魔王覚醒3
第3章 魔王の敵
旧日本国東京の六本木を立ち去った、ヴェルとミアは茨城の南部に位置する'難攻不落'の異名を持つ'城塞都市カシマ'を見つけるべく移動を開始した。
'城塞都市カシマ'
これは帝国ギアガナンとユニオンに敵対するレジスタンスである。いつ創設された団体かは分かっていない。人員も数百人と言われているが定かではない。それには理由があり、城塞都市カシマを滅ぼうそうと城内に侵入したユニオンとギアガナンの両兵とも誰1人として帰って来なかったのである。ただカシマの方から両国に攻めいる事はなかった。そして新暦2000年を越えてからは、両国とも侵略から手を引き傍観を決め込んだ。他種族については、人間達の争いに興味を示さなかったため存在自体を知らなかった。
ヴェル達がそこに向かうのには理由があった。城塞都市カシマに大陸アースガルドについてのヒントがあるのではと考えたのだ。
『ヴェルはなんでじょーさいとしカシマ?に大陸あ〜すがるど?のヒントがあると思ったのだ?』
ミアは楽しそうにヴェルと繋いだ手をブンブンと振りながら聞いた。
『理由は特にない。ただこの体の方の妹の真綾は城塞都市近くの廃ビルの中でこいつと二人で隠れ住んでいたらしい』
ヴェルは自分を指さしながら言った。
『こいつの記憶している建物の形状がとても人工的に造られたものに見えなくてな...それにあそこには我らが魔族にとって因縁がある場所かもしれん。』
と何かを思い出すように遠い目をして言った。
『因縁?』
ミアは少し心配そうにヴェルを見上げながら聞いた。
『ああ。新暦の前、西暦の時代に我らが故国'魔界グレゴワール'が人間によって侵略されそうになった事は知っているな?』
そう聞くとミアは黙って頷いた。
『それでは、黒き流星については知っているか?』
ミアは不思議そうに首を傾げた。
『ブラックメテオについては知っているのだ。でもあれは神族達が天使族と組んで魔界グレゴワールを持ち上げ太平洋のど真ん中に突き落としたっていう話だったのだ。人間達は関係ないのだ』
ヴェルはそのミアの返答に満足そうに頷くと言った。
『確かに表向きにはそうなっている。だが本当は違う。あの頃の魔王は最強だった。武力で敵わぬ者など存在しなかった。そして神族と天使族の同盟軍との闘いにおいても魔王はたった1人で勝利した。そして魔王が1人闘う中魔界グレゴワールは落とされた。それは1人の人間の仕業だったのだ。名をシュン・K・ガーターと言いそいつは魔王が魔界グレゴワールにいない状況を作り魔界グレゴワールを太平洋に落とし封印した』
ミアは少し考えてから言った。
『つまり、シュンって人は神族と天使族が同盟を結ぶように仕向けてさらに魔王に1人で戦わせるように仕向けた。そして自分はブラックメテオを引き起こしたって言うことなのか?』
ヴェルは頷いた。
しかしミアはいまいち納得出来なかった。
『シュンっていうのは本当に人なのか?』
ヴェルは少し笑うと
『それについては全くもって同意見だ。少なくとも'ただ`の人間では無いようだ』
ヴェルは歩みを止めて空を見上げた。
『我には我の目的が在るが魔王としての勤めもせねば成らない』
ミアはヴェルに習い、空を見上げ言った。
『僕はヴェルにずっとついていくのだ。マーヤを探し出すのも、グレゴワールの封印を解くのも手伝うのだ!』
ヴェルはミアと繋いだままだった、手をはなしミアの頭をポンポンと叩きながら言った。
『城塞都市とシュンと言う人の関係もマーヤの事も判らぬ事が多すぎる。頼りしているぞ、ミア。』
ミアは頬を染めながら
『ま、任せるのだ!』
と高らかに宣言した。
そんな二人を遠くの廃ビルから見ている男女の二人組がいた。男の方はニヤリと笑うと言った。
『ふふ、あれが魔王か。』
女は何も言わずに遠くを眺めていた。
男は手にもっていた万年筆を握ると再び笑い、言った。
『ふふ、久しぶりにまともな闘いが出来そうだよ。ふふふふ・・・』
男と女はヴェルとミアを追って歩き出した。