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04 サーフベルナ家

「サーフベルナ家のリコットさんはいらっしゃるかしら」


 Aクラスの入口で、攻略対象でもある子爵家のコパル・スモーインに会ったので呼んでもらうことにした。


 コパルは若葉色の癖毛と濃茶の瞳をしていて小柄で見かけは子犬っぽい可愛さだ。でも中身はしっかりしている。そのギャップで下流の令嬢からはとても人気があるらしい。

 人脈を作るためにいろいろな人の相談に乗っているようで、男子生徒からの信頼も厚かった。


 ゲームの選択でコパル攻略が正しく進んでいれば、サーフベルナ家が商い上で見つけた珍しい香辛料を、コパルに紹介して二人の距離は縮まる。

 この時サーフベルナ商会が磁器の専門店になっていると好感度は一気に上昇。


 ルビーはと言えば、スモーイン家が売り出した香辛料の中に、嫌がらせで毒を混ぜてコパルとリコットを陥れようとしたけど、結局捕まって国外追放されていた。


 だけど、現在リコットの家はなぜか磁器を扱っておらず、のし上がったのは香辛料の販売だった。

 最初にサーフベルナ家の商売の選択を間違えるとコパルの好感度はあまりあがらない。

 それでも私はコパルに、本当はリコットの家が商売にするはずだった磁器の購入ルートを教えて、念のためヒロインのイベントをひとつ潰しておいた。


「おはようございます。ルビー様。リコットさんなら辺境に嫁ぐ準備をしてるとかで少し前から学院には来ていませんよ」

「嫁ぐ準備……そのことを知っているなら教えてほしいの」


 コパルは私についてきた三人をちらっと見て会釈をしてから話し始めた。


「知っているってほどではないですけど。サーフベルナ家の商船が輸送中に沈んだせいで取り返しがつかないほどの借金ができたそうなんですよ」

「商船が沈んだですって!? そんなことあり得ないわ」

「船が沈んだことはうちでも調べましたから間違いないですよ。ただ、そのあとすぐに海運業者が姿をくらましたので、詐欺にあった可能性が高いんですけどね」


 サーフベルナ家が詐欺にあった? 事情を知るリコットがいたのに、騙されたって言うの?


「それが本当だとしても、積み荷の代金は支払う必要がありますからね。サーフベルナ家と商売上関係があったナジュー辺境伯が負債の肩代わりすることになったそうなんですよ。ただでという訳にもいかないと、サーフベルナ家のたっての希望でリコットさんと婚姻関係を結ぶことになったとか。その辺はいろいろな情報が飛び交っていますから、本当かどうかは定かではありませんが」


 思い出した。ゲームでは船の乗組員が商家の同乗者を海に突き落としてから、高価な香辛料を載せたまま別の大陸へと移動する。かわりにボロ船を海に沈めて難破させたようにみせかけ、積荷を横領するんだった。


 本当だったらその詐欺にあうのはコパルの家だ。ちゃんと攻略が進んでいればリコットがコパルに忠告して未遂で済むんだから、リコット自身が詐欺にあうはずがない。


 いったいどういうこと?


「あなたは助けてあげなかったの」

「サーフベルナ家をですか? 確かに香辛料の売買は魅力的ですけど、うちも商売なんで損得を考えればあまりおいしい話ではありませんし。それになぜか、僕はリコットさんに避けられていたんですよ。彼女、話しかけるといつも嫌そうにしていました。手を貸そうとしても拒否されたんじゃないですかね」


 最初の選択を間違えたせいでコパル攻略ルートから外れた?


 よく考えてみたらコパルだけじゃないわ。私が介入する前からヒロインは選択を間違えていて、結局誰ひとり攻略できていないんだもの。詐欺にあったり、怪しい辺境伯の後妻になったりするなんて、あまりにもゲームの内容と違う。


 それを言うと私も十分乙女ゲームとは別人になっているんだけど、それは転生者だからだし。


 もし、リコットが転生者だとしたら、ゲームの内容を知らなすぎる。


 やはり私という異分子が入り込んだせいですべてが変わってしまったんだわ。


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