ゾンビの世界が出来た理由
スカイツリーの展望台テラス。
〈ヒュオオオ〉
桑園 (そうえん)さんが死んだ。
僕はオカルトが結構好きで学校でもよく友達と都市伝説を話してた。
その中にバタフライ効果、シンクロニシティというモノがあった。
一匹の蝶がアフリカで羽ばたいたらその地球の裏側で竜巻が起こるという説だ。
ただ、これは極論の例えで、例え小さな揺らぎにしか過ぎない事象でも、それがきっかけとなり、やがて大きな事象へ繋がって行く。
大きな事故には300を超える原因があるという考え方だ。
これは既に工場ラインの現場では当たり前の説となっている。
・・。
夢?
あれは夢だったのかな?
今僕は現実にいるのだろうか?
たった一人じゃないか。
たった一人。
たった一人だぞ!?
たった・・。
遡る時2時間前。
高等学校、トイレ。
〈ギシ・・ギイ・・ギシ・・ギイ〉 桑園の首吊り死体。
主人公「う、うわああああ!?そ、桑園さん!桑園さん!!待ってて直ぐにー」〈カ!〉強烈な光。
主人公「うお!?」
黒いスーツ男。
黒人。
背が高い。
目が綺麗だ。
死体、主人公、黒人と並ぶ。
黒人「・・伝えに来た」
主人公「な!?は!?」
黒人「この世界は7つの封印が存在する」
主人公「ゆ、幽霊?」
黒人「聞け、そして、7つ目の封印が解けた、それは自殺で解けた、世界に審判が起こる」
主人公「な、あんた何者?」
黒人「スカイツリーに登れ」
主人公「・・」
黒人「君は見届けるのだ、人間界が終わるのをな」
主人公「・・ち、ちょっと待ってよ!?人間界が終わる?はあ?そ、桑園さんが死んだら何で世界が終わるんだよ!」
黒人「主は定期的に7人の清らかな者を人間界へ送りになる」
主人公「・・」
黒人「その7人がある期間以内に全員が自殺する事、それが封印だ」
主人公「はあ?たった7人で世界が終わるのかよ!?」
黒人「たった?」
主人公「あ・いや・その・・」
黒人「・・最後だから、まあ良い、教えてやろう、清らかな者は弱いと、人間達は考える、が、それは違う、むしろ、強いのだ」
主人公「・・」
黒人「そんな強い魂が自殺を選択する程に世界は壊れてしまった」
主人公「・・」
黒人「たまに居ただろう?存在するだけで癒しの人間が、あれらがそうだ」
主人公「・・」
黒人「善の流れ、その根元の泉、湧き出る源泉、それらを無くせば、この世界には善の流れは無くなり、悪の泉だけがはびこる」
主人公「・・」
黒人「それがこの世界の仕組みだ」
主人公「・・」
黒人「最後の封印が解けたと」
主人公「・・」
黒人「主に通達が行った」
主人公「・・」
黒人「主は仰られた」
主人公「・・」
黒人「愛を解らぬ、悪を選ぶ、出来損ない共を滅せよ」
主人公「!!!!」
黒人「我らは従うのみ」
主人公「・・待って」
黒人「我らも主とは立場は違えど、見守って来たというのに」
主人公「待って、待って!」
黒人「・・」 見つめる。
主人公「待って!待って!待ってよ!なあ!お願いだよ!待って!待って!」
黒人「・・」 悲しそうに首を振る。
黒人「間もなく神界から合図がある、その合図の前にスカイツリーへ行くのだ」
主人公「じゃあ、何で僕に現れたんだよお!?僕にどうしろっていうんだよお!?」
黒人「・・」 泣いていた。
主人公「!?」
黒人「私も、長年の仕事が無駄に終わった」
主人公「!!」
黒人「・・数多くの人間を導いた・・」
主人公「・・」
黒人「いつか・・」
主人公「・・」
黒人「・・いつか・・愛を選んでくれると・・思って・・いたのに・・また・・また始めからだ」
主人公「また?」
黒人「まただ」
主人公「・・また?・・またって・・またって?、またってどういう事だよ?」
黒人「スカイツリーへ行くのだ、そして見届けよ、自ら滅びを選んだ哀れな時代よ」〈フ〉消えた。
主人公「・・」
主人公は桑園の死体を降ろした。
そして、桑園の目、口を閉じ、女子トイレを出た。
出た時を他生徒に目撃されたが、気にする事なく、スカイツリーへ向かう。
現在。
〈ヒュオオオオオオオ〉
《パパパパー、パパパパー、パパパパーパー、パパパパー(繰り返し)》
派手なラッパの音が繰り返される。
綺麗な音だ。
音が止んだ。
主人公「始まった?のか?」
1時間後。
街から黒煙が立ち込めてきた。
自衛隊のヘリ、報道ヘリも飛び回っている。
街下を見る。
巨大な。
《オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ》
巨大な人波。
波が全てを飲み込んで行く。
ゾンビの波だ。
いつまでも疲れない走るゾンビの大波。
高い塀や、障害物を軽々登って行く。
スマホで英語のニュースが流れる。
世界中で同じような事が起きたようだ。
キャスターも生放送中に女性のゾンビに襲われ食われた。
街からは爆発が起きている。
救急車も鳴るが、直ぐに音が止む。
銃声も直ぐに聞こえなくなる。
5時間後、夕暮れの街は静かになった。
黒煙がいっぱいに広がり、炎があちこちに見える。
が。
もう何も聞こえない。
黒人「見届けたか?」
主人公「!?」後ろに突然現れた黒人に驚く。
黒人「こっちへ登って来ているぞ」
主人公「・・は、逃げ場なんてないんだろ?」
黒人「・・ああ」
主人公「・・前にもこんな事が?」
黒人「・・ああ」
主人公「・・どうして僕に?」
黒人「・・反応が見たかった、自ら招いた結果を見た人間の」
主人公「はん、で?どう?」
黒人「・・解らん」
主人公「すっきりしたか?」
黒人「・・解らん」
主人公「・・あんたってさあ・・天使なのか?」
《ガシャアンンンン・・》 小さくも、大きくもない音。
黒人は居ない。
《ドドドトドドドドドドドドドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ》
ゾンビ波が見えた。
後10秒以内に食われるだろう。
主人公「・・さって、行きますか!」 ゾンビ波を見ながら、後ろに倒れー〈ガシッ〉ジャンパーの裾をゾンビに捕まれた。
主人公「え〈グイ、ガブシャシュグジュグミキチャ〉あっっっぐはへいいいいい!?あがっひぶは!?〈ガキゴキンジュルルル〉」
顔、首、腹、足が熱い。
大群に食われながら落ちていく。
主人公「・・はは、人間を利用するなら、もっと賢く使えよ、上位1%さんから、宇宙人さん達よ、滅ぼしてどうすんだよ、馬鹿だなあ・・本当に馬鹿ばっ《ドドドドシャアアアア》
《END》