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八神物語   作者: 雷嵐
7/13

魔王覚醒5

修正しました(--;)

第5章 魔王の能力





 キョーヘイ達を退けたヴェル達は再び城塞都市カシマを目指し歩き始めた。

 ミアはさっきまで泣いていたが、今は疲れたのかヴェルの背中で眠ってしまっていた。

 ヴェルは1人黙々と歩き続け、日が暮れる頃にようやくその目で城塞都市カシマを見た。

 外観はとにかく金色の円柱型の変な建物であった。

 そして何よりも凄いのがその高さである。

 上は高すぎて雲に隠れてしまっている。

 『あれが城塞都市カシマ...』

 ヴェルが呟くとミアが背中で目覚めた。

 『ウにゅ〜! よく寝たのだ!!』

 ミアはヴェルの背中から勢いよく飛び降りた。

 『おはよう、ミア』

 ヴェルはミアの頭を撫でながら言うと、

 『おはようなのだ、ヴェル!』

 ミアは元気いっぱいに返した。

 今朝の出来事を引きずっている様子が無いとヴェルは判断し、ミアに言った。

 『これから城塞都市に侵入する』

 ミアは金色の建物を眺めていた顔をヴェルに戻すと真面目な顔で頷いた。

 『分かったのだ』








 城塞都市内部。

 『シュン様』

 執事服に身を包んだ、年配の男が棺にむかって言った。

 以外にも棺から声が帰ってきた。

 『何かあったのか? シュバルツ』

 若々しい、青年の声であった。

 『魔王が攻めて来ました』

 シュバルツと呼ばれた執事服の男は淡々と言った。

 『魔王が? ふむ、数千年も音沙汰無かったくせにいきなりどうしたんだろうね?』

 シュンと呼ばれた男はそう言うと、

 『めんどくさいから、シュバルツが撃退しといてよ。 殺しちゃても構わないし。 宜しくね』

 そう言って、シュンと呼ばれた男は眠りについた。

 『仰せのままに...』 

 シュバルツと呼ばれた執事服の男は静かにそう言うと、その場を立ち去った。








 ヴェルとミアは建物の側まで近づいたはいいが入り口はおろか、窓一つ無い建物の前で立ち往生していた。

 『侵入するにしても、どう侵入するかだな...どこから入れば良いのやら』

 ヴェルがそう呟くと、

 『壊せば良いのだ!』

 とミアが元気よく言い刀で切りつけた。

 しかし、破壊するどころか切り傷すらつけられなかった。

 『ミア駄目だ。 この金色の建物の外観は恐らく'神々が作りし金属'(オリハルコン)。 いくら暗黒物質で精製したその刀でもオリハルコンには敵うまい』

 ヴェルがそう言うと、

 『うにゅー、ではどうするのだ?』

 とミアは聞いた。

 ヴェルは答えの代わり、指をさし言った。

 『入口を探す手間は省けたようだ』

 ミアがヴェルの指差す方を振り向くとそこには、見るからに執事と言った風貌の男がいた。

 執事の男はヴェルとミアに一礼をすると言った。

 『私がご案内いたしましょう...地獄の底へと』

 ヴェルは微かに笑うと言った。

 『ミア、門前払いだそうだ』

 『うー、それはないのだ。酷いのだ』

 ヴェルは執事の男に言った。

 『命が惜しければ、この建物の事を教えろ。 あと、マーヤと言う名前に聞き覚えが在れば詳しく話せ』 

 執事の男は少し驚いた表情をして問い返した。

 『貴方様は、魔王でございますよね? '王'と言う座につくものには'心眼'が与えられるはず。それを使えば私めに聞く必要は無いのでは?』

 ヴェルは溜め息をつくと言った。

 『'心眼'は使わん。これは人の倫理に反する力だからな』

 執事の男はさらに意味が分からないという表情で言った。

 『貴方様は、魔族。人間ではありますまい。 なぜそのような事を気になさるのです?』

 ヴェルはその問いに首を振って答えた。

 『違う。 確かに我は悪魔でなおかつ魔王だ。 だが魔族ではない』

 ヴェルは一呼吸おくと、

 『我の事はどうでもいい。 この建物の事、マーヤの事を話すつもりはあるのか?』

 執事の男は先ほどまでの恭しい態度と表情を消し去り、ヴェルを睨み付け言った。

 『最後に一つだけ聞かせろ。 お前は魔王ルシファーか?』

 ヴェルは首を横に振った。

 執事の男はなおもヴェル達を睨んでいたが、一瞬で先ほどまでの恭しい表情に戻り言った。

 『そうで御座いましたか。 では貴方様にもう用事はございません。消えていただくとしましょう』

 執事の男は右手をヴェル達に向け開くと言った。

 『カシマ式波動砲 一ノ型 真空牙』

 執事の男の右手から波動の力により精製された三本の刃がヴェル達を襲った。

 しかし、その刃でヴェル達を傷つける事は出来なかった。

 ヴェルは三本の刃すべてを片手で受け止めていた。

 ヴェルは呆れ顔で言った。

 『餓鬼の遊びではないのだぞ? 貴様が魔王ルシファーに対し何か思う事があるとするならば、それをぶつけよ。それが出来ぬなら、貴様の命はない。我は手加減は出来ぬ』

 執事の男は唇を噛み締めると今度は両の手をヴェル達にかざし叫んだ。

 『カシマ式波動砲 百ノ型 無限乱舞』

 今度は複数の真空の刃がヴェル達を襲った。

 ヴェルは刃を迎撃しようと刀に手をのせたミアを右手で制し、左手を空に掲げると言った。

 『顕現せよ。世界を滅ぼす虐殺の魔刃 '神器アロンダイト'』

 空から黒き雷が落ち、ヴェルの手には身の丈ほどある禍々しい黒き剣が握られていた。カシマ式波動砲無限乱舞をひとふりで全て吹き飛ばした。

 しかし、無限乱舞の刃は消滅せず再びヴェル達に集まってきた。

 そして、神器アロンダイトに吸収された。

 執事の男は青ざめた顔で呟いた。

 『神器を使いし魔王...まさか!?』

 ヴェルは執事の男の様子をみて言った。

 『魔界を統治する七第魔王の内、神器を有するのは'怠惰'を剥奪されし魔王ヴェルフェゴール。即ち我の事である』

 執事の男は無意識の内に呟いていた。

 『世界'最凶'の破壊者...』

 ヴェルはその呼び名を聞いて笑った。

 『ずいぶんと物騒な名前をくれたものだな人間様よ』 

 ミアは頬を膨らませると言った。

 『酷いのだ! ヴェルは凄く優しいのだ!』

 執事の男には話を聞いている余裕は無かった。

 ヴェルは執事の男を睨み付けると言った。

 『人間よ。貴様を殺すのは惜しい。我の力となれ』

 執事の男は今度こそ本当に驚き、先ほどヴェルが言った言葉を思い出していた。

 (心眼は使わん。この力は人の倫理に反するからな)

 '人'ヴェルは言った。これを利用する手はないと思った。 

 『...力になるとは、具体的にどうすればいい?』

 ヴェルは執事の男の言葉を聞き、笑いながら言った。  

 『何もせんでいい...我に黙って斬られればそれでいい』

 執事の男は気づいた時には神器アロンダイトにより心臓を貫かれていた。

 執事の男は目を見開き言った。

 『さっきの..言葉は..うそだった...のか』

 ヴェルは首を横に振った。

 執事の男は死んだ。そして神器アロンダイトに'喰われた'。 

 ヴェルは誰に言うのでもなく呟いた。

 『人間も悪魔も皆同じ。 自分の目的の為なら同族だろうが肉親だろうが殺す』

 ヴェルは溜め息をつき、神器アロンダイトを見つめ言った。

 『貴様の因縁の敵ルシファーは我が撃とう。 それが貴様にしてやれるせめてもの礼だ。...異論は認めん』

 そう言って神器アロンダイトを手離すと神器は光の粒となって消えた。

 ヴェルは心配そうにこちらを見つめるミアの頭を撫で言った。

 『建物に入る方法が分かった。 行くぞミア』

 ミアは元気よく頷いた。

 『しゅっぱーつなのだ』


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