魔王覚醒6
第6章 無くしたもの
『開門せよ、天に続きし'波動の塔'よ』
ヴェルが言うと黄金色の壁に扉が精製された。
ヴェルとミアは互いに見やると頷き、扉の中へと進んだ。
扉の中には何もなかった。
ただ上へと続く螺旋の階段があるだけであった。
ミアは周りを見渡し言った。
『誰もいない見たいなのだ』
ヴェルは頷き言った。
『とりあえず上に上がるしか無いようだな』
ヴェルとミアは二人並んで階段を上がり始めた。
城塞都市カシマ'波動の塔'最上部'棺の間'にて。
『シュバルツの気配が消えたな』
フロアのど真ん中に置かれた棺の中からシュン・K・ガーターは言った。
『確か魔王が攻めてきたって言っていたな』
シュンは誰に言うのでもなく1人呟く。
『はぁ... どうせ此処にくるんだろうな』
シュンは面倒臭そうに言った。
『仕方ない、相手をしてやるか』
棺の蓋が大きな音をたて開かれた。
『疲れたのだ』
ミアはもううんざりだという顔で言った。
『もうそろそろだから頑張れ』
ヴェルは苦笑いをしミアの頭をポンポンと叩いた。
『うにゅ〜 頑張るのだ』
それから、ひたすら二人は階段を登り続けた。
そして階段を登りはじめて12時間が過ぎた頃、一つの扉が現れた。
『思ったより早くついたな』
ヴェルは懐中時計で時間を確認し言った。
『うにゅ、ヴェルは時間の感覚がおかしいのだ!』
ミアは冗談混じりに言い刀に手をかけた。
『扉の向こうから殺気がするのだ』
ヴェルは頷くと、自分は右手を横に掲げ言った。
『顕現せよ、我が身を護りし漆黒の鎧 神器'闇の衣'』
すると、先ほどまで人間の身体だったヴェルの身体に変化が起きた。
まず身長が伸び、髪も肩にかかる位まで伸びた。
さらに人間の証だった黒の瞳も魔族の証である真紅に染まった。
そして、ヴェルが持つ守護の神器'闇の衣'が体に装着されていた。
『うにゅ! やっぱりカッコいいのだ!』
ミアはヴェルを見るとそう言い、視線を扉に戻すと刀を抜き扉を切り裂いた。
部屋の中に入ったヴェルとミアの目に入ったものは、部屋の中央にある棺だけであった。
ヴェルとミアはその棺から尋常でない殺気が溢れていることに気がついた。
ヴェルとミアが身構えた所で棺の中から声がした。
『俺の城に土足で上がり込んで来て、シュバルツを殺したのはお前らか?』
若々しい男の声であった。
『そうだ』
ヴェルは簡潔にそれだけを言った。
『シュバルツは魔王が攻めてきたと言った。俺の事を殺しに来たのか?』
男は聞いた。
『我の質問の答えによってそうなるかも知れぬし成らぬかも知れぬ』
ヴェルは答えた。
『そうか』
すると棺の中から殺気が消えた。
『何でも聞いてくれよ、俺面倒臭い事は嫌いなんだ 。知ってる事なら何でも答えるからさ』
ヴェルとミアは顔を見合せ、頷きあった。
『まず貴様の名前を聞かせろ』
ヴェルが言った。
『あれ? 俺の事知らないの? ま、いいや 俺はシュン・K・ガーター 』
シュンは不思議そうに答えた。
『貴様は何者だ? 心眼を使えるからには王であることに違いはあるまい』
ヴェルは再び聞いた。
『へぇ〜 心眼を使われた事は分かるんだ。て言うか何であんたは使わないの?』
ヴェルは質問には答え無かった。
『質問に質問で返すな。早く答えろ』
『おっかねーのな。分かったよ答えるよ。俺は'波動の王者'通称'波王'って呼ばれる者だ』
シュンは躊躇うことなく正体を名乗った。
『'波王'か。それでは黒き流星を引き起こしたのは貴様で間違えないな?』
ヴェルは確信を持って聞いた。
『へぇ〜随分と懐かしい事を話すね!そうだよ、俺が引き起こしたんだよ。黒き流星を!』
シュンは自慢気に言った。
『最後の質問だ。マーヤについて知っている事を教えろ』
ヴェルがそう問うとシュンは初めて言葉を詰まらせた。
『...知らない』
その一瞬がこの男はマーヤの事を知っていると悟らせた。
ヴェルは目を見開くと言った。
『話さぬのなら殺すしかないようだ。ミア殺れ!』
ミアが刀を横に薙ぐと棺は粉々に砕け散った。
砕け散った棺の中にいたのは一匹の獣であった。
『良い太刀筋だなそこの女の子!しかもめっちゃ可愛いじゃん!』
巨大な白虎、シュンは言った。
『ヴェル。黒き流星を引き起こしたのは人間だって言わなかったっけ?』
ミアは少し驚いた表情で聞いた。
『そうだ』
ヴェルは全く動じることなく頷いた。
『あれはどう考えても人間じゃないのだ』
ミアは言った。
『酷いな〜俺は人間だよ?この身体はただの借り物だよ。俺の本当の身体は黒き流星を引き起こした後魔王によって封印されてるからね』
シュンはヴェルを睨むと言った。
『マーヤの事を話すのなら肉体の封印を解いてやらぬ事もないぞ?』
ヴェルはニヤリと笑うと聞いた。
しかしシュンは首を横に振った。
『それなら身体は諦めるしかないね』
シュンは自分の身体を簡単に諦めた。
『貴様、我がここまで譲歩していると言うのにも拘わらず自ら命を投げ出すか』
ヴェルは苛立ってきた。これなら、神器アロンダイトでシュンの記憶事喰らってしまった方が早いのではと思い初めていた。
『話にならないよ魔王。今のお前では絶対に辿り着けない。大陸アースガルドには!』
シュンは挑発するかのように言い、さらに続けて言った。
『それにお前ごときではマーヤ様に近づく事すら許されない。刻印を無くしたお前ではな』
ヴェルはシュンの言葉に愕然としながらも気丈にも耐え、言った。
『やはり貴様は知っていたか波王、貴様絶対に喰らってやる』
そう言うとヴェルは右手をシュンの方に向け言った。
『顕現せよ。世界を滅ぼす虐殺の魔刃'神器アロンダイト'』
すかさずシュンも叫んでいた。
『波動砲一ノ型 真空牙!』
シュバルツを軽くあしらったヴェルの神器だったがシュンの波動砲はシュバルツのものとは威力が桁違いであった。
『...さっきの執事の男とは威力が桁違いだ。ミア危ないから下がっていろ』
ミアは頷くとヴェルの後方に下がった。
『シュバルツなんかと一緒にしないでよ。俺は波動の始祖なんだよ?つまり波動が使える者の中では俺が最強なの。分かった?』
シュンは怒ったように言った。
『そんな事はどうでも良い。貴様を喰らわせて貰う。異論は認めん』
ヴェルは叫んだ。
シュンは言い返すように叫んだ。
『面倒臭いけどしかないな〜今日がお前の命日だよ!』
ここに波王と魔王の闘いが始まった。
二人の王は気づいていなかった。城塞都市カシマ'波動の塔'に忍び寄るもう一つの王の存在に。