閃光の騎士
よければ最後までみてやってください
レガリアを求め「地図にない場所」に足を踏み入れたリーオとメリル。
だが辺りには色の濃い霧が立ち込め始めていた。
「慎重に進みましょう。この霧にはわずかに魔力を感じます。おそらくはここが境界線かと。」
「ああ。」
2人は慎重に歩を進める。まとわりつくような霧のせいで視界が悪く、先の見えない不安に囚われそうになる。
「確かにこの霧じゃ、ミダースも連絡できそうにないな。」
やがて濃かった霧が次第に薄まっていく。視界が改善されるにつれて辺りの様子も少しづつだが明確になってきた。
リーオ達は広大なオドニミ平原にいたはずだが
辺りには鬱蒼とした森林が広がっていた。地図を見たがそれらしい場所はどこにも見当たらなかった。
「どういうことだよこれ。まるで違う世界に来たみたいじゃないか。」
「まずは落ち着いて情報を得ましょう。先遣隊もこの辺りを通っているはずです。1人でも見つかればいいのですが。」
その時、小さな呻き声のような音がどこかで聞こえた気がした。魔物の気配はない。リーオはメリルに問いかける。
「今の。聞こえたか?」
「はい。ですが、場所までは。近くを探してみましょう。」
2人は頷き合い辺りを捜索する。すると、すぐ近くの木にもたれかかるようにして1人の兵士が血だらけの状態で倒れているのをリーオが発見した。
「おいおい、まじかよ…!」
メリルに合図を送り兵士の元へ駆け寄り抱き起こす。鎧はオラドの一般兵のものだ。胸は剣の様なもので貫かれた跡がある。か細いが、かろうじでまだ息はあった。
「おい!しっかりしろ!俺だ、リーオだ!分かるか?何があった!」
リーオが必死に声をかけると、兵士は血を吐き、僅かに眼を開く。
「リーオ…様…?気を、付けて下さぃ、隊長が…ミダース隊長が…」兵士はそう言い残し、動かなくなる。
「おい!…くそっ、なんなんだよ。」
「この近くにも兵士が数名倒れていましたが全員息はありませんでした。ミダースを探しましょう。彼はまだ戦っているかもしれません。」
「ああ!…たくっ胸糞悪いぜ。」リーオが舌打ちをする。
その時、悲鳴が聞こえた。場所はここからそう遠くない。
「こっちだ!行くぞ!」
2人は走り出し、悲鳴が聞こえた方へ向かう。その途中にも傷ついた兵士達が倒れており、リーオは眉を潜める。
そこは、生い茂った木々の中にポカンと開いた、見通しのいい広場だった。その真ん中にそいつはいた。リーオ達は眼を見開く。
壮年の顔立ちに白銀の短髪、眩い光沢を放つ鎧は「閃光の鎧」と呼ばれる彼の象徴とも言える装備だった。
「ミダース!!」
名前を呼ばれた閃光の騎士ミダースはゆらり、とこちらを見据える。眼は虚ろだった。
「リーオ様…?ああよかった、貴方を探していたんですよ。」
「俺を…?何言ってやがる!兵士達を殺したのはお前なのか!?なぜこんなことを!」
「呪い、ですよ。」
「呪いだと?」リーオが困惑した様子で問い返す。
「ええそうです。私はどうやらレガリアの持つ魔力の瘴気に当てられたらしい。レガリアが語りかけてくるのです、呪いを解くには「王族」であるリーオ様、貴方を殺すしかないとね!!」
その時、一本の矢がリーオの横を抜け風を切り、ミダースの方へ向かった。ミダースは手にした剣で飛んできた矢を難なく弾き、放たれた方を睨みつける。
「メリル…」
リーオが言い放った先には既に二発目の矢をつがえ引き絞っているメリルの姿が。
「リーオ様、この男は危険です。理由は分かりませんが気が触れているとしか思えません。ここで消します。」
「メリル殿、邪魔をしないで頂きたい。邪魔をすれば、貴方も殺しますよ?」
「お前が私に勝てると思っているのか?」
メリルは挑発するように不敵に笑い二発目を放った。
「舐めるなぁ!!!!」ミダースは激昂しメリルの方へ突進する。