魔王覚醒7
第7章 屍の王
ミアは目の前で繰り広げられる強力な王同士の闘いに夢中になっていた。
割って入る余地の無い実力伯仲の戦闘であったため、王達も気づく事が出来なかった。新たなる王の接近に。
『許さない』
階段を昇る1人の女がいた。帝国ギアガナンの深紅に染まった軍服の肩にコートをかけた細身で金髪の女だった。
帽子を深くかぶっていたため表情は見えなかったが恐ろしいほどの殺気が溢れていた。
『許さない』
女はもう一度言った。
『私のキョーヘイを傷つける奴は誰で在ろうと許さない』
女はゆっくりと階段を歩いて行った。
『めんどくさいな、早く倒れろよ!』
シュンは言うと、一ノ型真空牙を繰り出した。
『その技では我は倒せん』
ヴェルは難なく神器アロンダイトで迎撃するがシュンの攻撃に疑問を感じていた。
『さっきからその技しか射たぬようだが...その技で我は倒せぬ。 我はあの執事の男シュバルツの記憶と能力がある。波動砲の一から百の型までは我には通じぬ』
シュンはニヤリと笑った。
『もしかして波動が波動砲しかないと思ってる?思ってるよね〜。確かにシュバルツには波動砲しか教えてないからね』
シュンはそう言うと、棺の残骸の中から一本の何の変てつもない剣の柄を歯で噛むように握りヴェルに向かって突っ込んできた。
ヴェルは神器アロンダイトで迎撃しようと剣を構えた時には遅かった。ヴェルの視界が全て水色の閃光に染まった。
ヴェルはすかさず神器アロンダイトを盾にし体への直撃を避けたが攻撃により入り口付近の壁に叩きつけられるように吹き飛ばされた。
『ぐっ...』
『ヴェル!?』
ミアは急いでヴェルの元へ駆け寄った。
『ヴェル無事なのか?』
ヴェルは微かに笑うと言った。
『少し応えたが、あいつにも相応のダメージを与えた』
ミアはシュンがいた方向に振り返ると両目から血を流すシュンがいた。
『くそ、やってくれたね魔王。まさか波動砲を撃ってくるなんてね。 だけど俺は目が見えなくも心眼がある。それよりさっきの技は相当応えたよね? あれは'波動剣終ノ型 斬牙狼刃'よく無事だったね?』
シュンは目から流れる血を気にする事なく意気揚々と言った。
『波動砲の次は波動剣か...なかなかに厄介だな』
吹き飛ばされる瞬間、波動砲一ノ型真空牙を放ったヴェルは立ち上がり神器アロンダイトを構え言った。
『厄介なのは魔王、お前だよ。特にその神器は危険だね。シュバルツの波動砲をすでに自分の能力にしている。マーヤ様の為にもここで死んでもらうよ?』
シュンは再び剣を構えた。
その時、二人の間の床に亀裂が入ったかと思うと、黄金色の閃光が床から天井へと駆け抜けた。ヴェル達は眩しさに目を庇い、閃光が消えた時そこに赤い軍服にコートを着た金髪の女がいた。女は言った。
『許さない』
被っていた帽子を脱ぎ捨てるとグレーの瞳でヴェルを睨み付けた。
『キョーヘイを傷つける奴は許さない。...殺す』
ヴェルは突如現れた金髪の女を見て目を見開いた。ヴェルは突然の登場に驚いたのでは無かった。ヴェルは軍服で金髪のその女を知っていた。
『...エレン』
ヴェルは自分を睨み付ける女を見て呟くように言った。
女はその名を聞き少し驚いた顔をし言った。
『それは私が人間だった頃の名だ。なぜ知っている?』
ヴェルは質問には答え無かった。
『そうか...屍族として甦ったと言うわけか。』
女は睨み付けたまま言った。
『まぁいい。昔の私を知っていたとしても関係無い。今の私は屍族の長。'ボーン'の名を継ぎし者。私はキョーヘイのためだけに再び生を得た。だからキョーヘイを傷つける奴は殺す』
女は右手をヴェルの方へとかざした。女の右手は先程の閃光と同じ黄金色に輝きそれを放った。
『ギガフレイムwithオリハルコン!!』
ヴェルは身動き一つしなかった。否、出来なかった。
『エレン...我が滅びれば許してくれるのか...』
誰に言うのでもなくヴェルは呟いた。
『危ないのだ』
ミアは方針状態のヴェルを守るべく刀を抜き黄金色の閃光を切り裂いた。
シュンはこれは好機と再び剣を構えた。
『誰だか分からないけどチャンスだね。死んで貰うよ魔王。波動剣殺ノ型 真・斬牙刃』
ヴェルは波動剣の直撃を食らいその場に膝をついた。
ミアも女の技をくらい刀を折られ気を失っていた。
『ようやく殺られる気になった、魔王?』
シュンはそう言うと、剣を構えた。
『じゃ殺しちゃうよ?』
そしてヴェルへと突っ込んだシュンは黄金色の閃光によって吹き飛ばされた。
『ぐっ』
シュンは壁に叩きつけられ床に落ちた。
『何しやがる。そいつを殺すチャンスだろうが』
シュンは自分を吹き飛ばした女に言った。
『邪魔をするな。 こいつは...いやこいつらはキョーヘイを傷つけた。だから私が殺す。お前は引っ込んでいろ』
女はシュンの方を見向きもせずに言った。
『....それならさっさと殺っちゃってよ。面倒くさい事は嫌いなんだよ』
シュンは少し考え言った。
『貴様に言われるまでもない、波王』
女はそう言うと再び右手をヴェルとミアの方へと向けた。
『お前達は許さない。だから...死ね』
右手から再び黄金色の閃光がヴェル達を襲い、ヴェルは黄金色の閃光に包まれた。