったのだ。




「いったいどういうこと!? ヒューバートを攻略するつもりなんて全然なかったのに……」


 驚くなと言うほうが無理だろう。


 翌日、ワイズ家から、私あてに婚約の申し込みが届いたのだから。


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