殺人鬼・嘘吐き一!!
「この世界は、遠回しな言い方で回っている。おおよそのことだが・・、もしものことだけど・・。言いたいことがあるんならはっきりしろよと言いたくなるくらいに遠回し。例えるんなら、アリの巣をなくすために、アリの一匹一匹を殺していくくらいに。途方もなく、何がしたいかは、出かかっていて。それでもなお、だれ一人がそんなことを気にせずにこの世が回っている。ぐるぐるぐるぐると。こんな遠回しな話が世に出てもいいのかなんて思うが、それも遠回しな言い方だ。さらりと言えば、出したいけど、出したくない。出るところは出るが、打たれたくない。一つの遠回しを全部分解して、最低限だけ取って、貼って。そしたらほら、素晴らしいくらいの矛盾ができてくる。この世が遠回しに回っているのなら、この世は矛盾でできているといっても過言ではないといえる。よくそれで、世界は回っていると思うが、こんなことしてたらいずれ、言い方の誤差が生まれる。その誤差が大きくなって、喧嘩になり、殺し合いになり、戦争になる。そんなことを回避する方法なんてこの世にはあるのだろうか?僕はないと思う。ただ一つ言えることがあるとすれば、この広く浅い言葉の海に、いくつかの嘘を混ぜたらどうかと。そうすれば、矛盾は解決し、戦争も起こらない。ほら、平和な世界の誕生だ。ただ、この平和の世界は嘘で成り立っている。このことから、自分は生まれてから一回も嘘をついたことがないという嘘つきが、この平和を否定しようとする嘘つきが戦争をさせるようになっている。ただそれだけの話だ」目の前のそいつは、言いたいことを早口で、息つく間もなく、語った。そして一区切りをつけたら、今度はゆっくりと俺に宣言でもするように言った。「要するに、君が戦争を引き起こすトリガーだっていう話だよ」
目の前にいるこいつが何を言っているのか、さっぱり理解できなかったというわけではない。だが、少しばかりの理解が、俺の中の何かにスイッチを入れたらしい。気が付くと俺は、人を殺していた。
この世界は、人を殺しても罪に問われないという世界ではない。だから、俺は目の前のこいつが息をしていないのを知って、脱兎のごとく走り出した。
しかしながら俺は、見過ごしてはいけないものがあったのを、見過ごしていた。